この半導体ニュースのまとめ
・ルネサスが産業用HMIやIoTエッジ向け64ビットMPU「RZ/G3L」「RZ/G3SE」を発売
・ピン互換により同一基板で高機能HMIからIoTゲートウェイまで製品展開が可能
・1mWクラスの待機電力とPCIe、TSN対応Ethernetで常時接続や機能拡張に対応
ルネサス エレクトロニクスは9月10日、64ビット汎用MPU「RZ/G」シリーズの新製品として、産業用HMIや家電用HMI、IoTゲートウェイ、ホームゲートウェイなどに向けた「RZ/G3L」および「RZ/G3SE」を発売し、量産を開始した。
両製品は最大1.2GHzで動作するArm Cortex-A55を最大4コアと、200MHz動作のCortex-M33を搭載する。PCIe、TSN対応ギガビットEthernet、USBなどの高速インタフェースも備え、HMI機器から常時接続型のIoTエッジ機器まで幅広い用途に対応する。
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ルネサス エレクトロニクスの64ビット汎用MPU「RZ/G3L」と「RZ/G3SE」のパッケージ外観。14mm角の400ピンLFBGAと17mm角の368ピンLFBGAが用意されている (出所:ルネサス)
GPUの有無でHMIとIoTエッジをカバー
RZ/G3Lは3Dグラフィックス表示に対応するGPUとH.264ビデオコーデックを搭載する。高度なユーザーインタフェースやグラフィックス、動画表示が求められるリテイル端末、医療用HMI、産業用HMIなどを主な用途として想定する。
一方のRZ/G3SEは、高度なグラフィックス処理を必要としないIoT機器向けに位置付けられる。GPUやビデオコーデックを省きながらもディスプレイインタフェースを備え、EV充電器や産業用ゲートウェイなどにおける状態表示や設定画面の表示に対応する。
両製品はピン互換となっているため、同一のプリント基板を利用しながら、製品に求められる表示性能や機能に応じてMPUを選択できる。
例えば、上位モデルにはRZ/G3Lを使用して動画や3Dグラフィックスを含むHMIを実現し、普及モデルにはRZ/G3SEを採用してシンプルな表示機能を提供するといった製品展開が可能となる。基板を共通化することで、製品ごとにハードウェアを設計し直す負担を減らし、開発期間や評価作業を抑えながら複数モデルを展開できるようにする。
2種類のパッケージを用意
パッケージは14mm角の400ピンLFBGAと17mm角の368ピンLFBGAを用意する。動作温度は-40℃から125℃までをカバーし、屋内のHMI機器だけでなく、温度条件の厳しい産業設備や屋外設置機器にも対応する。
ディープスタンバイ時の消費電力を1mWクラスへ
RZ/G3LとRZ/G3SEは、RZ/Gシリーズの第3世代に位置付けられ、独自の電源制御アーキテクチャによって待機電力を低減しており、ディープスタンバイモード時の消費電力は1mWクラスとなる。Linuxシステムをメモリ上に保持したまま待機状態へ移行でき、必要になった際にはLinuxを最初から起動し直すことなく、高速に動作を再開できる。
IoTゲートウェイやホームゲートウェイ、産業機器などでは、ネットワークへ常時接続しながらも、実際の処理を行っていない時間が長い場合がある。こうしたシステムでは、待機中の消費電力を抑えながら、センサ入力やネットワークからの要求が発生した際に素早く復帰することが求められる。
Linuxの実行状態を保持したまま低消費電力状態へ移行できることで、起動時間と待機電力の両立を図り、常時接続型機器の消費電力削減につなげる。
TSN対応Ethernetで産業ネットワークへ対応
ネットワーク機能として、TSNに対応したギガビットEthernetが搭載されている。
TSNは、Ethernet上で通信の遅延やデータ到着時間のばらつきを抑え、時間に制約のあるデータを安定して伝送するための技術。一般的な情報系ネットワークと、リアルタイム性が求められる制御系ネットワークをEthernetへ統合する用途などが想定されている。
工場の生産設備や産業用ゲートウェイでは、センサ情報や制御命令を決められた時間内に伝送する必要がある。両製品はTSN対応Ethernetを備えることで、低遅延かつ高信頼な通信を必要とする産業ネットワークへの搭載を可能とする。
HMIとして装置の状態を表示するだけでなく、装置やセンサ、上位システムとの情報交換を担うエッジ機器としても利用できる。
10種類の開発ソリューションを用意
ルネサスは、RZ/G3LとRZ/G3SEを利用した製品開発を支援するため、GUI開発環境、OS、システムオンモジュール(SoM)を含む10種類のソリューションを提供する。
GUI開発ではLVGL、Embedded Wizard、Slint、Candera、Spyrosoft、Qt Groupと連携する。高機能な産業用HMIから、必要な情報だけを表示するIoT機器まで、用途に応じたGUI開発環境を選択できる。
OS関連ではZephyr RTOSとアットマークテクノのソリューションを用意し、SoMではVirtium傘下のEmbedded Artistsとアドバネットが対応する。
また、長期サポートを目的としたCivil Infrastructure Platform(CIP)準拠のVerified Linux Package(VLP)も提供。産業機器や社会インフラ向け機器は、民生機器より長期間利用されることが多く、長期にわたるセキュリティ更新やソフトウェア保守が求められる。検証済みのLinuxパッケージやパートナーのGUI、OS、SoMを組み合わせることで、開発者が個別にソフトウェアやハードウェアの動作検証を行う負担を減らし、製品開発の期間短縮につなげることを目指すとしている。
2種類のウィニング・コンビネーションを提案
ルネサスは、RZ/G3Lを用いたAC EV充電ウォールボックスと、RZ/G3SEを用いたAI対応スマートホームセキュリティハブをウィニング・コンビネーションとして提案している。
AC EV充電ウォールボックスは最新のPLC通信規格に対応するソリューションで、RZ/G3Lの処理性能やHMI機能、ネットワーク接続機能を活用し、充電状態の表示や通信、機器制御などを実現する。
もう一方のスマートホームセキュリティハブは、カメラ、マイク、各種センサ、クラウドサービスを連携させ、高度な監視機能を実現する。RZ/G3SEが備える表示機能を利用しながら、外部AIアクセラレータなどを組み合わせることで、用途に応じたエッジAIシステムを構築できる。
なおルネサスは、性能、省電力性、接続性、製品展開の柔軟性を両立させることで、産業用HMIからIoTエッジまでをカバーし、顧客による製品開発の効率化と市場投入期間の短縮を支援するとしている。
