富士通は9月14日、独自開発する次世代プロセッサ「FUJITSU-MONAKA」を11月から販売すると発表した。AI推論処理では他社CPUと比較して2倍のスループットを実現するとしている。AIの普及に伴ってデータセンターの電力需要が拡大するなか、富士通はMONAKAで計算性能と省エネルギーの両立を狙う。

  • 富士通の次世代プロセッサ「FUJITSU-MONAKA」(出典:富士通)

    富士通の次世代プロセッサ「FUJITSU-MONAKA」(出典:富士通)

「FUJITSU-MONAKA」を11月から販売

FUJITSU-MONAKAは、富士通が独自開発するArmベースのデータセンター向けプロセッサ。クラウド・データセンター事業者やサーバベンダーを対象に、新たにプロセッサ単体でのビジネスを開始し、グローバルで販売する。

また、FUJITSU-MONAKAを搭載したソブリンAI基盤として、国産サーバ「Fujitsu MONAKA Server」を今年11月から販売する。

対象は日本および欧州のデータセンター事業者、エンタープライズ、アカデミア・HPC、防衛などの分野を想定している。

Fujitsu MONAKA Serverは、AIエージェントやAI推論などの用途に最適化したラックマウントサーバで、2Uサイズ(2CPU搭載)と1Uサイズ(1または2CPU搭載)をラインアップする。

2nmプロセスと3D積層を採用、AI推論性能は他社CPU比2倍

FUJITSU-MONAKAは、最先端の2nmプロセスを採用したArmベースのCPUコアを144個搭載する。最大動作周波数は3.8GHzで、メモリにはDDR5を採用し、最大8800MT/sの転送速度に対応する。

パッケージには、2nmプロセスで製造したCPUコアのダイと、5nmプロセスで製造したSRAMのダイを積層する3D実装技術を採用。

  • 「FUJITSU-MONAKA」の3D積層構造を示した模型。2nmのCore Dieと5nmのSRAM Die、I/O Dieなどで構成する(富士通のデモ動画より)

    「FUJITSU-MONAKA」の3D積層構造を示した模型。2nmのCore Dieと5nmのSRAM Die、I/O Dieなどで構成する(富士通のデモ動画より)

AI推論の中核となる行列演算を専用命令でハードウェア支援し、SVE2ベクトル演算およびソフトウェア最適化と組み合わせることで、AI推論において他社CPU比2倍のスループットを実現するとしている。

また、同等の処理量を実行する場合、他社CPUと比較して必要なサーバ台数を半減でき、消費電力も半減できるとしている。

AI時代のデータセンター、性能向上と省エネをどう両立するか

富士通がFUJITSU-MONAKAで重視しているのが、計算性能の向上と省エネルギー化の両立だ。

「FUJITSU-MONAKA」はAI推論において他社CPU比2倍のスループットと高い電力効率を実現するとしている。同等の処理量で比較した場合、必要なサーバ台数と消費電力を半減できるという。

また、1Uサイズの「Fujitsu MONAKA Server」は、専用の冷却設備がなくても空冷で周囲環境温度40度、水冷で水温45度までの環境で利用できる。これにより、サーバ冷却に必要な電力消費量を最大80%削減するとしている。

AIの普及によってデータセンターの電力需要が拡大するなか、富士通はこうした省エネルギー化を重要な課題と位置付けている。

6月に開催した定時株主総会で、代表取締役社長 CEOの時田隆仁氏は、重要な領域ではデータセンターを確保し続ける必要があるとの認識を示した。そのうえで電力・エネルギーの課題について、「自社CPUであるFUJITSU-MONAKAにより、計算能力向上と省エネルギー化を同時に追い求めることで対応する」と述べている。

「MONAKA-X」「MONAKA-XX」へ、富岳NEXTやRapidusとも連携

富士通は「FUJITSU-MONAKA」に続く次世代プロセッサの開発も進めている。同社が5月に発表した「Management Vision 2035」では、MONAKAに続いて「MONAKA-X」「MONAKA-XX」へとプロセッサを進化させていくロードマップを示した。

2029年度には、1.4nmプロセスを採用し、NPUやGPUとの密結合に対応する「MONAKA-X」、2031年度には最先端プロセスノードとCo-Packaged Opticsを採用する「MONAKA-XX」の投入を計画している。

このうちMONAKA-Xは、スーパーコンピュータ「富岳」の後継となる「富岳NEXT」に採用される予定だ。

  • 富士通の「Sovereign Platform」におけるCPUの開発ロードマップ。2029年度に「MONAKA-X」、2031年度に「MONAKA-XX」を計画する(出典:富士通)

    富士通の「Sovereign Platform」におけるCPUの開発ロードマップ。2029年度に「MONAKA-X」、2031年度に「MONAKA-XX」を計画する(出典:富士通)

MONAKA-Xに関しては、国産の次世代半導体量産を目指すRapidusとの連携も視野に入れる。6月の定時株主総会で時田氏は、MONAKA-XについてRapidusの半導体を利用したいとの考えを示し、「技術的な議論を含めて連携を深めている」と説明した。

富士通は、こうしたMONAKAシリーズを「Sovereign Platform」の中核技術の1つに位置付けている。データセンターや政府・大学・研究機関、金融などを対象に日本や欧州で事業を展開し、2035年度にはSovereign Platform領域で1兆5000億円の売上高を目指す。