この半導体ニュースのまとめ
・STがドライバーおよび搭乗者モニタリング向け1.1MP車載イメージセンサを発表
・新ピクセル構造により画像の鮮明度を35%、赤外線感度を約60%向上
・画像処理機能を内蔵し、外付けプロセッサや光学部品を含むシステムコストを低減
STMicroelectronics(STマイクロエレクトロニクス)は9月14日(スイス時間)、車室内の赤外線センシングに向けた「SafeSense by ST」シリーズの新製品として、1.1MP車載用CMOSイメージセンサ「VD56GA」を発表した。
ドライバーおよび搭乗者モニタリングに必要な赤外線感度と画像処理機能を、小型の1.1MPセンサへ統合。カメラモジュールの光学部品や赤外線照明、光学フィルタを簡素化し、外付け画像プロセッサも不要にすることで、車室内センシングを高級車だけでなく量産車へ広げることを目指す。
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STマイクロエレクトロニクスの1.1MP車載用イメージセンサ「VD56GA」。赤外線撮像に最適化した裏面照射型ピクセル構造「ST DeepNIR」を採用し、3.7mm×3.2mmの小型CSPで提供される (出所:STマイクロエレクトロニクス)
車室内センシングを量産車へ拡大
ドライバーおよび搭乗者モニタリングシステムは、ドライバーの状態や視線、車室内の乗員などをカメラで検知し、安全機能や車内サービスへ活用するシステムである。
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STマイクロエレクトロニクスの車載用イメージセンサを用いたドライバーモニタリングのイメージ。赤外線撮像を活用し、車室内の明るさなどに左右されずにドライバーの状態や視線を検知する用途を想定する (出所:STマイクロエレクトロニクス)
搭載対象が高級車から幅広い車種やグレードへ広がる中、自動車メーカーや車載機器メーカーには、必要な画質を確保しながら、カメラモジュールのサイズ、コスト、設計の複雑さを抑えられるイメージセンサが求められている。
Yole Groupでは、ドライバーおよび搭乗者モニタリングシステムの搭載数が2031年までに7000万ユニットを超えると予測している。
VD56GAは、大型で高価なイメージセンサを採用せず、車室内モニタリングの多くの用途に必要な性能を小型の1.1MP構成で実現することを狙って開発された。
ST DeepNIRで赤外線感度を約60%向上
VD56GAには、赤外線撮像に最適化した新たな裏面照射型ピクセル構造「ST DeepNIR」を採用した。
前世代品と比べ、MTF(変調伝達関数)で示される画像の鮮明度を35%、量子効率で示される赤外線感度を約60%向上させたという。
車室内モニタリングでは、昼夜や車外から入る光の状態にかかわらず、ドライバーや搭乗者を安定して撮像する必要がある。このため、目立たない赤外線照明と組み合わせ、暗い車内でも必要な画像を取得できる赤外線感度が重要になる。
赤外線感度が高まれば、赤外線照明の出力や数を抑えられる可能性があり、消費電力や発熱、部品コストの低減につながる。高い画像鮮明度によって光学系への要求も緩和できるため、低コストなレンズや光学フィルタを採用しやすくなる。
STによると、VD56GAは同クラスでこの水準の光学解像度と赤外線感度を両立するセンサであり、ディスプレイ背面にカメラを設置するアンダーディスプレイカメラのように、撮像条件が厳しい用途にも対応できるとしている。
画像処理機能の内蔵で外付けプロセッサを不要に
VD56GAは、ミラー反転、クロップ、ダーク補正、自動露出、区分線形処理などの画像処理機能を内蔵する。
センサ側で基本的な画像処理を実行することで、後段に外付けの画像プロセッサを配置する必要をなくした。部品点数やプリント基板の実装面積、消費電力を抑え、カメラモジュールの設計と車両への組み込みを簡素化する。
出力形式はRAWとYUVの双方に対応する。イメージセンサからのデータを後段のプロセッサで処理する構成に加え、センサで処理した画像を利用する構成も選択でき、車両の電子アーキテクチャやソフトウェア環境に応じた実装を可能とする。
STは、センサ単体の価格だけでなく、レンズ、赤外線照明、光学フィルタ、画像処理回路などを含むカメラモジュール全体のコストを抑えられる点をVD56GAの特徴としている。
3.7mm×3.2mmの小型CSPを採用
VD56GAは、3.7mm×3.2mmの小型CSPで提供される。
小型パッケージの採用により、ドライバーを撮像するステアリングコラムやメーターパネル周辺、搭乗者を撮像するディスプレイ周辺など、設置スペースが限られる車室内へ組み込みやすくした。
アンダーディスプレイカメラへ適用すれば、ディスプレイ表面にカメラ用の開口部を設けず、インテリアデザインとセンシング機能を両立できる可能性もある。
小型のセンサ、赤外線感度、内蔵画像処理を組み合わせることで、車載カメラモジュールの小型化と低コスト化を進め、ドライバー監視から車室全体の搭乗者モニタリングまで幅広い用途に対応する。
フランスで前工程、アジアで後工程を実施
VD56GAの前工程は、STのフランス・クロル工場で行い、パッケージングなどの後工程はアジアで実施する。
STは、半導体の設計から製造までを手掛ける統合型製造モデル(IDM)を活用し、車載顧客に求められる品質管理、サプライチェーンのレジリエンス、長期供給へ対応する。
車載用半導体は、民生機器向け製品よりも長期間にわたって生産・供給されるほか、開発から量産までにも長い期間を要する。前工程を自社工場で管理することで、製品品質と供給継続性を確保し、長期的な自動車開発プロジェクトを支援する考えだ。
STは2026年初め、SafeSense by STブランドの車載用イメージセンサの累計出荷数が1000万個に達したことを発表している。欧州、アジア、米国の主要な自動車市場で採用されており、VD56GAの投入によって車室内センシング向け製品の適用範囲を量産車へ広げる。
VD56GAは現在サンプル提供中で、価格は個別見積もりとなる。STは、1.1MPの小型構成で赤外線画質と画像処理性能を高めることで、車両への実装やシステム設計を簡素化し、ドライバーおよび搭乗者モニタリングの幅広い車種への展開を支援していくとしている。