このものづくりニュースのまとめ
・オムロンが制御盤レス化ソリューションを6カテゴリ・累計178製品の製品群として展開
・電源、安全、I/Oなどを設備近傍へ配置し、設備構造と配線をシンプル化
・社内モデルでは設計工数を30~50%、接続工数を66%削減できる効果を確認
オムロンは9月28日、工場設備や生産ラインで使用する制御盤の構造の見直しを推進する「制御盤レス化ソリューション(盤レス化ソリューション)」に関するメディア向け説明会を開催した。
同社は、これまで個別に展開してきた耐環境型の電源、安全、I/O、接続機器などについて、共通仕様に基づいて組み合わせる製品群と位置付け、10月1日から一体的な販売活動を開始する。
対象となる製品は累計で6カテゴリ・178製品。このうち2026年度に投入する製品は、電源、安全、電源・安全、接続の4カテゴリ・168製品となる。
制御盤をなくすのではなく機能を最適配置する考え方
オムロンが提案する制御盤レス化は、工場から制御盤を完全になくすことを意味するものではない。
PLCなどの制御中枢は制御盤内に残しながら、電源、安全、I/Oといった機能を耐環境型の機器として盤外へ出し、設備の近くに最適配置する。従来の「制御盤から中継ボックス、設備」という多段構造を見直し、ネットワークとコネクタを使ったシンプルな接続へ切り替える考え方となる。
自動車の溶接ラインなどの大規模設備には、数百台から数千台の制御盤や中継ボックスが設置される場合がある。制御盤、中継ボックス、設備間の配線が複雑になるほど、部品や設備構成を変更する際の電気設計、配線確認、立ち上げ、異常箇所の特定に要する作業も増加する。
製品構成や生産量、生産方式が変化する中、設備についても、一度構築した状態で固定するのではなく、ラインの追加、変更、移設や国内外への展開に対応できる柔軟性が求められるようになっているが、生産規模が大きくなればなるほど、その切り替え作業が膨大になる一方、人手不足も進んでおり、こうした少ない人数でダウンタイムを減らすことが求められることとなる。
制御盤内の機能を単純に外へ移すのではなく、盤外での利用を前提に機能を集約し、接続や設定、状態監視の仕様をそろえることで、設備のライフサイクル全体を簡素化することを提唱したのが同社の盤レス化ソリューションといえる。
機能集約や接続方法を共通化
盤レス化ソリューションの製品群は、「機能集約」「接続性」「UI設定」「状態・交換」という4つの視点に基づく共通仕様で開発されている。
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オムロンの制御盤レス化ソリューションを構成する共通仕様。複数機能の集約、オープンネットワークとM12スマートクリックによる接続、設定時の操作性、機器・配線状態の可視化を組み合わせ、設備の設計、立ち上げ、保全を簡素化する (提供:オムロン)
機能集約では、従来は複数の機器で構成していた機能を1台へまとめる。例えば、耐環境型IP67パワーサプライ「S8NR-Sシリーズ」は、電源に電子式サーキットプロテクタや監視機能などを集約。CIP Safety対応のセーフティI/Oターミナル「NXR-SXDシリーズ」は、安全I/Oと簡易ロジック機能を一体化した製品となっている。また、DC遮断BOX「S8R-BB」は、防水筐体にセーフティリレーなどを内蔵し、制御盤外で安全回路を構築できるようにした製品となっている。
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制御盤レス化ソリューションを構成する6カテゴリの製品群。耐環境型の電源、安全、電源・安全、I/O、接続機器を共通仕様で組み合わせ、必要な機能を設備側で完結できる構成を目指す。オムロンは累計178製品を製品群として展開する (提供:オムロン)
接続にはオムロン独自の「M12スマートクリックコネクタ」を採用する。ねじによる締め付けやトルク管理を必要とせず、コネクタ同士を接続することで配線作業を簡素化。一般的なねじ締め式M12コネクタとの接続にも対応することで、互換性を確保している。
機器本体の設定や交換方法もそろえるほか、機器とケーブルの状態情報を取得できるようにもしたことで、異常発生時に現場で配線を1本ずつ計測して調べるのではなく、状態情報から異常箇所や交換時期を判断し、保全作業と設備の停止時間を減らすことを狙うとする。
盤内機器100点を70点へ削減
オムロンがオートメーションと計測の先端総合技術展である「Innovative Industry Fair for E x E Solutions(IIFES) 2025」への展示に向けて構築した社内モデルでは、盤内に置いていた電源、安全、I/O機能を盤外へ移すことで、盤内スペースを30%削減できたという。
盤内機器100点で構成していたモデルでは、30点分の機器を盤外の3機器へ集約し、盤内機器を70点まで削減したとする。
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機能集約と盤外設置による機器点数削減のイメージ。社内モデルでは、盤内機器100点のうち30点分の機能を盤外の3機器へ集約し、盤内機器を70点まで削減した。盤内だけでなく、機器間の配線や盤外設計の負荷軽減も狙う (提供:オムロン)
また、盤外の接続もネットワークケーブルなどへ集約することで、中継ボックスや多数の個別配線を削減できる。オムロンの社内モデルでは、制御盤や中継ボックスの設計工数を30~50%、接続工数を66%削減する効果を確認したとしている。
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制御盤レス化ソリューションによる工数削減の効果例。IIFES 2025の展示デモ製作時に実際の設計情報も参考にして算出した社内モデルでは、制御盤や中継ボックスの設計工数を30~50%、接続工数を66%削減した。実際の効果は設備構成や条件によって異なる (提供:オムロン)
ただし、削減率はIIFES向け展示デモの製作時に、実際の設計情報も参考にして算出した一例であり、設備の構成や条件によって異なることに注意が必要である。
加えて、盤外対応機器は、制御盤内で使用する一般的な機器と比べて、耐環境性や筐体、コネクタなどが必要となるため、単品価格が上昇する場合もあることから、オムロンでは、機器単体の価格ではなく、制御盤、中継ボックス、配線の設計、設備の立ち上げ、変更・増設、保全までを含めた総保有コストで効果を評価してもらう形で顧客提案を行っていくとしている。
CIP Safety対応で安全回路も設備側へ
今回の製品群における重要な製品の1つが、CIP Safety対応の簡易ロジック機能付きセーフティI/Oターミナル「NXR-SXDシリーズ」となる。IP65/IP67に対応し、安全入力5点、テスト出力12点、安全出力5点を備えるほか、簡易ロジック、Webサーバ、固定アプリケーションなどの機能を搭載する。
安全I/Oと簡易的な安全ロジックを設備近傍へ配置することで、安全信号を制御盤まで個別配線する必要を減らすほか、分散制御と上位システムによる集中管理を両立させ、安全回路の設計、立ち上げ、保全の簡素化を実現する。
このほか、90W、360W、600WをそろえるIP67パワーサプライのS8NR-Sシリーズ、DC遮断BOXのS8R-BB、EtherNet/IP対応IO-LinkマスタとI/OハブのNXRシリーズ、IO-Link ADコンバータ「K3CVシリーズ」、丸形防水コネクタ・ケーブル「XS5シリーズ」などを組み合わせてソリューションとして展開される。他社製機器との組み合わせも可能としているが、オムロン製品群を組み合わせることで、接続や設定、保全を含む共通仕様の効果を引き出しやすくなるという。
柔軟性、導入スピード、保全性を向上
オムロンは、盤レス化によって提供する価値を「柔軟性」「導入スピード」「保全性」の3つに整理している。
柔軟性では、機能単位で盤外機器を配置し、ネットワークへ接続することで、設備レイアウトや機能の変更、別の生産ラインや拠点への展開をしやすくする。
導入スピードでは、複数機能を集約して制御盤や中継ボックスの設計対象を減らすとともに、M12スマートクリックコネクタを用いて配線、確認、調整作業を簡素化する。
保全性では、機器や配線の状態を可視化し、異常箇所の特定と交換判断を支援する。特定の熟練者だけに依存せず、設備を早期に復旧できる保全体制につなげる。
盤外化によって電気設計者の役割そのものがなくなるわけではないが、制御盤内と盤外のインタフェースや中継ボックスを個別に設計する作業が減り、電気設計者の負担軽減につながると同社では説明している。
自動車製造から搬送設備、製造業全般へ
なお、オムロンでは、設備変更や展開時の負荷が大きい自動車製造を盤レス化ソリューションの主要な対象と位置付けており、中でも、多数の設備や制御盤、中継ボックスを使用する溶接工程との親和性が高いとみている。
一方、盤外への分散配置に適した物流・搬送設備をはじめ、レイアウト変更やライン展開、仕様変更が多い製造現場にも適用できるともしている。
現時点ではPLCなどの制御中枢を盤内へ残す構成を基本とするが、今後の市場ニーズによっては、耐環境型PLCなどの開発も検討対象となるとするなど、今後も盤外対応の機能と製品群を拡充していくことで適用可能な工程や生産ラインを増やしていき。自動車製造を起点に製造業全般へと展開を進め、生産品目、生産量、生産方式、製造拠点などの変化へ対応しやすい設備構造の普及を目指すとする。
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制御盤レス化ソリューションの今後の展開。電源、安全、I/O、接続・変換などの盤外対応製品を共通仕様で拡充し、対応する工程やラインを増やす。自動車製造を起点に製造業全般へ展開し、変化に対応しやすい生産設備の実現を目指す (提供:オムロン)
制御盤をなくすこと自体を目的とするのではなく、必要な機能を設備の近くへ最適配置し、共通仕様によって設備構造と設計、立ち上げ、保全をシンプルにすることを目指すオムロンの制御盤レス化ソリューション。同社は、生産の変化に対応できる工場設備を実現するための新たな選択肢として幅広いものづくり産業に向けて訴求していきたいとしている。


