HCL Technologiesのソフトウェア事業部門であるHCLSoftwareは10月6日、「AIの実運用を支える企業ITとは」をテーマに説明会を開催した。同社は、エージェンティックAI時代の到来を見据え、企業が直面する運用やセキュリティの課題と、その解決策について説明した。

HCLSoftwareは、カスタマーエクスペリエンス、データ&AIプラットフォーム、セキュアインテリジェントオペレーションを提供している。今回はセキュアインテリジェントオペレーションが紹介された。

エージェンティックAIは過去のIT変革の3倍のインパクト

HCLSoftware Divisional Chief Revenue Officer, Intelligent Operations(Intelligent Operations部門 最高収益責任者)のWilliam Ellse(ウィリアム・エルス)氏は「当社の特徴は、サービス事業とソフトウェア・プラットフォーム事業の両方を持っている点だ。これまでインターネット、スマートフォン、SaaS(Software as a Service)、ビッグデータ、クラウドとITの大きな波を経験してきたが、エージェンティックAIは過去の波と比較して3倍のインパクトがある」と話す。

  • HCLSoftware Divisional Chief Revenue Officer, Intelligent Operations(Intelligent Operations部門 最高収益責任者)のWilliam Ellse(ウィリアム・エルス)氏

    HCLSoftware Divisional Chief Revenue Officer, Intelligent Operations(Intelligent Operations部門 最高収益責任者)のWilliam Ellse(ウィリアム・エルス)氏

AIにより生産性が向上したが、サイバー犯罪のリスクも増加しており、生成AIやAIエージェントの活用が急速に進むものの、ガバナンスが十分に整備されていないケースも少なくないという。AIによるコード生成の活用も急速に広がっており、ソフトウェア開発におけるコード作成の多くをAIが担う時代になりつつあり、60%を超える企業が業務プロセスの中で活用を進めている。

ただし、大きな課題もあるとエルス氏は指摘。同氏は「現在、エージェンティックAI関連プロジェクトの約40%は期待通りの成果を出せていない。われわれが見ている限り、問題の大半はエージェントそのものではなく、実装や統合、保守運用、ビジネス価値の定義、商用モデルなど、周辺領域に起因している。単にエージェントを導入することではなく、プラットフォームやサービスのレイヤーで課題を解決することが重要」との認識を示す。

  • エージェンティックAI関連プロジェクトの約40%は期待通りの成果を出せていないという

    エージェンティックAI関連プロジェクトの約40%は期待通りの成果を出せていないという

また、IT運用が抱える課題として多くの企業では数十種類以上のセキュリティツールを利用しているが、脅威は増加し続けており、侵害を発見して対処するまでに平均241日を要するとされている。さらに、日本を含む多くの国ではIT人材不足や人件費の上昇も深刻化している。

エルス氏は「IT部門ではツールの乱立やシステムの分断によって生産性が低下し、デジタル変革プロジェクトの半数以上は当初設定したビジネス目標を十分に達成できていない。また、多くのITリーダーが予算削減への対応を迫られている」と説明した。

HCLSoftwareが提案する、セキュリティとIT運用の統合基盤

このような状況に対して、同社ではセキュリティ、IT運用、自動化を統合して提供する戦略を打ち出している。IT環境を安全に保つ「サイバーオペレーション」、業務の自動化を実現する「ビジネスオペレーション」、IT基盤全体を効率的に運用していく「ITオペレーション」の3つの価値を提供するとのこと。

製品群はエンドポイント管理の「HCL BigFix」、アプリケーションセキュリティの「HCL AppScan」、エージェント/オーケストレーション基盤の「HCL UnO」、オブザーバビリティの「HCL HIVE」を組み合わせて提供。AIエージェント単体ではなく、セキュリティ、IT運用、自動化、可観測性を統合した運用基盤として提案している。

  • HCLSoftwareが注力する6つのオファリング

    HCLSoftwareが注力する6つのオファリング

同氏は「当社はソフトウェアベンダーであると同時にサービス企業でもある。プラットフォーム、AI、オーケストレーション、サービスを組み合わせて提供できる点が特徴だ。ビジネス、アプリケーション、データ、インフラの各レイヤーを統合的に可視化し、運用管理やサービス管理と連携させることができる。今後、オーケストレーションやエージェントによって、多くの機能が上位レイヤーへ移行していく。そのような中で当社は、基盤となるソフトウェアとプラットフォームを提供するとともに、それらを横断的につなぐ仕組みを提供する」と強調する。

Human in the Loopを重視、最終的には“ビジネス成果”を提供へ

HCLSoftwareは、今後もIT運用の自動化をさらに進めていく方針だが、同時に完全自律型の運用には慎重な姿勢を示す。同氏は「Human in the Loop」の考え方を重視しているという。エルス氏は「自動化できるところは自動化していく。しかし、人による監視やガバナンスは不可欠である」と力を込める。

さらに、同社は将来的には企業がソフトウェアやエージェントそのものを購入するのではなく、ビジネス成果(ビジネスアウトカム)を購入する時代になると予測。ソフトウェアやAIエージェントはその成果を実現するための手段であり、顧客が求めるのは最終的な事業成果という考え方だ。

  • AI時代の運用基盤とビジネス成果を結ぶ戦略を示した

    AI時代の運用基盤とビジネス成果を結ぶ戦略を示した

そして、エルス氏は「当社は10年以上前から自動化や運用サービスに取り組んできた。AIが注目される以前から蓄積してきた経験を活用し、顧客の成果実現を支援していく」との考えを示していた。