この半導体ニュースのまとめ
・NXPが10BASE-T1S EthernetデジタルPHY内蔵の産業向けMCU「MCX A5」を発表
・ポスト量子暗号とPSA Certifiedレベル3に対応し、長期的なセキュリティを確保
・産業機器の末端からリアルタイムデータを収集し、予知保全やエッジAIへの活用を支援
NXP Semiconductorsは8月18日、産業・IoTエッジアプリケーション向けMCU「MCX A5」ファミリを発表した。10BASE-T1S EthernetデジタルPHYを内蔵した有線MCUとして、ポスト量子暗号(PQC)で保護されたトポロジ検出機能を搭載したとしている。
MCX A5ファミリは、最大240MHzで動作するArm Cortex-M33コアを搭載。産業機器の末端に位置するセンサ、アクチュエータ、コントローラなどをEthernetへ接続し、予知保全、インテリジェントなエネルギー管理、産業オートメーション、エッジAIに必要なリアルタイムデータを収集できることから、主なターゲットを産業オートメーション、ビルオートメーション、エネルギーインフラなどの分散型エッジアプリケーションとしている。
未接続の産業用エッジノードをEthernetへ
産業オートメーションでは、AIとエッジ処理の導入が進み、設備から収集したデータを運用効率の向上や異常検知に活用する動きが広がっている。一方、多くの産業用エッジデバイスはネットワークに接続されていないか、RS-232やRS-485といった従来型インタフェースを使用しており、自動化に必要なリアルタイムデータを十分に活用できていないという。
MCX A5ファミリは、10BASE-T1S EthernetデジタルPHYをMCUへ統合することで、IPベースの接続を産業システムの末端まで拡張することを目指して開発されたもので、従来は個別に必要だった機能を集約し、外付け部品、コスト、設計の複雑さを抑えながら、より多くの産業用ノードをEthernetへ接続できるとしている。
10BASE-T1Sは、1組のツイストペア線を使用するシングルペアイーサネット(SPE)の規格で、複数ノードを同一の伝送路に接続するマルチドロップ構成に対応する。スター型のEthernet配線と比べてケーブルやコネクタの削減が期待でき、分散配置されるセンサやアクチュエータの接続に適する。
接続機器を自動検出してネットワークを可視化
また、MCX A5ファミリが備えるトポロジ検出機能は、ネットワークへ接続されたデバイスを自動的に検出し、その構成をマッピングすることが可能であり、これにより、ネットワーク上の機器構成を可視化し、産業設備の導入や構成変更、保守を簡素化できる。
工場やビルでは多数のセンサ、コントローラ、アクチュエータが分散配置されるため、機器の追加や交換が発生すると、接続状態や配置情報を手作業で確認する必要が生じる。トポロジを自動検出できれば、設置時の設定作業を減らせるほか、機器の交換やネットワーク障害の把握も容易になる。
ポスト量子暗号を用いた信頼の基点を搭載
産業機器は10年以上にわたって使用される場合があり、長期運用を前提としたサイバーセキュリティ対策が求められる。こうしたニーズを踏まえ、MCX A5ファミリでは、PSA Certifiedレベル3のセキュリティとPQCサポートを組み合わせ、将来の量子コンピュータによる暗号解読リスクにも備えている。
PQCをベースとするハードウェアの信頼の基点(Root of Trust)を搭載し、セキュアブート、セキュアなファームウェア更新、セキュアアテステーション、セキュアデバッグ認証をサポート。セキュアブートで、起動時にファームウェアの正当性を確認し、改ざんされたソフトウェアの実行を防ぐほか、セキュアアテステーションにて、デバイスやソフトウェアの状態が信頼できることを外部へ証明。産業機器をネットワークへ接続することで攻撃対象が広がる中、機器の導入から保守、更新までを通じて信頼性を維持する仕組みとなる。
これらの機能により、開発者はセキュアなコネクテッド製品を長期にわたって運用しながら、欧州サイバーレジリエンス法をはじめとする新たなサイバーセキュリティ要件にも対応できるとしている。
RustとZephyr RTOSにも対応
このほか、MCX A5ファミリの一部デバイスは、Rustプログラミング言語をサポートしており、ソフトウェア開発環境としては、NXPのMCUXpressoソフトウェア・ツールエコシステムを利用できる。また、オープンソースのリアルタイムOSであるZephyr RTOSにも対応するため、開発者は商用およびオープンソースのソフトウェア環境を用途に応じて選択でき、LTS(Long-Term Support)リリースと組み合わせることで、長期的な製品保守やセキュリティアップデートを支援することを可能としている。
なお、同ファミリは現在サンプル出荷中で、CAN FDや100M Ethernet MACなどの有無のほか、ADCのチャネル数、GPIOの数、パッケージサイズなどの違いなどで4製品が提供される予定としている。
