このものづくりニュースのまとめ
・ニコンがロボットビジョンシステムのソフトウェアに3D追従機能を追加
・搬送中のワークを3次元計測し、位置だけでなく傾きや表裏まで検知
・エンコーダなどの追加設備を使わず、ピッキングや挿入、締結を自動化
ニコンは9月30日、ロボットアーム向け「ロボットビジョンシステム」のソフトウェアを更新し、新機能「3Dビジョントラッキング」を追加することを発表した。
3Dセンサーを用いて、コンベアや無人搬送車(AGV)、自律走行搬送ロボット(AMR)などで搬送されるワークを3次元計測し、平面内の位置や移動速度に加えて、傾きなどの姿勢や表裏を検知する。
ワークの向きに応じてロボットアームを最適な位置や角度へ移動させることで、ランダムな姿勢で流れる部品のピッキングや、搬送中のワークへの部品の挿入、ボルト締結などを可能にする。
新機能は2026年10月から、ロボットビジョンシステムのソフトウェアとして提供する。すでに同システムを導入している顧客も、有償のソフトウェアアップデートによって利用できるとしている。
センサーを目、エンジンを頭脳としてロボットを制御
ニコンは2024年10月から、センサーとエンジンで構成するロボットビジョンシステムを提供してきた。センサーはロボットの目としてワークや周辺環境を認識し、エンジンは頭脳として取得した視覚情報をリアルタイムに処理する役割を担い、処理結果をロボットへ送り、ワークの位置や状態に応じてロボットアームの動作を制御する仕組みとなっている。
-

ニコンのロボットビジョンシステムの基本構成。センサーがロボットの目としてワークや周辺環境の不規則な変化を捉え、エンジンが頭脳として視覚情報をリアルタイムに処理し、対象物の状態に応じた動作指示をロボットへ送る (出所:ニコン)
ニコンはカメラや映像関連事業で培った画像処理技術に加え、半導体やFPD向け露光装置などで蓄積してきた精密制御技術を組み合わせ、見えにくい対象物や不規則に変化するワークを捉え、ロボットの動きへつなげるとしている。
2次元の位置追従から姿勢・表裏の検知へ
従来のビジョントラッキングでは、2Dセンサーを用いて搬送中のワークの平面内における位置や速度の変化を検知し、ロボットアームを追従させていた。
今回追加する3Dビジョントラッキングでは、3Dセンサーによる3次元計測を用いることで、ワークの高さや傾き、表裏を含む姿勢まで検知できるようにした。
このため、搬送中にワークの向きが変化した場合でも、検知した姿勢に合わせてロボットアームの位置や角度を補正し、ピッキングや組み付けなどの作業を継続できるという。
-

3Dビジョントラッキングによるロボットアームの追従動作イメージ。コンベア上をランダムな位置や姿勢で流れるワークを3次元計測し、ワークの移動に合わせてロボットアームの位置と角度を補正しながらピッキングする (出所:ニコン)
また、1つのワークに対して複数の作業位置を登録できるため、ワークの向きに応じて把持位置や挿入位置、締結位置を切り替えるといった作業にも対応する。
エンコーダなどの追加設備が不要
一般的なトラッキングシステムでは、コンベアの移動量や速度を把握するため、回転量を検出するエンコーダなどの追加設備を設置し、搬送設備とロボットを同期させる場合がある。
ニコンのロボットビジョンシステムは、センサーで取得した映像を高速処理し、ワークの位置や動きを直接把握する。このため、エンコーダとの同期作業を必要とせず、既存の搬送設備へ導入しやすい点を特徴とするほか、搬送速度やワークの位置、姿勢が不規則に変化した場合にも、センサーで状況を捉えてロボットの動作を補正する。
生産品種や数量が変化する多品種・変量生産では、ワークの種類や配置を一定にそろえるための専用治具や部品供給装置が、製品切り替え時の制約になる場合がある。
3Dビジョントラッキングによってランダムな姿勢のワークへ対応できれば、ワークを一定方向に整列させる前工程や専用設備を減らし、生産品の変更へ柔軟に対応できる可能性がある。
ピッキングから挿入、締結工程まで対応
ニコンは、3Dビジョントラッキングの主な適用先として、ピッキング、挿入、締結の3工程を想定する。
ピッキング工程では、コンベア上をランダムな姿勢で流れる鋳物や部品などの位置と姿勢を検知し、ロボットアームを最適な角度へ移動させて把持する。
挿入工程では、自動車ボディへのグロメットの挿入やプラグホールシールの貼り付けなど、搬送中のワークの位置と姿勢に応じた作業へ活用する。
締結工程では、コンベアを停止させず、移動するワークを追従しながらボルトを締結するといった作業を想定している。
従来は搬送中のワークの位置や姿勢がランダムな場合、ロボットによる自動化が難しく、人手による作業が残る場合があった。3次元計測と高速画像処理を組み合わせることで、こうした工程へロボットを適用し、ライン停止時間の削減と生産性向上を図る。
2D専用モデルと使い分け
ニコンのロボットビジョンシステムは、3Dセンサーを用いたばら積みピッキングや3Dビジョントラッキングに加え、2Dビジョントラッキングに特化した軽量・小型モデルも展開している。
平面内の位置や速度だけを検知すればよい工程では2D専用モデルを使用し、ワークの傾きや表裏まで判断する必要がある工程では3D対応システムを使用することで、用途と必要な機能に応じた構成を選択できる。
今回、既存のロボットビジョンシステムへ3Dビジョントラッキングを追加することで、ランダムな姿勢のワークや搬送中に振動するワークを扱う工程まで適用範囲を広げ、多品種・変量生産への対応と製造現場の自動化・省人化を進めていくとしている。