今回は、「円」や「ドーナツ」といったグラフをデザインするときに効果的な、ちょっとした小技をいくつか紹介してみよう。利用できる場面が限定的なものもあるが、グラフ作成の幅を広げる豆知識として覚えておくとよい。もちろん、「円」や「ドーナツ」以外のグラフに応用することも可能だ。
特定の分類を目立たせるには?
グラフをデザインするときは、最も注目して欲しい項目(分類)を目立たせて、他の項目を控えめに表現するのが効果的だ。「注目すべきポイント」を明確にできるだけでなく、色数を少なくできるため、シンプルで洗練された雰囲気に仕上げることができる。
今回は「円」や「ドーナツ」のグラフに共通して使える小技を紹介していこう。もちろん、他の形式のグラフにも応用できる内容である。
前回の連載では、自作のカラーパレットを活用することで、オリジナルの配色でグラフを作成する方法を紹介した。
このグラフをさらに「意図のあるもの」に仕上げるには、やはり色を工夫する必要がある。現状では「国内」や「アジア」のデータが重要であるかのように見えるが、もしかすると「本当はアメリカのデータに注目してもらいたかった」というケースもあるだろう。このような場合は、「注目すべきデータ」のみ色を強調して、他のデータは同系統の薄い色で塗りつぶすとよい。
もしくは「注目すべきデータ」だけ色を変更する、という手もある。
前回の連載で紹介したカラーパレットを作成しておけば、こういった「色の変更」にも柔軟に対応できるはずだ。ぜひ、実際に活用していただけると幸いだ。
「円」や「ドーナツ」のグラフで特定のデータだけを目立たせたいときは、図形の位置をずらすのも効果的だ。「注目すべきデータ」の図形をゆっくりと2回クリックして個別に選択し、外側へドラッグする。
すると、そのデータだけを分離した円グラフにできる。以下の図では「アメリカ 19%」の文字をテキストボックスで作成しているため、移動されるのは図形だけ。図形の移動に合わせて、テキストボックスの位置も調整しておくとよいだろう。
なお、図形を分離にするためのスペースが十分にない場合は、「プロット エリア」のハンドルをドラッグして、あらかじめ円グラフを小さくしておくとよい。このとき、「Ctrl」キーを押しながらドラッグすると、円の中心を基点に円グラフを拡大/縮小できる。
参考までに、先ほど示した方法で「2つのデータ」を分離した例も示しておこう。この場合は以下の図のような結果になり、全体のバランスを保ちにくくなる。
「アメリカ」と「ヨーロッパ」の図形をグループ化して一緒に移動できればよいのだが、残念ながら、そのような操作には対応していない。多少の無理をすれば対処できない訳ではないが、少し複雑になるので、これについては近いうちに改めて紹介するとしよう。
複数のデータを強調したいときは、以下の図のように色だけで対処するのが基本だ。これが最もシンプルかつスマートな対処法になる。
そのほか、以前の連載でも紹介したように、強調しないデータを「図形の効果」→「ぼかし」で加工するのも一つの手だ。この場合も各図形を「ゆっくりと2回クリック」して個別に選択してから「ぼかし」の効果を指定するとよい。
グラフを立体的に見せるには?
「図形の効果」を使ってグラフを立体的に見せることで、デザインを工夫しようと考える方もいるだろう。このような場合は、いずれかのデータを「1回だけクリック」し、全データを選択した状態で「面取り」の効果を指定する。
ただし、あまり見た目のよい結果になってくれない場合が多い。その原因の一つが、立体化するときの「幅」や「高さ」を指定できないこと。このような場合は「3-D オプション」を選択する。
すると、右側に「データ系列の書式設定」が表示され、「面取り」の設定を詳細に指定できるようになる。
これらの数値を調整することで、より立体的なグラフに加工することも可能である。とはいえ、それでも「あまり見栄えのよいグラフではないかも……。」という結果に終わってしまうケースが少なくない。
初心者の方は特に「立体化によりデザインを改善しよう」と試みる傾向があるが、この手法はあまりお勧めできるものではない。というのも、安易に立体化を施すと、逆に安っぽいイメージになってしまう恐れがあるからだ。使いどころを考えながら対処していく必要がある。
背景に画像を敷いた「ドーナツ」グラフ
第44回と第45回の連載で紹介したように、「画像」と「グラフ」を組み合わせて利用す方法もある。これらの連載では「地図グラフ」という特殊な用途を目的にしていたが、イメージ図としてグラフを活用する場合にも応用可能だ。
まずは「画像」をワークシートに挿入し、「色」コマンドで写真のトーンを調整する。
続いて、数値データをもとにグラフを作成し、「画像」の上に配置する。さらに、グラフの余白を右クリックして「塗りつぶしなし」と「枠線なし」を指定する。
グラフの背景を透明にできたら、各データの色を調整する。このとき「塗りつぶしの色」を選択して半透明の色を指定すると、より雰囲気のあるグラフに仕上げられる。
最後に、テキストボックスを使って文字を配置していくと、以下の図のようなグラフを作成できる。
このような図版は「グラフ」というよりも「サムネイル」に近い存在といえるかもしれない。文書やWebで情報を伝えるときに、そのイメージに合う写真を用意しておくのはよくある話だ。この際にExcelを使って、ちょっとしたデータ(グラフ)を追加してあげると、より効果的なサムネイルに仕上げられる(場合もある)。
この例のように、Excelのグラフ機能を「イメージ図の作成」に応用することも可能だ。「グラフのカスマイズ」と「図形の扱い」に慣れていれば、ビジネス向けのOfficeアプリであっても、ある程度の創作は可能である。気になる方は挑戦してみるとよいだろう。