早稲田大学(早大)と同志社大学の両者は7月16日、近年、筋力トレーニングでも筋肉が柔らかくなる可能性が示されていたことから、反動をつけずに筋肉を伸ばす従来の「静的ストレッチング」と、筋肉を大きくかつ長時間伸ばしながら力を発揮する筋力トレーニング(以下、「筋トレッチング」)の両方について、筋肉の硬さなどに及ぼす影響を比較した結果、どちらの方法でもハムストリングスの一部の筋肉の硬さが同じ程度に低下し、筋トレッチングでは静的ストレッチングよりも筋力や筋肉のサイズが大きく増加したことを確認したと共同で発表した。
同成果は、同志社大 研究開発推進機構の川間羅聖特別任用助教(現・早大 スポーツ科学学術院 講師)、西九州大学 リハビリテーション学部の中村雅俊教授、同志社大 スポーツ健康科学部の若原卓教授らの共同研究チームによるもの。詳細は、米国生理学会が刊行する、運動や環境適応などの応用生理学を扱う論文誌「Journal of Applied Physiology」に掲載された。
筋肉を柔らかく・強く・大きくする“一石三鳥”の筋トレとは?
スポーツやリハビリテーションの現場では、筋肉を柔らかくするための代表的な方法として主に静的ストレッチングが利用されている。一方、研究チームはこれまでの研究で、筋肉を大きくかつ長時間伸ばしながら力を発揮する筋トレッチングによって、大腿部裏側の筋肉群であるハムストリングスの一部の筋肉が慢性的に柔らかくなることを示していた。
しかし、この筋トレッチングの効果が、静的ストレッチングと比較して、どの程度筋肉を柔らかくするのかについては確認できていなかったとする。そこで今回の研究では、両運動を同一の実施時間と期間で行い、ハムストリングスを構成する各筋の硬さ、関節可動域、筋力、並びに筋の大きさに与える長期的影響を検証したという。
実験は、11名の健康な若年男性を対象に、10週間にわたり週3回の運動を実施する形で行われた。具体的には、対象者の一方の脚には、筋肉を大きくかつ1回あたり長時間伸ばす筋トレッチングを行わせ、もう一方の脚には、膝を伸ばした状態での静的ストレッチングを行わせる方法が採用された。なお、両手法において、1回あたりの実施時間が同一になるように設定された。
そして、介入期間の前後において、超音波せん断波エラストグラフィによるハムストリングス各筋の硬さ(剛性率)の測定をはじめ、MRIによる筋のサイズ(筋体積)、筋力計による膝関節屈曲の最大筋力(関節トルク)および関節の柔軟性(関節可動域)の評価が実施された。
その結果、筋トレッチングと静的ストレッチングのいずれにおいても、ハムストリングスを構成する「大腿二頭筋長頭」および「半膜様筋」の硬さが慢性的に低下することが確認された。一方、「半腱様筋」の硬さには有意な変化が認められなかったとした。
また、関節の柔軟性は両条件で同程度に向上したことが判明。さらに、筋トレッチングを行った脚では最大筋力が増加し、大腿二頭筋長頭、半腱様筋、半膜様筋のすべての筋サイズも大きく増加したことが確認された。これに対し、静的ストレッチングでは、一部の筋サイズには変化が見られたものの、最大筋力の増加は認められなかったとする。
研究チームによると、今回の研究は、筋トレッチングでも静的ストレッチングと同等に筋肉に柔軟性を持たせられることを明らかにした初の介入研究だという。この結果は、筋肉を大きくかつ1回あたり長時間伸ばす筋トレッチングを長期間実施することで、静的ストレッチングよりも大きく筋サイズや筋力を増加させながら、特定の筋肉における硬さを同等に減少させることができることが示されているとした。
これまで、スポーツやリハビリテーションなどの現場では、筋肉を柔らかくするためにはストレッチを、筋力や筋サイズを高めるためには筋力トレーニングを行うといった目的別の運動が一般的だった。しかし今回の成果は、適切な筋トレッチングがそれらを同時に達成できる、時間効率の高い新たな運動方法と成り得ることを明らかにした。これにより、「筋肉を柔らかくするにはストレッチ」という従来の常識を覆し、筋トレッチングに新たな価値を提供するものとしている。
