2024年にわが国初の月面着陸を果たした実証機「スリム」に搭載した小型ロボット「レブ2」について、自律して移動や撮影をした成果の詳しい解析がまとまった。開発した宇宙航空研究開発機構(JAXA)と玩具大手のタカラトミーなどが発表した。月面の移動を裏付ける新たな画像を公開。低コスト、短期間で開発できる手のひらサイズの機体が「新しい探査の可能性を示した」という。

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    小型ロボット「レブ2」の、実物の外観に近い模型。スリムの着陸時、会見場で展示されたもの=2024年1月、相模原市中央区のJAXA宇宙科学研究所

レブ2は直径8センチと野球ボールほどの球状で、質量228グラム。史上最小、最軽量の月面探査ロボットで、愛称は「ソラQ」。高度約5メートルでスリムから分離し、月面で走行形態に変形した。砂に埋もれずに走行できるよう左右の車輪を別々に動かすなど、設計を工夫した。JAXAが科学技術振興機構(JST)から「イノベーションハブ構築支援事業」を受託し、小型ロボット技術、制御技術について共同で行う契約をタカラトミーと結ぶなどして実現した。

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    レブ2の外観図。左のような球状でスリムに搭載され、月面に達すると右のように展開して活動した。フロント(前方)カメラと背中合わせにリア(背面)カメラがある(JAXA、タカラトミー、ソニーグループ、同志社大学提供)

地上に送られたデータを詳しく調べた結果、レブ2は着陸後に自ら起動して展開し、姿勢を整え、移動しながら撮影したことが分かった。撮影画像から重要なものを選び2枚を送信するなど、一連の動作を全て、地上からの指示なく自律的に実施。画像の1枚目は前方カメラで撮影し、着陸の5日後に公開された。スリムから5.08メートル離れた場所で撮影しており、スリムや周囲の状況をはっきり捉えた。レブ2が画像処理でスリムを正しく認識していたことも分かった。

JAXAなどは、新たに2枚目の画像を公開した。前方カメラと背中合わせに取り付けた背面カメラで撮影したもの。通信が乱れてデータが欠損し、スリムは写っていないが、1枚目に写っているものと同じ岩石が写っていた。レブ2が1枚目と2枚目の間に13センチ移動し、180度旋回したことを裏付けた。レブ2は月面で少なくとも1時間48分動作し、その間に画像処理を240回行っていた。

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    左が新たに公開した2枚目の画像。右が公開済みの1枚目の視点を、左の画像に合わせ調整したもの。背中合わせのカメラが、赤枠内の同じ岩石を写したことなどから、レブ2が移動、旋回したことが分かる(JAXA、タカラトミー、ソニーグループ、同志社大学提供)

一連の結果から、変形機構や走行の工夫が有効に機能したことを確認。通信の乱れや姿勢の異常にも自律的に対応して探査し、成果を送信できることを実証した。宇宙用の小型ロボットの開発や運用ノウハウなど、今後に役立つ知見が得られたという。

スリムが搭載したロボットは2体。中央大学などが開発した「レブ1」は飛び跳ねて月面を移動し、地上との通信にも成功してレブ2の撮影データを送った。ただソフトウェア関連の問題が起き、レブ1自体による撮影はかなわなかった。レブ1と2により「わが国初の月面探査ロボット」「世界初の完全自律ロボットによる月面探査」「世界初の複数ロボットによる同時月面探査」「世界初の月面ロボット間通信」を達成したとされる。

成果は米ロボット工学誌「サイエンスロボティクス」に日本時間6月11日に掲載され、開発したJAXAとタカラトミー、ソニーグループ、同志社大学が同18日に発表した。

JAXAの山川宏理事長は「小さく、変形して運動する革新的なロボット技術を実現し、かつ自律的に運用されるものを実用的に使ったことが最大の成果。スリム本体を撮影することで、さまざまな工学的なミッション(任務)の全体の把握に、非常に大きく貢献した。JAXAがこれまで非宇宙企業だった玩具メーカーや大企業、大学と連携したことも、大きなマイルストーン(道標)となった」と話している。

スリムは2023年9月に地球を出発。翌24年1月、月の低緯度のクレーター付近の傾斜地に着陸し、わが国は5番目の月面着陸国となった。降下中に主エンジン2基のうち1基が異常停止した影響で、横倒しの姿勢で着陸。このため太陽電池の発電が制約を受けたが、設計上の性能を超えて発電ができない夜に3回耐え、科学観測などに成功した。着陸は当初目標から60メートルほどずれた地点となり、100メートル級の誤差を目指したピンポイント着陸に成功。岩などの障害物の自動回避や、エンジン異常停止の影響を除くと、誤差は実質10メートル以下だったとされる。同年8月に運用を終了した。

わが国初の月面着陸は、レブ2による撮影がなければ、一般社会に対し視覚的な説得力を持てなかった。学術的価値に加え、玩具のようなかわいいロボットが月面で健気に動き、大きな仕事を成し遂げたことも、人々の共感を呼んだ。

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    レブ2が地上に送信した1枚目の画像。スリムは姿勢が計画から外れて転倒し、太陽電池を上でなく西(右)に向けて静止した。中央部の横線はノイズ(JAXA、タカラトミー、ソニーグループ、同志社大学提供)

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