この半導体ニュースのまとめ
・世界のリーダーの6割が5年以内に多数のロボットを運用すると予想
・人間とロボットの協働に関する正式な戦略を策定済みの組織は4割
・大規模展開には戦略、スキル、安全性、外観、インフラの整備が重要
Intelは、企業や公共機関におけるロボティクス導入の課題をまとめた調査レポート「The Robotics Readiness Gap」を発表した。
調査は米国、英国、ドイツ、日本、中国、韓国の6カ国で、年間売上高5億ドルを超える組織の経営・IT部門のシニアリーダー、ロボティクス専門家、政府・医療関係者の計800人を対象に実施。対象業種は小売、製造、医療、防衛、スマートシティで、日本からは130人が回答した。
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Intelのロボティクス調査の対象者。米国、中国、日本、ドイツ、英国、韓国の6カ国における、年間売上高5億ドル以上の組織のシニアリーダーやロボティクス専門家など計800人を対象に実施 (出所:Intel)
ロボット導入意欲に対して運用戦略の整備が遅れる
回答者の6割は、所属組織が今後5年以内に多数のロボットを運用すると予想しているほか、ロボティクスを組織全体で大規模展開した場合、業務の生産性を平均で2倍にできる可能性があるとみている。
さらに67%は、2030年までに人間とロボットが協働する労働力の管理体制が整うと回答し、74%は人材計画とロボティクス戦略が不可分になると予想している。
一方、人間とロボットの協働に関する正式な戦略を現在策定している組織は40%にとどまった。Intelでは、ロボット導入への意欲と、ロボット運用面での準備状況との間にギャップが生じていると指摘する。
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2030年までに人間とロボットが混在する労働力を管理できるとする回答と、正式な人間・ロボット協働戦略を持つ組織の割合を業種別に比較したもの。準備状況のギャップは防衛分野が48ポイントで最大となった (出所:Intel)
ロボティクス戦略の主な責任者も、CTOが29%、CIOが18%、COOが16%と分散しており、ロボティクスまたは自動化の専任責任者を置いている組織は12%だった。多数のロボットを運用するには、技術基盤だけでなく、人材計画、業務プロセス、設備投資、安全管理などを横断した体制が必要になるとする。
導入準備を左右する5つの要素
Intelは、ロボティクスの大規模展開に成功する組織と、パイロット段階で停滞する組織を分ける要素として、「戦略」「スキル」「安全性」「外観」「大規模展開」の5つを挙げる。
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Intelが示したロボティクス導入準備の5つの要素。業務モデルへの統合を意味する「戦略」、人材と働き方を再構築する「スキル」、システム全体へ組み込む「安全性」、用途を重視した「外観」、フィジカルAI基盤を整備する「大規模展開」で構成される (出所:Intel)
戦略では、ロボットを既存システムへ後付けするのではなく、中核となる業務プロセスや意思決定、責任分担に組み込む必要があるとする。スキルでは、人間とロボットの協働を前提に、新たな職務や能力、働き方を整備することが求められるとする。安全性については、ハードウェアやソフトウェアに加え、ネットワーク、サイバーセキュリティ、ガバナンス、運用手順まで含めた設計が必要となるとし、外観では、人型にこだわらず、実際の用途に適した形状や機能を選択することが重要になると指摘している。そして大規模展開では、認識、推論、意思決定をリアルタイムに行うためのエッジAIやデバイス搭載AIなど、フィジカルAIを支えるインフラの整備が求められるとする。
4割がスキルや人材不足を阻害要因に指摘
さらに回答者の3分の2は、ロボティクスによって人間の労働力スキルが低下するのではなく、むしろ向上すると回答したほか、75%がロボットの管理、保守、協働に向けた新たな職務が必要になると予想している。
このほか、調査によると、ロボットの導入によって現在の人的能力の14%が別の業務へ再配置されているとするが、この割合は2030年に24%へ上昇する見込みだという。反復作業や危険な作業をロボットへ移すことで、人は判断や創造、問題解決などを必要とする業務へ移行できる可能性がある。
一方、10人中4人が、スキルや人材の不足がロボティクス導入の規模拡大を妨げていると回答。特にエッジコンピューティングとデバイス搭載AIのインフラについて、一定以上のスキルを持つとした割合は33%にとどまった。
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ロボティクスの大規模展開に必要となる組織内能力の整備状況。エッジコンピューティングとデバイス搭載AIのインフラについて、一定以上の能力を持つとする回答は33%にとどまり、回答者の4割がスキルや人材の不足を規模拡大の阻害要因に挙げた (出所:Intel)
安全性への懸念で55%が導入を延期
回答者の31%は、ロボティクスが最も大きな価値をもたらした領域として安全性を挙げている。危険な作業や身体的負担の大きい作業をロボットが担うことで、労働災害の低減が期待できるためだ。
その一方で、55%が安全性への懸念によってロボティクスの導入が遅れたとも回答しており、68%が、より明確なグローバル安全基準が策定されれば導入を加速できるしている。
ロボットがネットワークに接続され、センサデータや制御情報を扱うようになれば、サイバーセキュリティも重要になることから、調査では42%が、サイバーリスクまたはデータリスクを規模拡大の阻害要因に挙げている。
見た目よりも性能と信頼性を重視
回答者の77%は、ロボットの見た目よりも性能が重要だと回答している。今後5年間で最も大きな影響を及ぼすと予想されたのは自律移動ロボットの20%で、固定型産業用ロボットアームが14%、検査・センシングロボットが11%と続き、各所で注目を集めるヒューマノイドは6%にとどまった。フィジカルAIとしてヒューマノイドロボットが米国、中国を中心に盛んに開発競争が進められている一方で、日本でフィジカルAIを標榜する企業はドローンやAGVなど、適材適所のロボット活用を提案する場合が多く、今回の調査からは、世界的にも本流としてはヒューマノイドロボットではなく、それぞれの用途に応じた最適解を提供する形態であることが示されたと言えるだろう。
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今後5年間で各業界に大きな影響を及ぼすと予想されるロボットの種類。自律移動ロボットが20%で最多となり、固定型産業用ロボットアームが14%、検査・センシングロボットが11%で続いた一方、ヒューマノイドは6%にとどまった (出所:Intel)
また65%は、現在のロボットのフォームファクターが、現実世界のニーズではなく、技術的な制約によって決められていると回答しており、Intelでも、ヒューマノイドロボットが技術開発の目標として重要である一方、実際の業務では用途に応じて移動方式や形状、機能を最適化したロボットの導入が先行するとみている。
重要用途の78%が100ms以内の意思決定を要求
ミッションクリティカルなロボティクス・アプリケーションにおける自律的な意思決定の許容遅延については、55%が10~100ms、23%が10ms未満と回答した。合計すると78%が100ms以内の意思決定を必要としているとする。
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ミッションクリティカルなロボティクス・アプリケーションにおける自律的意思決定の許容遅延。回答者の55%が10~100ms、23%が10ms未満の応答を必要としており、合計78%が100ms以内の処理を求めた (出所:Intel)
すべての処理をクラウドで行うと、通信遅延や接続障害により必要な応答時間を満たせない可能性があることから、重要な処理はロボット本体や現場に近いエッジで行う必要があることを示すデータと言える。
調査では42%の組織が、エッジまたはデバイス搭載AIの戦略を策定して予算を確保済みと回答したほか、39%が積極的に開発を進めているとしている。
Intelでは、今後は単にロボットを導入できるか否かではなく、業務、人材、安全性、システム基盤を含めて大規模展開できる準備が整っているかが問われるようになってくるとしており、エッジAI半導体を中心に、「Intel Robotics AI Suite」や「OpenVINO Physical AI」などといったソフトウェアソリューションを組み合わせていくことで、ロボティクスとフィジカルAIの導入を支援していくとしている。

