このサイエンスニュースのまとめ

  • 海洋研究開発機構(JAMSTEC)の地球深部探査船「ちきゅう」で2026年1〜2月に実施された、レアアース泥の採鉱試験の結果が発表
  • レアアース泥を分析した結果、ハイテク製品に欠かせない中重レアアースが含まれることが分かった
  • 採鉱システムの安定稼働を確認、水深5,569mの海底下から連続して泥を船上へ引き揚げることに成功
  • 採鉱に伴う海洋環境への影響調査試験の結果についても説明

日本の最東端・南鳥島の周辺海域に存在する、レアアースを高濃度に含む“泥”。海洋研究開発機構(JAMSTEC)の地球深部探査船「ちきゅう」によるレアアース泥の採鉱試験の結果、ハイテク製品に欠かせない中重レアアースが見つかったことが、7月24日に公表された。

  • 海洋研究開発機構(JAMSTEC)が公開した、最初の揚泥サンプリング(2026年2月1日未明「ちきゅう」船上にて撮影) (出所:JAMSTECニュースリリース)

    海洋研究開発機構(JAMSTEC)が公開した、最初の揚泥サンプリング(2026年2月1日未明「ちきゅう」船上にて撮影) (出所:JAMSTECニュースリリース)

内閣府「海洋安全保障プラットフォームの構築」(SIP海洋)やJAMSTECが、南鳥島の排他的経済水域(EEZ)の海底下で1月12日から2月14日にかけて実施したレアアース泥採鉱システム接続試験は、国産レアアースの産業化に向けた最初の取り組みであり、水深約6,000mの海底での同様の試験は世界でも初の試みとして注目を集めた。

既報の通りレアアース泥とは、レアアース(希土類)元素の含有量が特に高い堆積物のこと。南鳥島の排他的経済水域(EEZ)の海底下には、こうした堆積物が存在していることが、これまでの調査研究で分かっている。2月2日には最初のレアアース泥を引き揚げたことを報告していた

  • 地球深部探査船「ちきゅう」 (出所:JAMSTECニュースリリース)

    地球深部探査船「ちきゅう」 (出所:JAMSTECニュースリリース)

今回の試験は、ちきゅうを用いて南鳥島沖のEEZ海域における水深約6,000mの海底に向け、レアアース泥を採鉱する揚泥管や機器等を接続しながら降下させ、採鉱機を海底に貫入させる一連の作動を検証することなどを目的として実施した。

その結果、採鉱システムの安定稼働を確認し、水深5,569mの海底下から連続して泥を船上へ引き揚げることに成功。採鉱に伴う海洋環境への影響を調べるため、海底と船上での同時環境モニタリングシステムの運用試験も並行して行い、観測データの解析と試料の分析中ではあるが、船上におけるバイオアッセイに基づく分析結果からも、「今回の採鉱に伴って生じる鉱物由来の環境汚染リスクは低い」と判断している。

なお、前出の水深5,569mは水深を測る指標であるパイプ長のことを指しており、採鉱システムの揚泥管(ライザーパイプ)の長さから水深を決定している。

  • 採鉱システム概念図 (出所:JAMSTECニュースリリース)

    採鉱システム概念図 (出所:JAMSTECニュースリリース)

今回の試験で回収したレアアース泥は、海水中に固体の微粒子が均一に分散している流体混合物(スラリー)として、ちきゅうの貯留タンクに貯蔵した状態で持ち帰っており、その揚泥量は約50トン(解泥時に加えた海水を除去した重量)と算定している。

  • スラリー状のレアアース泥 (出所:JAMSTECニュースリリース)

    スラリー状のレアアース泥 (出所:JAMSTECニュースリリース)

レアアース泥の分析結果については、濃度には触れていないものの、レアアース総量の約54%がイットリウム、ガドリニウム、ジスプロシウムなどの中重レアアースだったと説明している。有害物質や放射性物質については、有意な数値は検出されなかったとのこと。

中重レアアースは原子量が比較的重いグループで、これらは電気自動車(EV)の駆動モーター用磁石をはじめ、最先端のハイテク製品に欠かせない、きわめて希少価値の高い金属とされる。

レアアース総量の内訳

  • 中重レアアース:53.9%
    • イットリウム:29.9%
    • ガドリニウム:4.9%
    • ジスプロシウム:4.6%
    • その他中重レアアース:14.5%
  • 軽レアアース:46.1%
    • ネオジム:18.4%
    • プラセオジム:4.1%
    • その他軽レアアース:23.6%
  • レアアース総量の内訳(%) (出所:JAMSTECニュースリリース)

    レアアース総量の内訳(%) (出所:JAMSTECニュースリリース)

環境モニタリングシステム運用試験では、海底に設置型無人探査機「江戸っ子1号COEDO」、環境DNA自動採取装置、ハイドロフォン(水中マイク)を設置し、採鉱システムの稼働に伴う懸濁物の発生状況などを連続観測。

さらに船上ラボでは、SIP海洋が開発して国際標準化機構(ISO)から発行された国際標準規格に則った手法で、表層海水と揚泥したスラリーを試料として生物群集のモニタリングを実施。遠隔操作無人探査機(ROV)や、前出のCOEDOに搭載したビデオカメラにより、海水中の魚類や海底の底生動物の生息状況も記録している。

  • ちきゅう内部に装備した採鉱機 (出所:JAMSTECニュースリリース)

    ちきゅう内部に装備した採鉱機 (出所:JAMSTECニュースリリース)

  • (左から)海底での採鉱機、採鉱機を引き抜いた後に生じた掘削孔、ROVで回収される観測後のCOEDO (出所:JAMSTECニュースリリース)

    (左から)海底での採鉱機、採鉱機を引き抜いた後に生じた掘削孔、ROVで回収される観測後のCOEDO (出所:JAMSTECニュースリリース)

こうした試験成果を踏まえ、SIP海洋は2027年2月から同じ海域で約1カ月間、本格的な採鉱試験を実施予定だ。

新たな採鉱試験は、これまでの技術開発と運用ノウハウをベースに行うもので、揚泥したレアアース泥のスラリーは南鳥島へ船舶輸送して陸揚げし、脱水処理を行った“マッドケーキ”の状態で本土へ輸送。分離・精製・製錬のプロセス試験を実施することにしている。

さらに、飛行機やヘリコプターでの人員輸送を含む、産業的規模を見据えた本格的なオペレーションを行うことで、産業的規模でのレアアース生産プロセスを検証する。

こうした試験で得られたデータを基に、国産レアアースの産業化に向け、経済性評価を含めた総合評価を2028年3月までに行う予定とのこと。

  • 2027年の採鉱試験の概念図 (出所:JAMSTECニュースリリース)

    2027年の採鉱試験の概念図 (出所:JAMSTECニュースリリース)