この半導体ニュースのまとめ
・TOPPANがシンガポールに海外初となるFC-BGA基板の生産拠点を開設
・生成AIやネットワーク機器向けに需要が拡大する大型・高多層基板を生産
・新潟工場との2拠点体制で2027年度までに生産能力を2022年度比2.5倍以上へ
TOPPANホールディングスのグループ会社であるTOPPANは9月30日、シンガポールの現地法人「ADVANCED SUBSTRATE TECHNOLOGIES.(AST)」に、高密度半導体パッケージ基板「FC-BGA(Flip Chip Ball Grid Array)」の生産工場を開設したことを発表した。
同工場は、TOPPANにとって海外初となるFC-BGA基板の生産拠点で、シンガポール経済開発庁(EDB)と通信用半導体大手のBroadcomの支援を受けて整備された。2026年9月29日には、シンガポール政府やパートナー企業、主要顧客などの関係者を招いて開所式が開催されたという。
生成AIやデータセンターの普及に伴ってデータトラフィックが増加する中、AI半導体や高性能ネットワーク機器に使用されるFC-BGA基板では、大型化と高多層化が進んでいる。TOPPANは新潟工場でFC-BGA基板の生産能力を拡大してきたが、将来の需要増と製造負荷の高まりに対応するため、シンガポール工場を含む2拠点体制を構築する。
AI向けの大型・高多層FC-BGA基板に特化
FC-BGA基板は、半導体チップとマザーボードの間を接続する半導体パッケージ基板で、高性能プロセッサやAIアクセラレータ、ネットワーク向け半導体などに使用される。
半導体チップの高性能化や大規模化に伴い、FC-BGA基板にも高速信号を安定して伝送する性能や、多数の信号を接続するための高密度配線が求められている。複数のチップやHBMなどを1つのパッケージへ集積するチップレット技術の活用が広がることで、パッケージ基板のサイズや層数も増加する傾向にある。
ASTの工場は、こうした生成AI、機械学習、大型ネットワークスイッチ向けの大型・高多層FC-BGA基板の生産に特化する。工場の所在地はシンガポール西部の9 Pesawat Driveで、延床面積は全体で約9万5000m2。第1期の稼働範囲は約7万m2で、2026年12月の生産開始を予定している。
ASTの全従業員数は2026年9月末時点で315人。200名以上の高度エンジニアや技術者を雇用しているとするほか、製造機能に加え、将来の市場ニーズへ対応する研究開発機能や、シンガポールの教育機関と連携した人材育成体制も整備していくという。
新潟工場との2拠点体制で供給を安定化
TOPPANは、FC-BGA基板を国内生産拠点である新潟工場において2014年から量産してきた。2026年1月にはAI・データセンター向けの大型・高多層基板に対応する新製造ラインを稼働させ、生産能力を2022年度前半期比で2倍へと拡大している。
一方、大型・高多層基板は製造工程が複雑で、基板サイズや厚みの拡大に伴って生産設備への負荷も高まる。需要増に継続して対応するには、新潟工場だけでなく、新たな生産拠点による供給能力の確保が必要になっていた。
また、生産拠点を国内1カ所へ集中した場合、自然災害や地政学的リスク、物流の混乱などによって供給が影響を受ける可能性があることから、TOPPANでは新潟工場とASTによる2拠点体制を構築し、FC-BGA基板の生産能力を拡大するとともに、BCPの観点から生産地域を分散することを決断。海外に生産拠点を置くことで、グローバル顧客への供給体制や技術サポートも強化する狙いがあるとする。
AI・ネットワーク向け半導体パッケージ基板の技術高度化を目指す拠点に
シンガポールは、半導体の前工程から組み立て・テスト、製造装置、材料、研究開発までを抱える半導体産業集積を形成している。アジア各国や欧米へアクセスしやすい立地に加え、半導体製造を担う技術者を確保しやすい点も、新たな生産拠点として選定した要因となった。
TOPPANは、シンガポールをFC-BGA基板事業におけるグローバル戦略拠点と位置付け、Broadcomをはじめとする顧客やパートナー企業との連携を進める。
ASTでは製造だけでなく、顧客ニーズに対応する技術開発や人材育成も行い、AI・ネットワーク向け半導体パッケージ基板の技術高度化につなげるとしている。
2027年度までに生産能力を2.5倍以上へ
TOPPANはASTの生産開始と新潟工場の能力増強を通じ、2027年度までにFC-BGA事業の生産能力を2022年度比で2.5倍以上へ拡大する計画である。
同社はFC-BGA基板の量産能力を拡大する一方、次世代半導体パッケージ技術の研究開発も進めている。石川工場では、大型ガラス基板を用いるインターポーザやガラスコア、有機RDLインターポーザなどを対象としたパイロットラインを整備。米国では、次世代半導体パッケージの研究開発コンソーシアム「US-JOINT」に参画し、材料・装置メーカーや半導体関連企業との共創を進めている。
AI半導体の高性能化に伴い、FC-BGA基板には大型化、高多層化、高速信号伝送、低消費電力化への対応が求められる。製品の技術難易度が高まる中、安定した供給能力と次世代パッケージ技術の双方を確保することが事業競争力を左右する。
TOPPANは新潟工場とASTを量産拠点として活用しながら、石川工場や海外の共創拠点で次世代技術を開発する体制を構築する。
シンガポールで大型・高多層FC-BGA基板の生産を開始し、国内外の拠点間で量産と研究開発の役割を分担することで、生成AIやデータセンター、ネットワーク機器向けに拡大する半導体パッケージ基板需要を取り込んでいくとしている。
