米IBMは8月19日(現地時間)、2基の極低温モジュールを連結し、単一の超低温環境として冷却することに成功したと発表した。同アーキテクチャは数百個の量子チップを接続し、複雑・大規模な問題の解決を可能にする量子コンピュータに向けて、モジュール型で共有可能な超低温システムへと拡張できるように設計されている。

  • 連結した2基の極低温モジュール

    連結した2基の極低温モジュール

モジュール型アーキテクチャで量子チップの大規模接続を可能に

今回の成果は、同社が2029年に実現を目指す世界初のフォールトトレラント(無停止)量子コンピュータ「IBM Quantum Starling」の取り組みにおける重要なマイルストーンだという。IBM Quantum Starlingは、誤り訂正、プロセッサ設計、デコーディング、システムエンジニアリングにおける技術を統合して実現する計画だ。

連結された2基の稼働モジュールは、高さ、幅ともに8フィート(約2.4メートル)を超え、初期テストでは両モジュールを連携させて5日未満で4ケルビン(液体ヘリウムの温度)まで冷却できることが実証。その後、最終温度である15ミリケルビン未満に到達した。

各モジュールの真空容器は、IBMの量子システムと比較して最大12倍の配線スペースを備え、モジュール内、モジュール間で多くのチップ間接続を可能にするとのこと。IBMの新たな設計でモジュールを密接に並べて連結することが可能となる。

その結果として得られる広い空間を活用して、IBMの「L-coupler」技術によって量子プロセッサ間を直接接続することができる。L-couplerは、個別の量子チップ同士を接続して情報共有や相互通信を実現するとともに、大規模な量子コンピューターの一部として動作させることを可能するという。

量子ロードマップは着実に進展

同社の量子ロードマップでは、L-couplerを活用して複数の量子プロセッサを接続し、2027年までに少なくとも1000個のプログラム可能な量子ビット(計算の実行に直接使用できる量子ビット)を備えた大規模量子コンピュータを構築する計画だ。

この目標に向けて、同社は2026年後半にIBM Quantum Nighthawkプロセッサを今回発表した極低温モジュールに搭載し、運用性能試験の範囲を拡大する予定。IBM Quantum Starlingの提供時には、各極低温モジュールに数千個の量子ビットを収容する計画としている。 2025年に同社は、誤り耐性に必要な物理リソースを削減する新しい誤り訂正符号とともに、IBM Quantum Starlingに向けた計画を発表した。それ以降、同社は中核的なハードウェアコンポーネントの実証や、高効率な誤り訂正デコーディングにおけるブレークスルーなど、計画通り進展を続けているという。

同社は、連結可能な極低温モジュールでイノベーションのスピードを向上できると考えているとのこと。例えばIBM Quantum System Two環境に不可欠な3つのコンポーネントが新しいアーキテクチャに組み込まれているが、新たな構成でそれぞれを独立して試験・改良し、迅速な反復開発を行うことが可能になる。