BetaNewsは8月3日(現地時間)、「AI is eliminating thousands of customer service jobs」において、生成AIの普及を受け、IT企業、銀行、観光業、配車サービスなどを中心にカスタマーサービス職の人員削減が進んでいると報じた。
Microsoft、Uber、オーストラリアのCommonwealth銀行では、生成AIの導入を理由とする人員削減が実際に確認されたという。
Microsoftで進むAI活用と人員削減
コールセンターは以前から自動化の対象と見なされてきたものの、旧式チャットボットや音声自動応答では顧客満足度が低く、導入拡大の障害となっていた。ところが生成AIが自然な対話を行い、定型的な問い合わせを処理し、複雑な案件のみ担当者へ引き継ぐ運用が可能となったことで状況は一変した。
Microsoftはカスタマーサービス向けAI製品を提供する企業であると同時に、自社でも積極的に活用している。関係者によれば、同社のカスタマーサービス部門は契約社員と従業員を合わせ約5万人が働いていたが、AI導入によって約4万人に縮小したという。つまり、約1万人減少したことになる。
この変化は支出の改善にも寄与したことが報告された。同社の営業およびサービス部門を統括するJudson Althoff氏は4月、顧客対応費を年間約7億5千万ドル削減できたと説明。夜間にXboxユーザーから問い合わせがあった場合でもAIが解決できる事例を示し、自動対応できる範囲が拡大し続けていると述べたとされる。
他業種でも同様の動きだが、例外も観測
BetaNewsによると、Uberはカスタマーサービス部門の約1割を削減。Commonwealth銀行でもチャット対応へAIを組み込んだ後、数百人規模で減少したことが伝えられた。同行の関係者によれば、年間で数千万ドル規模の費用削減効果が生まれているという。
Hyattホテルは2025年6月、米国向けの社内ゲストサービスおよびサポート部門で約3割の人員を削減した。同社は、この人員削減についてはニーズの変化によるものであり、AI導入とは関係ないと説明している。
一方で、顧客対応では生成AIの活用を進めており、AIおよびデータ分析部門を統括するPat Nestor氏は、予約変更や領収書発行などの単純な依頼を自動処理へ切り替えたことで、顧客対応にかかる支出を削減できたと説明したという。
多くの企業がAIを採用して人員整理を進めているが、この流れは経営陣の考え方次第で変わる事例も報告された。Brinks HomeではAI導入後、通話案件が約3分の1に減少し、コールセンターの人員も約800人から約400人規模へ縮小した。一方で、多くの従業員は他部門へ配置転換し、残りも自然減で対応することで解雇を回避したという。
コールセンター受託企業にも逆風
AI普及は一次対応を請け負うコールセンター受託企業にも暗い影を落としている。アウトソーシング事業を展開するConcentrixは、最新の年次報告書で、従来は自社従業員が担当していた難度の低い業務が、顧客企業の導入したツールへ置き換えられていると説明。技術戦略の転換が遅れれば、売り上げや利益率に悪影響が及ぶとの認識を示している。
リサーチ企業のForresterは、2026年5月20日の報告書で、2030年までに現在のカスタマーサービス職の約49%が消失すると予測。すでにAnthropicでは問い合わせの96%、ロンドン・ヒースロー空港では90%をAIが処理しており、他企業でも同様の活用が進んでいるという。
米国のカスタマーサービス職は減少傾向にあり、自動化の拡大とともに縮小が続く公算が大きい。世界全体への影響では、西側企業の業務を受託してきたフィリピンなどが大きな影響を受けると指摘されている。
最後に、BetaNewsは複数のIT企業の営業担当者が匿名を条件に、コールセンター向けAIを人件費の削減手段として顧客へ提案する例が多いと証言したことを公表した。AI導入が「生産性向上」を目的とすると説明される一方、現場では人件費削減を前提とした提案も広がっている実態が浮かび上がった。
