KDDIとKDDIスマートドローンは9月28日、記者向けに「ドローン事業に関する説明会」を開催。ドローンのさらなる社会実装に向け、ポート拠点拡大に向けたパートナー連携と、運航管理の高度化に関する取り組みなどを説明した。

説明会には、KDDIスマートドローン 代表取締役社長の博野雅文氏、同社 執行役員 CTOの杉田博司氏が登壇した。

  • 自動充電ポート付きドローン「Skydio Dock for X10」

    自動充電ポート付きドローン「Skydio Dock for X10」

KDDIと日本郵便が連携して「ドローンポートを全国へ」

ドローンポートの全国展開に向けて、KDDIが必要と考えているのは「機体」「通信」「遠隔運航体制」「設置場所」「制度」の5つの要素である。

機体については、2024年5月に資本提携契約を締結した米国Skydioの自律飛行型AIドローンを活用。遠隔運航体制では、2023年に資本業務提携した日本航空の安全運航に関する知見を取り入れている。

通信分野では、地上のモバイル通信が届かないエリアでもドローンを運航できるよう、「au Starlink Direct」を活用し、Starlink衛星とドローンを直接通信させる飛行実証にも成功した。

こうした取り組みに加え、全国展開に向けた課題となっていたのが、地域の生活圏に近く、継続的に運用できる設置場所の確保である。

「この課題の解決に向け、KDDIは日本郵便と2026年6月に基本合意書を締結しました。今回の合意書では、KDDIが主導するドローンポートの全国展開と、日本郵便が主導するドローン物流の社会実装という2つの領域で連携していきます」(博野氏)

  • 日本郵便との合意書締結について説明する博野氏

    日本郵便との合意書締結について説明する博野氏

前者では、日本郵便が全国に展開する郵便局ネットワークを活用してドローンポートの設置拠点を拡大し、後者では、KDDIが通信環境や遠隔運航体制などを提供し、日本郵便のドローン物流を支援する。

両社は基本合意に基づく第1弾として、9月28日から10月4日まで、石川県珠洲市の珠洲郵便局で実証を行うことを発表した。

今回の実証では、郵便局の屋上に「Skydio Dock for X10」を設置し、平時には通学路の安全確認や配送ルートの状況把握などを実施。災害による道路寸断が発生した場合に、集配社員の安全確保へ活用できる可能性も検証する。

さらに、珠洲市内にすでに配備されているドローンポートと連携し、複数のAIドローンによる監視・点検エリアの拡大を図る。10月4日には珠洲市が主催する総合防災訓練にも参加し、災害時の被災状況や住民の安否を迅速に把握する運用モデルの実現可能性を検証するという。

国内初のUTMサービスプロバイダIDを取得、運航管理を一元化

全国へのドローン配備と並行して進めているのが「複数の機体を安全かつ効率的に運航するための環境整備」である。

「ドローンの活用が広がるにつれ、同じ空域を複数の機体が飛行する機会も増えていきます。運航者には飛行計画の作成や通報、他の運航者との調整、飛行禁止・制限エリアの確認などが求められ、運航管理の負担が増大することが課題となっています」(杉田氏)

  • 「複数の機体を安全かつ効率的に運航するための環境整備」の取り組みについて説明する杉田氏

    「複数の機体を安全かつ効率的に運航するための環境整備」の取り組みについて説明する杉田氏

こうした課題への対応として、KDDIスマートドローンは2026年9月16日、国土交通省航空局から「UTMサービスプロバイダID」を取得し、国内初の認定UTMサービスプロバイダの1社となった。

UTMは、複数のドローンが同一空域を安全かつ効率的に飛行するための運航管理の仕組みである。航空局が定める要件を満たし、IDを取得した事業者は、認定UTMサービスプロバイダとしてサービスを提供できる。

KDDIスマートドローンが構築するUTMサービスでは、これまで分散していた飛行計画の作成・通報、飛行計画の調整、飛行前点検、飛行中の監視、飛行日誌の作成などを一元的に管理する。

同社はこれまでに2万1000回以上の遠隔運航実績を持つほか、2022年からNEDOの「次世代空モビリティの社会実装に向けた実現プロジェクト」にも参画。日本航空との提携によって培った安全運航の知見も、運航管理基盤の構築に生かしている。

遠隔多機運航を実演、12月からUTMサービスを提供

説明会では、UTMサービスを活用した遠隔多機運航のデモンストレーションも実施された。

スクリーンに北海道新十津川町、石川県志賀町、大阪府池田市、埼玉県秩父市の4拠点を管理画面に表示し、複数の機体を遠隔から管理する仕組みを紹介。新十津川町の機体を実際に飛行させ、飛行前の確認から飛行中の監視まで、一連の運用を実演した。

管理画面では、飛行計画の範囲や機体の位置情報に加え、飛行禁止・制限エリアなども確認できる。また、想定外の事態への対応例として、機体が設定された高度の上限を超えた場合に、システムが異常を検知してオペレーターへ通知する機能も紹介した。

  • デモンストレーションの様子

    デモンストレーションの様子

杉田氏は「ドローンの全国配備が進む中では、オペレーターが1機ずつ監視するのではなく、通常時には複数機の運航状況を俯瞰し、異常発生時に対象機体へ集中的に対応する運用が必要になる」との考えを示した。

KDDIスマートドローンは、2026年12月からUTMサービスの提供を開始する予定で、今後はさまざまな分野への活用を拡大するとともに、将来的には有人航空機を含めた空域の統合管理も視野に入れるという。

KDDIグループは今後、日本郵便やローソン、自治体などとの連携によるドローンポートの全国配備と、UTMによる運航管理基盤の整備を並行して進める。こうした取り組みを通じて、「平時・有事を問わず、全国どこでも10分以内にドローンが遠隔操縦で駆け付け可能となる社会基盤」の構築を目指す。