この半導体ニュースのまとめ

・JX金属の韓国子会社が半導体用スパッタリングターゲットの加工能力増強に約40億円を投資
・2027年度下期から段階的に稼働を開始し、韓国拠点の加工能力を2025年度比で約2倍に拡大
・AIデータセンター需要を背景にHBMや3D NAND向け材料需要が拡大、韓国での安定供給体制を強化

JX金属が韓国子会社に約40億円を投資

JX金属は7月23日、韓国子会社である韓国JX金属において、半導体用スパッタリングターゲットの加工能力を増強することを目的とした約40億円の設備投資を実施することを決定したと発表した。

  • 韓国JX金属

    韓国JX金属 (出所:JX金属)

韓国JX金属は、韓国・京畿道平澤市に所在し、半導体用スパッタリングターゲットの下工程、すなわち加工工程を担う拠点。営業・技術サポート部門も併設しており、韓国の半導体産業集積地に近い場所から、顧客に対する機動的な提案と安定供給を行ってきた。

JX金属グループの半導体用スパッタリングターゲットは、最先端ロジックやHBM、3D NANDなどの先端半導体メモリをはじめ、各種半導体デバイスの製造工程で使用されており、同社によると業界トップシェアを有しているという。

2027年度下期から段階的に稼働、加工能力は約2倍へ増強

今回の投資では、JX金属グループが日本国内外の各拠点で実績を積み重ねてきた自動加工機を導入するほか、付随する設備を一体的に整備し、2027年度下期から段階的に稼働を開始する予定としている。

これにより、韓国JX金属の半導体用スパッタリングターゲット加工能力は、2025年度比で約2倍に拡大する見通しだという。

スパッタリングターゲットは、半導体製造工程における成膜プロセスで用いられる材料であり、ターゲット材料にプラズマを照射して原子を飛ばし、ウェハ上に薄膜を形成するために用いられる。配線材料、バリアメタル、電極材料など、半導体デバイスの構造を支える薄膜形成に不可欠な材料であり、先端プロセスや先端メモリの進化に伴って、純度、組成、加工精度、供給安定性への要求が高まっている。

HBMや3D NAND需要拡大に対応

今回、韓国拠点の加工能力を増強する背景には、AIデータセンター市場の拡大に伴う先端メモリ需要の増加がある。

韓国には、Samsung Electronics(サムスン)ならびにSK hynixの2大メモリメーカーが拠点を構えており、HBM、DRAM、3D NANDなどの開発・量産体制が形成されている。特にAIサーバ向けでは、GPUやAIアクセラレータと組み合わせるHBM需要が急拡大しており、これに伴って、メモリ製造工程で使用される各種材料の需要も拡大している。

JX金属は、韓国JX金属が担う役割は今後さらに重要になると説明しており、今回の加工能力増強を通じて、需要拡大に確実に対応し、顧客への安定供給体制を強化する考えだ。

台湾、米国、日本でも供給力強化を推進

JX金属グループでは、半導体用スパッタリングターゲットの供給力強化をグローバルで進めている。

同社は2026年6月、台湾拠点における同製品の加工ラインに対する自動化に向けた投資を発表している。台湾はTSMCを中心に先端ロジックや先端パッケージングの集積が進む地域であり、台湾拠点の自動化は、同地域の顧客需要に対する供給力と対応力を高める取り組みとなる。

また、米国アリゾナ州の拠点についても、需要動向に応じて半導体用スパッタリングターゲットの加工能力を拡大する方針を掲げている。米国では、TSMC、Intel、Samsung、Micronなどによる半導体投資が進んでおり、材料サプライヤにも現地対応力が求められている。

日本国内では、茨城県ひたちなか市のひたちなか薄膜材料工場で、生産設備の増強を進めている。今回の韓国投資は、台湾、米国、日本と並ぶ形で、主要半導体製造地域に近接した供給体制を整備する動きの一環といえる。

原料調達からリサイクルまで一貫した供給網を強化

JX金属は、原料調達からリサイクルまでの一貫したサプライチェーンの強靭化を進める方針を示している。

半導体材料では、単に製品を供給するだけでなく、高純度原料の安定調達、加工精度、品質保証、顧客近接での技術サポート、使用済み材料の回収・リサイクルまでを含めた総合的な供給体制が重要となっている。特にスパッタリングターゲットは、先端半導体製造の品質や歩留まりに影響する重要材料であり、材料メーカーには長期安定供給と迅速な技術対応が求められる。

AI需要の拡大により、半導体市場では先端ロジック、HBM、3D NAND、先端パッケージング向けの投資が世界各地で進んでいる。JX金属としては、韓国JX金属の増強を含め、世界各地の半導体産業集積地における需要増加を的確に捉え、顧客からの信頼に応える供給力の強化を進める考えだ。

2040年長期ビジョンのもと先端材料を強化

JX金属グループは、「2040年JX金属グループ長期ビジョン」のもと、半導体をはじめとする先端技術の進化を支える先端材料の安定供給を重視している。

半導体産業では、AI、データセンター、自動車、産業機器、通信などの需要拡大を背景に、デバイス性能を支える材料の重要性が高まっている。微細化、3D化、チップレット化、先端パッケージングの進展により、成膜材料や配線材料、ターゲット材に求められる品質も一段と高度化している。

今回の韓国JX金属への投資は、そうした半導体材料需要の高度化と地域分散に対応する取り組みとなる。韓国におけるHBMや3D NANDを中心とした先端メモリ需要の拡大を取り込みながら、JX金属はグローバルな半導体材料供給網の強化を進めることになる。