この半導体ニュースのまとめ
・Micronが米国に長期研究拠点「Micron Research Labs」を設立へ
・今後10年間で100億ドルを投じ、2027年に中核施設をボイシに着工予定
・次世代メモリ、コンピューティング、先端パッケージング、半導体製造を研究
Micron Technologyは8月20日(米国時間)、半導体メモリとコンピューティングの将来を見据えた長期研究拠点「Micron Research Labs」を米国に設立すると発表した。
本部は同社の本拠地であるアイダホ州ボイシに置き、今後10年間で100億ドルを投じる。ボイシの中核施設を中心に、大学との共同研究、世界各地のサテライトラボ、半導体業界とのパートナーシップを組み合わせた研究ネットワークを構築する。
10年を超える長期的な研究に注力
Micron Research Labsは、既存製品の改良や現在の技術ロードマップに沿った研究だけでなく、10年を超える時間軸でメモリとコンピューティングの基礎技術を研究する拠点となる。
主な研究分野として、重要メモリ技術、高度なメモリおよびコンピューティングアーキテクチャ、先端パッケージング、将来の半導体製造技術を挙げている。AIシステムの高度化に伴って増大するメモリ帯域、容量、電力効率などの課題に対し、材料やデバイスからパッケージ、システムアーキテクチャまでを横断して研究することを狙う。
生成AIやエージェンティックAIでは、演算性能だけでなく、大量のデータを一度にやり取りするためのメモリ帯域、データ移動に伴って生じる消費電力などがシステム性能を左右するようになっている。AIアクセラレータとメモリをどのように接続・統合するかが重要になる中、メモリとコンピューティングを個別ではなく、システムレベルで最適化する必要性が高まっていることを踏まえた取り組みといえる。
大学や政府、スタートアップとの連携を推進
Micron Research Labsは、Micron社内の研究者だけで完結する研究所ではなく、顧客、大学、政府、スタートアップ、装置・材料メーカーなどを結ぶオープンな研究拠点として運営される。
ボイシの中核施設と、米国、欧州、日本、インド、シンガポール、台湾に広がる同社の研究・技術拠点を接続し、社外の専門家や研究機関との連携を進める。科学的な発見を実際の製品や製造技術へ移行するまでの期間短縮を図る考えだ。
AI時代のメモリ開発では、メモリセルやプロセスの微細化だけでなく、新材料、製造装置、接合技術、先端パッケージング、コンピューティングアーキテクチャなどを同時に進化させる必要がある。研究開発の複雑化を踏まえ、複数の企業や研究機関が競争前領域で協力する研究体制を構築する狙いがある。
同社はこれまでに、累計で6万2000件の特許を取得したとしており、Micron Research Labsにおいて、こうした技術資産を基盤に基礎研究を進めるとともに、次世代のメモリ研究者や技術リーダーの育成にも取り組むとしている。
2027年にボイシの中核施設を着工へ
Micron Research Labsの中核となる施設はボイシにて2027年に着工される予定。施設は数百人の研究者を収容可能な規模を予定し、研究活動に加えて、国際的な研究会議、ワークショップ、イノベーションフォーラムなども開催することを目指すなど、研究成果を社内の製品開発へつなげるだけでなく、大学や研究機関、企業などが知見を交換する場として活用することで、米国を中心とするメモリ研究のエコシステムそのものの強化を図ることとなる。
狙いはAI時代における技術競争力の中長期的確保
今回の100億ドルの投資は、Micronがすでに発表している米国内での製造および研究開発に対する2500億ドル超の投資計画に基づいたものとなる。
同社は米国内でDRAMの生産能力を拡大するとともに、製造と研究開発への投資によって9万人超の雇用創出を見込んでおり、今後のメモリおよび先端製造分野における米国のリーダーシップの強化につなげることを目指しており、icron Research Labsは、量産能力の拡大を目的とする工場投資とは役割を分け、将来の製品や製造技術の源泉となる長期研究を担うこととなる。
AIデータセンターにおける消費電力の増大や帯域幅の拡大、メモリ供給量の制約などの課題に対し、現在のDRAMやNANDの延長だけでは対応が難しくなる可能性がある。そうした懸念もあり、Micron Research Labsでは、現在の製品ロードマップに沿った開発とは別に、10年を超える視点でメモリとコンピューティングのあり方を研究することとなる。将来のAIシステムを支えるメモリ技術を米国を中心に創出し、研究成果を先端半導体の製造へつなげる体制を構築することで、AI時代における同社の技術競争力を中長期的に確保する狙いがあるとみられる。