この半導体ニュースのまとめ
・三菱電機とソニーセミコンダクタソリューションズがAIビジョンセンサ合弁会社の設立で合意
・三菱電機のFA制御ノウハウとソニーのイメージセンサ/エッジAI技術を融合
・製造現場の認識・判断・制御を高度化し、省人化、無人化、品質向上、保守高度化に貢献
製造業向けAIビジョンセンサ合弁会社を設立へ
三菱電機とソニーセミコンダクタソリューションズは7月22日、製造業における製造設備や人手作業の自動化および高度化を加速するため、合弁会社の設立を含む戦略的協業契約を締結したと発表した。
新会社名は「Advanced Vision Solutions株式会社(アドバンスト ビジョン ソリューションズ)」で、関係当局の許認可取得などを条件として、2026年10月からの事業開始を予定する。事業内容は、ファクトリーオートメーション(FA)向けのAI搭載ビジョンセンサおよびビジョンセンサソリューションの開発。所在地は神奈川県横浜市西区みなとみらい三丁目3番3号で、株式保有比率は三菱電機が60%、ソニーセミコンダクタソリューションズが40%となる。
三菱電機のFA技術とソニーのイメージセンサ/エッジAIを融合
今回の提携は、三菱電機が長年培ってきたFA制御ノウハウと、ソニーセミコンダクタソリューションズが持つ業界最先端のCMOSイメージセンサおよびエッジAI技術を融合することを目的としている。
両社は、新会社を通じて、イメージセンサ上で映像情報をAI解析する技術を活用したビジョンセンサソリューションを開発・展開する。これにより、これまで可視化が難しかった製造現場の状態や変化を的確に捉え、判断・制御へとつなげることで、幅広い製造設備の自動化と自律化を支援する。
ビジョンセンサは、製造ラインの製品や部品などをカメラで撮像し、対象物の状態や位置情報をリアルタイムにセンシングする高精度センサであり、FA機器と連携することで、製造現場の自動化を実現する役割を担う。
現場状態や品質、稼働状況を人手に頼らず認識
製造現場では、人手不足や熟練者不足への対応に加え、品質向上、設備稼働率の改善、保守・メンテナンスの高度化が求められている。一方で、現場の状態、製品の品質、設備の稼働状況、保守情報などは、従来は人手や個別センサーに頼って把握されることが多く、十分に活用しきれないデータも多かった。
新会社が開発するAIビジョンセンサーソリューションでは、映像データから必要な情報を効率的に抽出し、適切な判断を行い、制御へとつなげることを目指す。これにより、設備や作業の状態に応じたタイムリーかつ自律的な改善を可能にするという。
また、ビジョンデータに加え、製造現場のさまざまなデータと連携することで、単一データでは捉えきれない変化や予兆を把握するマルチモーダルな生産システムの構築にも貢献する。
FA領域でフィジカルAIの社会実装を後押し
両社は、今回の取り組みにより、FA領域におけるフィジカルAIの社会実装を後押しするとしている。
フィジカルAIは、カメラやセンサから得た現実世界の情報をAIで認識・判断し、ロボットや製造設備、制御システムなどを動かす技術であり、製造現場における、現場を見る技術、そこから状況を理解するAI、制御へ結び付けるFA技術の統合が重要になる。三菱電機では、製造現場においては省人化・無人化や自律最適化がこれまで以上に求められているとの認識を示しており、今回の業務提携を通じて、AIビジョンセンサを開発し、ビジョンデータと同社のデジタル基盤「Serendie」を融合させたFAデジタルソリューション事業を創出していくとしている。
ソニーの「眼」となるセンサーで現場の認識力を拡張
一方のソニーセミコンダクタソリューションズとしては、イメージセンサを核としたエッジAIセンシング技術により、実世界の情報を的確に捉え、多様な産業に新たな価値を提供してきた経験を踏まえ、ビジョンデータを生み出す「眼」となるイメージセンサが、AIが現場を理解し、判断・制御につなげるうえで重要な役割を担う存在であると説明しており、FA領域で深い知見と顧客基盤を持つ三菱電機との提携により、ソニーのセンシング技術を活用したソリューションを市場に展開し、より幅広い産業領域での価値創出につなげる考えを示している。
また、今回の協業は、ソニーセミコンダクタソリューションズにとって、自社のセンシング技術の進化をさらに加速する取り組みにもなるともしている。
光学やAIの専門知識なしに使えるソリューションへ
新会社が目指すのは、生産現場の省人化、無人化、品質向上、保守・メンテナンスの高度化を図る多様な産業に向けて、光学やAIの専門知識がなくても活用できるソリューションである。
製造現場では、AIや画像認識技術への期待が高まる一方で、実際の導入にはカメラ設定、照明、画像処理、AIモデル構築、FA機器との連携など、複数の専門知識が必要になりがちである。三菱電機とソニーセミコンダクタソリューションズは、これらを統合したソリューションとして提供することで、より多くの製造現場でAIビジョン技術を活用しやすくする狙いだ。
AIの活用がデータセンターから製造現場へ広がる中、現実世界を正確に認識し、判断し、制御する仕組みは、スマートファクトリー実現の中核技術となる。今回の合弁会社設立は、イメージセンサとFA制御を組み合わせ、製造業におけるフィジカルAIの導入を加速する取り組みといえそうだ。