このものづくりニュースのまとめ

・シュナイダーエレクトリックがPTCを約226億ドルで買収する最終契約を締結
・PTCのCAD・PLMとシュナイダーの運用・エネルギーデータをデジタルスレッドで接続
・株主と規制当局の承認などを前提に2027年第3四半期の買収完了を予定

Schneider Electric(シュナイダーエレクトリック)とPTCは10月5日、シュナイダーがPTCを買収する最終契約を締結、エネルギー・産業インテリジェンス分野における事業の加速を目指すことを発表した。

買収価格はPTC株式1株当たり205ドルで、PTCの全株式を現金で取得する。PTCの株式価値は約226億ドル、推定企業価値は約237億ドルで、この買収価格は発表直前のPTC株式終値に対して42.3%、発表前30取引日の出来高加重平均株価に対して46.1%のプレミアムを加えた水準となるという。

両社の取締役会は買収を全会一致で承認しており、買収完了は、PTCの発行済み株式の過半数を保有する株主の承認や、規制当局の承認などを前提に、2027年第3四半期を予定する。

PTCのCADやPLMを産業AI基盤へ統合

PTCは、複雑な工業製品の設計、エンジニアリング、データ管理を支援するソフトウェアを提供している。CADのほか、PLM、アプリケーションライフサイクル管理(ALM)、サービスライフサイクル管理(SLM)を中核に、製品の定義・設計から製造、サービス、最適化までに生じる製品・設計データを管理するソリューションを展開してきた。

現在、世界で3万社を超える顧客を有しており、2025年の売上高は24億ユーロ。売上高と年間経常収益(ARR)は2029年まで年率約10%で成長する見通しとしている。

シュナイダーは、PTCが持つ製品や機械の設計情報を、自社が蓄積してきたプロセス、設備、エネルギー関連の運用データと組み合わせることで、製品をどのように設計・製造したかという情報と、実環境でどのように稼働し、どれだけエネルギーを消費しているかという情報を結び付け、産業AIが利用できる文脈付きのデータ基盤を構築することを目指すとしている。

設計から運用・保守までをデジタルスレッドで接続

買収の狙いについてシュナイダーは、製品の設計や製造を担う上流工程と、設備の制御、運用、保守を担う下流工程を、統一されたデジタルスレッドで接続することにあるとしている。

PTCが提供してきたCADとPLMが製品や機械の設計意図と構成情報を管理することに活用される一方、シュナイダーはエネルギーマネジメントや産業オートメーションに関する技術とデータを保有しており、これら双方のデータを接続することで、設計時の判断が製品の運用効率やエネルギー消費へ与える影響を把握することに役立つにつながるほか、運用中に得られたデータを次世代製品の設計へ戻す循環型の開発環境を構築することにもつながることが期待できるようになるなど、設計を高速化し、開発初期から最適化を図った製造を実現し、効率的な運用を行いながら、次世代の製品やシステムを継続的に改善できるようになるとしている。

AVEVA、Cognite、PTCで産業データを一体化

シュナイダーは2023年に産業用ソフトウェア事業としてAVEVAを100%子会社化したほか、2026年6月には産業データ・AIソフトウェアを手掛けるノルウェーのCogniteを31億ドルで買収する最終合意を締結したことを発表している。

Cogniteは、産業設備から得られる複雑なデータを統合し、データモデルやナレッジグラフを用いて文脈付けするクラウド基盤を展開しており、産業設備の運用や資産管理、エンジニアリング業務にAIを組み込むためのデータ基盤として位置付けられている。

今回のPTC買収により、製品と機械の設計・エンジニアリング情報が、AVEVAやCogniteを含むシュナイダーの産業・エネルギーデータ基盤に加わることとなることから、同社では、設計、制御、データ、インテリジェンスをまたぐオープンで相互運用可能な産業用ソフトウェア・AI事業を構築し、物理世界とデジタル世界を製品ライフサイクル全体で接続していくこと方向性を示している。

産業用ソフトウェアの対象市場を約3倍へ拡大

PTCの買収により、シュナイダーのソフトウェア・サービス事業は、プロフォーマベースでグループ売上高の推定24%を占める規模となる見込み。ソフトウェア関連の従業員数は1万5000人超、顧客数は5万社超となる見込み。産業用ソフトウェアの対象市場も約3倍に拡大するとしている。

また、顧客企業の産業分野も幅が広がることとなり、どこかの産業に依存するという割合が下がること、ならびにシュナイダーのエネルギー、オートメーション、プロセス産業における顧客基盤へPTCの技術を展開したり、PTCの顧客にシュナイダーの運用・エネルギー管理技術を提案したりすることができるようになるなどの双方向のクロスセルも狙えるようになるともしている。

年間2億5000万ユーロのコスト相乗効果を見込む

なお、シュナイダーでは、今回の買収完了から3年目までに年間2億5000万ユーロのコストシナジー、ならびに顧客基盤を相互に活用したクロスセル、販売チャネルと対象市場の拡大、AIを活用したデジタルスレッドソリューションの共同開発などを進めることで、約8億ユーロの収益シナジーを見込むとしている。

実際の買収に必要となる約220億ユーロについては、Morgan StanleyとSociété Généraleによるブリッジファシリティで確保。対価については、約50億~60億ユーロの株式発行と、約160億~170億ユーロの新規借り入れを組み合わせて調達する予定だという。 。