この電子部品ニュースのまとめ

・日韓のMLCC大手が民生向け製品を縮小し、AIサーバ向け高性能品へ生産能力を移行
・村田製作所は一部の汎用・車載向けMLCCを対象に受注を2028年、出荷を2029年に終了へ
・DellやHPなどが中国メーカー製MLCCの認定を進め、代替調達先としての採用拡大に期待

台湾の市場調査会社TrendForceによると、AI需要の拡大を背景に、積層セラミックコンデンサ(MLCC)業界の供給構造に変化が訪れているという。

日韓の大手MLCCサプライヤは、民生機器向け製品の供給を減らし、AIサーバやデータセンター、自動車向けの小型・大容量品をはじめとする高付加価値製品へ生産能力を振り向けている動きを見せているという。特にAIサーバでは、GPUやCPU、メモリなどへ安定した電力を供給するため、多数のMLCCが使われる。演算性能と消費電力の増加に伴い、小型・大容量で高い信頼性を備えた製品への需要が拡大している。

この製造能力の振り分け変化は、中国のサプライヤにとって新たな機会をもたらす事態となっており、多くの中国企業が現在、Dell、HP、ASUS、Acerといったグローバルブランドに向けた認証取得に取り組んでいるという。

村田製作所が一部製品の生産を終了へ

TrendForceによると、MLCC市場でシェア40%を有する村田製作所は9月に民生機器向けの汎用GRMシリーズや、一部の車載用部品などについて生産を終了する方針を示したという。対象には、粗利益率が5%を下回る製品が含まれており、今後はAIサーバ、データセンター、車載エレクトロニクス向けの高機能・小型・大容量製品に注力する模様である。

対象製品の受注は2028年まで受け付け、最終出荷は2029年となる見込み。この3年間の移行期間を設けることで、2018年に発生したような供給不足を防ぐ狙いがあるとTrendForceでは説明している。

中国勢にチャンス到来、PCメーカーによる認定が開始

日韓メーカーがAI向けの生産を優先することで、民生向け中高容量MLCCの供給は引き締まる見通しである。こうした状況は、これまでグローバルブランドのサプライチェーンへの参入に苦戦してきた中国メーカーにとって、新たな商機となるとTrendForceでは指摘している。

すでにDell、HP、ASUS、Acerが中国のメモリサプライヤの認定を完了したと報じられているほか、ODM(Original Design Manufacturer)のHuaqin、LCFC、Luxshareなどを通じて、中国のViiyongやChaozhou Three-Circleなどが手掛けるMLCC製品の認定も開始したという。また、台湾のQuantaとPegatronもChaozhou Three-Circleの製品認定の手続きを開始したという。

MLCCは電子機器の電源安定化やノイズ除去などを担う基本部品であり、完成品メーカーが新たなサプライヤを採用するには、容量や電圧などの電気的特性だけでなく、信頼性、品質の安定性、量産能力などを確認する必要があるが、日韓のMLCCメーカーがAI向けに軸足を移す中、民生用の中高容量MLCCの需要が中国メーカーに向かうと予想され、中国メーカー各社にとっては、供給不足への対応から採用実績を積み上げ、グローバル市場で事業を拡大する機会につながることが予想されるという。

なお、中国メーカーはハイエンド製品の歩留まりや生産能力に制約があるため、短期的に日韓メーカーの優位性を崩す可能性は低いとTrendForceはみており、AIサーバ向け高性能品に向けた日韓メーカーのシフトと、民生器や一般サーバ向けMLCCでの中国メーカーの認定と採用拡大という供給構造の変化が、今後の業界構造の競争に変化をもたらすことになりそうである。