伊藤忠テクノソリューションズ(CTC)は9月28日、材料の製造・加工工程のシミュレーションを高速化するAI技術「サロゲートモデル」の大同特殊鋼への提供を開始したと発表した。
大同特殊鋼はクラウド型材料開発プラットフォーム「ICMD(Integrated Computational Materials Design)」を2023年11月に導入しており、CTCは導入時から支援を行っている。今回、このICMDとサロゲートモデルを組み合わせることで、材料候補の探索から製造条件の検証までを効率化。より多くの材料候補や製造条件を短期間で検討できるようにし、試作回数の削減と材料開発期間の短縮に貢献しているという。
過去のシミュレーション結果をAIが学習
大同特殊鋼は、航空宇宙や半導体などの先端分野に向けた高機能材料を開発している。新材料の開発では、求める性能を実現するため、材料の成分や加工時の温度、材料の圧下量などの製造条件を変えながら、多くの試作と評価を繰り返す必要がある。
同社は、強度や耐久性に影響する材料の成分や製造条件をコンピュータ上で検証できるICMDを活用し、試作前に複数の材料候補や製造条件を検討してきた。その中で、材料開発をさらに迅速化するため、材料候補の探索と製造条件の高速な検証を組み合わせた開発環境が求められていたという。
今回CTCが提供したサロゲートモデルは、過去のシミュレーション結果をAIに学習させ、製造条件の違いによる材料の状態変化を短時間で予測する技術。計算負荷の高いシミュレーションを繰り返すことなく結果を予測でき、ICMDによる材料候補や製造条件の検討と組み合わせることで、より多くの条件を短時間で検証できる。
数日~1週間のシミュレーションが1分以内に終了することも
提供されたサロゲートモデルは、大同特殊鋼の渋川工場で導入を進めている大型鍛造機の研究開発に活用されている。大同特殊鋼によると、従来は1つのシミュレーションに数日から1週間程度を要していたが、サロゲートモデルでは計算内容によっては1分以内で結果を予測できるようになったという。
これにより、より多くの加工条件を短期間で比較・検証でき、材料開発期間を短縮。品質向上やエンドユーザーのニーズに応じた製品の迅速な開発につながっているとしている。
CTCは今後、ICMDやサロゲートモデルに、大同特殊鋼が長年蓄積してきた実機データを組み合わせることで、材料設計から製造までを一貫して検討できる開発環境の構築を支援していく。
編集部メモ
サロゲートモデルは、計算負荷の大きいシミュレーションなどの結果を学習し、その振る舞いを近似して高速に予測するモデル。元のシミュレーションを毎回実行する必要がないため、多数の条件を比較する設計探索などで計算時間を大幅に短縮できる。
ICMDは、材料の成分・製造プロセス・組織・特性などを計算モデルで結び付けて材料開発や製造条件の最適化を効率化するICME(Integrated Computational Materials Engineering)という考え方に基づく米QuesTekのクラウド型SaaS。CTCとQuesTekの合弁会社であるQuesTek Japanが日本国内向けリセラーとして販売を行っている。
今回の取り組みは、材料候補の探索や製造条件の検討を行うICMDに製造・加工工程を高速に予測するサロゲートモデルを組み合わせることで、より多くの条件を短時間で比較・検証できるようにした点がポイント。材料設計から製造条件の検証までを一体的に効率化し、試作回数や開発期間の削減につなげている。
