この量子コンピュータニュースのまとめ

・SCREENが冷却原子型量子コンピュータを開発するYaqumoとの共同研究を開始
・空間光変調素子や多波長対応レンズを統合した光学モジュールを開発
・原子操作の高速化と計算サイクルの短縮を図り、光学系の国産化を推進

SCREENホールディングスとYaqumoは8月31日、冷却原子型量子コンピュータを開発に向けた共同研究を開始することを発表した。

  • YaqumoとSCREENホールディングスのロゴ

YaqumoがNEDOの「ポスト5G情報通信システム基盤強化研究開発事業」に採択されたことを受け、SCREENが共同研究先として参画する。両社は冷却原子型量子コンピュータに用いる光学基幹デバイスの高性能化・国産化と、複数の光学部材をモジュールとして統合する技術の確立を目指す。

原子操作を担う光学モジュールを開発

冷却原子方式は、レーザー光などを用いて捕捉・冷却した原子を量子ビットとして利用する方式で、中性原子方式とも呼ばれている。

量子ビット数の拡張性や接続自由度の高さを特徴とするが、大規模な量子計算では、多数の原子を個別かつ高速に操作する必要があるため、光学系の変調速度や位置制御精度、長時間動作時の安定性がシステム性能を左右する。

SCREENは、量子計算や誤り訂正に不可欠な原子操作を担う空間光変調素子と、多波長対応レンズなどを統合した光学モジュールの開発を担当。量子コンピュータの大規模化、高速化、高忠実度化に必要な性能を実現し、冷却原子方式の課題の1つである計算サイクル時間の短縮を図ることを目指すという。

具体的には、共同研究として、高いリフレッシュレートを備え、多数の原子を高速かつ個別に操作できる空間光変調器(SLM)モジュールを開発する。

また、Yaqumoでは、複数び波長に対応した対物レンズを開発することで、原子に対する光照射の自由度を高め、量子ゲート操作の高速化と高忠実度化を目指すとするほか、低熱膨張材料なども活用し、温度変化を含む環境変動の影響を抑えながら、光学系を長時間安定して動作させるための部素材の開発も進めるとしている。

光学系のモジュール化と標準化を推進

冷却原子型量子コンピュータの光学系では、性能要件を満たす部素材の不足や海外製品への依存に加え、部品の供給元が分散し、モジュール化が進んでいないことが課題となっている。今回の共同研究は、Yaqumoが量子コンピュータの開発企業として要求仕様の定義と実機評価を担い、SCREENが光学モジュールの高精度設計と量産技術を提供することで、これらの課題解決を目指すとする。

またYaqumoでは、個別の光学部品を開発するだけでなく、光学系と制御系を機能単位で再構成し、複数の量子コンピュータメーカーが利用できるモジュール体系の構築を目指し、モジュール間のインタフェース仕様の標準化も進めるほか、フォトニック集積回路(PIC)の適用可能性を検証し、光学系の小型化に向けた技術ロードマップを策定するともしている。

光学基幹デバイスを機能統合型モジュールとして提供できれば、量子コンピュータメーカーが光学系を個別に設計・調達する負担を軽減できるほか、システムの大規模化や量産化にもつながる可能性がある。

日本発のモジュール標準の確立へ

なおYaqumoは、開発した光学基幹デバイスとモジュールを自社の量子コンピュータへ組み込み、性能や安定性の評価を進めつつ、将来的にはSCREENをはじめとする国内企業との連携を通じて量産・供給体制を整えるとしており、個別の部素材の供給に留まらず、機能統合型モジュールとして、、国内外の量子コンピュータメーカーへ提供できる産業基盤へと発展させることで、日本発のモジュール標準の確立と、量子コンピュータのグローバルサプライチェーンにおける日本の重要性向上を目指すとしている。