貼るカイロや医療用パッドなど布や衣服に貼り付ける製品は、皮膚や他の物質とくっつかないよう粘着面が「剥離紙(離型紙)」で保護されていて、使用時に剥がす必要がある。素材メーカーの東レは、剥離紙がなくても皮膚や他の物質にくっつかず、布にだけピタッと貼り付く粘着フィルムを開発した。生地を傷めないため日用品や医療、アパレルなど幅広い用途が期待できるほか、剥離紙の廃棄がなくなってごみの削減にもつながるという。

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    粘着面を覆う「剥離紙」が不要の粘着フィルム。布にだけピタっと貼りつく(右の写真は東レ提供)

東レ環境・モビリティ開発センター(大津市)の開発担当・新崎盛昭さんは、5年ほど前に顧客から「離型紙はただ捨てるだけでもったいない」と言われた。調べてみると、ごみとして処分される量が多く、「離型紙を使わなくてもハンドリングできるような粘着フィルムができないか」と考えるようになった。

どのような素材を選ぶか同僚らと話し合ったが、なかなかいいアイデアが浮かばなかった。そんなある日、新崎さんが自宅で唐揚げを作っていると、小麦粉が少なすぎるとべたつき、多すぎるとサラサラとした手触りになることに気がついた。

「表面の小麦粉の面積を変えていけばいいのでは」と思い、工場で粘着フィルムに小麦粉に似た粉をまぶしてみた。だが、フィルムの製造ラインが粉で汚染されてしまう上、納品先で粉の物性が変わる恐れもある。「粉がまぶされていないけれど、埋もれてはいない」という状態にできないか実験を重ねた。その結果、粉がまぶされたのと同じように粘着面に凸状の構造を付ければいいのではないか、というアイデアにたどり着いた。

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    開発した粘着フィルムの拡大画像。粘着面にマイクロサイズの凸構造を付けた(東レ提供の画像を元に編集部改変)

10~20マイクロメートル(マイクロは100万分の1)の凸構造を粘着面に付けたところ、皮膚や金属、プラスチックなどの平らな面にはくっつかず、波状の繊維にはピタッとくっつく粘着フィルムができた。これを使って汗わきパッドや名前シールを試作したところ、衣服にはきちんと貼り付く一方で、他の平らなものにはくっつかなかった。

試作した粘着フィルムは厚さ6マイクロメートルで、これより薄くも厚くもできる。貼って剥がしても繊維を傷めないことを確認し、「デリケートな素材にも使える」としている。フィルムはポリエステル製で貼った際に布が固くならず、緩やかさに応じたドレープ性を損なわないことも利点だという。東レは、冷却シートやパッド型おむつ、母乳パッドなどの日用品のほか、医療やアパレルの分野に展開できるとみている。

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    平らな面では、凸構造によって粘着面が浮いてくっつかない。衣類などの場合、繊維が凸構造の隙間に入って粘着面が貼り付く(東レ提供)

貼るカイロなどの使用時に剥がされた剥離紙は廃棄されている。東レの試算では、貼るカイロに剥離紙レスの新たな粘着フィルムを使った場合、年間247トンのごみ削減が見込まれる。また、発熱体を除いたカイロの重さを60%減らせるほか、厚さも38%削ることができ、「製品のコンパクト化と環境負荷低減を同時に実現できる」という。

東レでは環境に配慮した繊維や素材作りに取り組んでおり、その一環として今回の粘着フィルムを作った。「今後もサステナビリティに貢献できるような製品を作っていきたい」としている。成果は同社が4月21日に発表した。

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