ServiceNow Japanは9月2日、セキュリティソリューション「Autonomous Security」に関する記者説明会を開催した。AIの普及によって複雑化するサイバーリスクに対応するため、自律型セキュリティ運用を実現する構想「Shift Zero(シフトゼロ)」や6つの統合ソリューションを紹介した。

AI時代のセキュリティ課題と「Shift Zero」構想

冒頭、説明に立ったServiceNow Japan 社長執行役員の鈴木正敏氏は「AIの急速な進展と普及により、チャンスと脅威が存在している。生産性を飛躍的に向上させてビジネスモデルの変革が期待される一方、AIを起因としたサイバー攻撃は高度・複雑化し、圧倒的なスピードで実行される。2026年はセキュリティが経営の重要なアジェンダになった年といえる」と指摘する。

  • ServiceNow Japan 社長執行役員の鈴木正敏氏

    ServiceNow Japan 社長執行役員の鈴木正敏氏

鈴木氏によると、AI時代におけるセキュリティの課題として、AIによる攻撃の自動化・複雑化、管理対象資産の爆発的増加、法制度強化への対応を挙げている。これらの課題に対するセキュリティ対策としては「資産の可視化をゼロトラストの起点とする」「脆弱性が生まれる土壌そのものを断つ」「侵入前提での検知と対処プロセスの確立」の3点を示している。

人海戦術での対応は限界を迎えており、設計そのものがセキュアな自律的完結型の仕組みで対応する必要があるという。その点、同社はCMDB(構成管理データベース)を中心とした資産管理情報と、リスク・セキュリティソリューションにより、ガバナンスを伴う形でAIネイティブな全社セキュリティ対応を実現できるとのこと。

同氏は「これらに加えて、買収したサイバー資産攻撃面管理のArmis、非人間アイデンティティ管理のVezaを含めたAIコントロールタワーによる強固なガバナンスでAIネイティブな自律完結型運用と脅威ゼロの世界を実現できる。これにより、単一のプラットフォームで全資産の可視化と自律完結型の運用、持続可能な仕組みを可能とし、ビジョンとして“Shift Zero(シフトゼロ)”を掲げている。これは攻撃対象や管理されていないAIエージェントをゼロに近づけることだ」と力を込める。

  • ServiceNowが掲げる「Shift Zero」の世界観

    ServiceNowが掲げる「Shift Zero」の世界観

Autonomous Securityが目指す自律型セキュリティ運用

続いて、ServiceNow Japan 専務執行役員 COO(Chief Operating Officer)の原智宏氏がAutonomous Securityについて解説した。同氏はAutonomous Securityに関して「AIを活用してセキュリティを高度化するとともに、AIを保護することでAI時代に企業が安全にビジネスを遂行できる環境を整えるものだ」と説く。

  • ServiceNow Japan 専務執行役員 COO(Chief Operating Officer)の原智宏氏

    ServiceNow Japan 専務執行役員 COO(Chief Operating Officer)の原智宏氏

昨今、アタックサーフェス(攻撃対象領域)は、従来のIT管理システム以外にも急速に拡大し、ガバナンスが及ばない資産、シャドーIT・AI、管理不十分なアイデンティティが増えることで、リスクの影響範囲が広がっている。

そのため、セキュリティ部門が全体を把握・制御しきれず、予測困難な状況が生まれている。また、ロボティクスやフィジカルAIの活用により、企業の業務プロセスは物理世界と接続されつつあり、新たな攻撃経路・対象となっている。

これらの資産が侵害されると、情報漏えいだけでなく事業継続性や物理的安全性にも影響を及ぼし、ITとは異なるプロトコルや管理手法で運用されてきた機器も、単一プラットフォームで統合的に管理する必要があるという。

原氏は「従来、セキュリティはIT部門が管理するテーマと見なされていた。現在は、事業継続、コンプライアンス、顧客信頼、レジリエンスに直結する経営レベルのビジネスリスクへと変化している。経営が問い直すべき新しいアジェンダとして、セキュリティを位置づける必要がある」との認識を示す。

経営陣が取り組むべき主要な論点として、同氏は「自社に何があるのか?」「誰が何にアクセスできるのか?」「最大の脅威を無力化するには、どこに注力すべきか?」「インシデントをより速く封じ込め、解決するには?」「コンプライアンス性を証明し、レジリエンスを高めるには?」といったことだという。つまり、守る対象を把握して脅威を封じ込め、人海戦術に頼らない運営基盤が必要との見立てだ。

そこで重要となるものが鈴木氏が言及したシフトゼロだ。シフトゼロとは、問題発生後の対応ではなく、攻撃につながるエクスポージャーや未管理資産を事前に排除し、リスクを発生させない状態を目指す考え方だ。

原氏は「シフトゼロは、問題が発生した後に対処するのではなく、可能な限り上流工程でリスクを取り除き、攻撃につながる構成要素をゼロに近づける考え方。攻撃発生前からエクスポージャーを低減し、未管理状態や脆弱性が残らない仕組みを構築するとともに、人がAIを道具として利用するだけでなく、領域によってはAIが自律的に攻撃へ対処する状態を目指すことだ。これを実現するものがAutonomous Securityとなる」と説明する。

6つのソリューションで実現するAutonomous Security

Autonomous Securityは、統合エクスポージャー管理の「Unified Exposure Management」、継続的に脆弱性を検知する「Continuous Vulnerability Detection」、IDとアクセスセキュリティの「Identity & Access Security」、エージェンティックインシデント対応の「Agentic Incident Response」、サイバーフィジカルセキュリティの「Cyber-Physical Security」、サイバーリスクとコンプライアンス「Cyber Risk and Compliance」の6つのソリューションで構成。

  • 6つの領域で構成されるAutonomous Security

    6つの領域で構成されるAutonomous Security

Unified Exposure Managementは資産や脆弱性、アイデンティティなどのリスクを統合・可視化し、優先順位付けから修復までを迅速化。Continuous Vulnerability DetectionはITやOT、クラウド、コード全体の脆弱性を継続的に検知し、悪用の可能性を見極めてリリース前から対処する。Identity & Access Securityは、人や非人間、AIエージェントを一元的に可視化し、最小限の適用と継続的なアクセス制御を実現するという。

Agentic Incident Responseは、AIでSOC(Security Operation Center)のトリアージや対応を自律化し、インシデントの調査・対応を統合して高度化。Cyber-Physical SecurityはOTや産業制御システム、IoT、医療機器などの資産を可視化し、異常や攻撃経路を特定してサイバーフィジカル環境のリスクを低減する。Cyber Risk and Complianceはサイバーリスクとコンプライアンスを継続的に可視化・自動化し、サードパーティを含むリスク管理とレジリエンスを強化するとのこと。

  • Shift Zeroを実現する6つのソリューション

    Shift Zeroを実現する6つのソリューション

原氏は「セキュリティ管理業務の中にAIを組み込むことで、複数のツールで構成されている場合でも管理プロセスを統制することができる。また、サードパーティのソリューションもサポートしており、さまざまなソリューションも組み合わせて提供が可能だ」と述べていた。

  • AIによる自律型セキュリティ運用を実現

    AIによる自律型セキュリティ運用を実現

日本市場でセキュリティ事業を拡大、パートナー連携を強化

最後に、日本市場におけるセキュリティ事業について、ServiceNow Japan 執行役員 ソリューション営業統括本部 統括本部長の村上慎吾氏が説明した。

  • ServiceNow Japan 執行役員 ソリューション営業統括本部 統括本部長の村上慎吾氏

    ServiceNow Japan 執行役員 ソリューション営業統括本部 統括本部長の村上慎吾氏

村上氏は、Autonomous SecurityがNIST(米国国立標準技術研究所)のサイバーセキュリティフレームワーク「NIST CSF 2.0」で定める、統治・識別・防御・検知・対応・復旧いずれにも対応しており、現状の検知・対応コンプライアンスの個別運用による分断を解消できるという。

  • NIST CSF 2.0に対応するAutonomous Security

    NIST CSF 2.0に対応するAutonomous Security

同氏は「当社の中核で20年以上培ったCMDBとデジタルワークフローというコアコンピタンスにAIを組み合わせることで、広がった検知範囲を確実に価値ある対応につなげることができる。CMDB、ワークフロー、AIを単一のプラットフォームで機能させることができる」と力を込める。

従来から同社では、グローバルのコンサルファームや日本を代表するSIerとのパートナーシップを構築している。今回、これまで培ったパートナーシップをセキュリティの領域にも拡大していく。また、セキュリティベンダーとの連携を拡大・強化し、新たなパートナー網を構築する考えだ。

  • 日本市場でセキュリティパートナー網を拡大

    日本市場でセキュリティパートナー網を拡大

村上氏は「現在、お客さまから強いニーズがあり、重要インフラを中心にセキュリティを強化する流れが後押ししている。また、対応できる領域がITのみならずOTやIoT、医療機器、非人間アイデンティティなどに広がり、新しい武器が加わった。さらに、検知されたセキュリティデータはCMDBに統合されることから、既存のIT運用のさらなる高度化が図れる。そして日本市場では強固なパートナーシップの存在が当社の強みであるため、日本市場におけるプレゼンスをさらに高めていく」と述べ、プレゼンテーションを結んだ。