この半導体ニュースのまとめ

・2026年第1四半期のESD業界売上高は前年同期比12.7%増の57億4780万ドル
・CAEと半導体IPが2桁成長を記録し、AI向け設計需要やIP再利用の拡大が市場をけん引
・地域別ではEMEAとAPACが2桁成長となる一方、日本は9.9%減と減少

2026年第1四半期のESD市場は57億4780万ドル

SEMIは7月14日、ESD Allianceが発行した最新のElectronic Design Market Data(EDMD)に基づき、2026年第1四半期の電子システム設計(ESD)業界の売上高が前年同期比12.7%増の57億4780万ドルになったと発表した。

前四半期である2025年第4四半期のESD市場は前年同期比10.3%増の54億6630万ドルで、四半期売上高は2025年に入って以降、50億ドル台を維持していた。今回の2026年第1四半期では50億ドル台後半まで伸ばしており、設計関連市場は引き続き高い成長基調を維持している。

直近4四半期とその前の4四半期を比較した4四半期移動平均は10.3%増となった。2025年第3四半期時点でも同移動平均は10.4%増、2025年第4四半期も10.1%増と推移しており、短期的な一過性の伸びではなく、複数四半期にわたり2桁前後の成長が続いていることが分かる。

CAEと半導体IPが2桁成長

製品・アプリケーション別では、すべてのカテゴリが前年同期比で増加した。中でも成長をけん引したのは、コンピュータ支援エンジニアリング(CAE)と半導体知的財産(SIP)である。

CAEの売上高は前年同期比15.5%増の20億1840万ドルとなり、4四半期移動平均も13.1%増となった。CAEは設計初期から検証、シミュレーションまでを支える中核領域であり、先端プロセスやチップレット、AIアクセラレータなど、設計複雑化が進むほど需要が高まる分野である。

SIPは同14.1%増の23億3250万ドルとなり、製品カテゴリ別では最大の売上規模となった。4四半期移動平均も13.7%増で、半導体IPの再利用や標準化された設計資産の活用が広がっていることを示す結果となった。AI向けSoCやカスタムASICでは、CPU、インタフェース、メモリコントローラ、チップレット接続など多様なIPの組み合わせが重要になっており、SIP市場の拡大はそうした設計手法の変化を反映したものといえる。

ICフィジカル設計・検証も回復基調

ICフィジカル設計および検証の売上高は前年同期比8.3%増の7億5130万ドルとなった。ただし、同カテゴリの4四半期移動平均は0.9%減となっており、足元では増加に転じたものの、過去数四半期をならすと成長はやや弱い。

2025年第4四半期にはICフィジカル設計および検証が前年同期比2.6%減となっていたため、今回のプラス成長は一定の回復を示すものといえる。先端プロセスでの配置配線、消費電力制約、熱設計、タイミング収束、歩留まりを意識した設計などの重要性は高まっており、今後のAI/HPC向け設計需要の継続が同カテゴリの回復を支えるかが注目される。

PCBおよびマルチチップモジュール(MCM)の売上高は同4.8%増の4億1920万ドル、サービスは同6.5%増の2億2640万ドルとなった。チップレットや先端パッケージングの普及に伴い、基板やMCMを含めた設計段階での最適化は今後も重要性を増すとみられる。

地域別ではEMEAとAPACが2桁成長

地域別では、米州が引き続き最大市場となった。米州のESD製品・サービス調達額は前年同期比10.2%増の24億3380万ドルで、4四半期移動平均も9.8%増となった。AI半導体企業や大手クラウド事業者、EDA/IPベンダが集積する米州は、引き続きESD市場の中心的な地域となっている。

欧州・中東・アフリカ(EMEA)は同17.6%増の7億6640万ドルで、4四半期移動平均も10.9%増と2桁成長を記録した。アジア太平洋(APAC)も同17.7%増の22億6440万ドルとなり、4四半期移動平均は14.5%増となった。2025年第3四半期にはAPACが前年同期比20.5%増と市場をけん引していたが、2026年第1四半期も引き続き高い伸びを維持した形だ。

日本は9.9%減、4四半期移動平均もマイナス

一方、日本の調達額は前年同期比9.9%減の2億8310万ドルとなった。4四半期移動平均も12.4%減となり、主要地域の中で唯一マイナス成長を記録している。

日本は近年では、2023年第3四半期、2024年第2四半期、同第4四半期、2025年第1四半期に3億ドルを超えたことがあったが、それ以降は2億ドル後半で推移しており、ほかの地域が右肩あがりに伸びているのとは異なる動きが続いている。

日本政府や産業界では、半導体設計人材の育成や国内設計力の強化が課題として認識されており、Rapidusや国内でのAI半導体開発、車載半導体、パワー半導体などの取り組みは増えているものの、ESD市場の調達額という観点では、まだ本格的な拡大には至っていない状況がうかがえる。

  • 2022年第1四半期以降の国・地域別の金額推移

    2022年第1四半期以降の国・地域別の金額推移 (出所:SEMI発表資料をもとに編集部作成)

従業員数は7万2544人に拡大

EDMDレポートが対象とする企業の世界全体の従業員数は、2026年第1四半期時点で7万2544人となった。前年同期の6万4403人から12.6%増、前四半期比でも1.1%増となっている。

2025年第4四半期には、調査対象企業の従業員数が前年同期比では13.8%増となる一方、前四半期比では2.3%減となっており、採用拡大の一服感も見られていた。今回、前四半期比でも再び増加に転じたことで、設計関連企業がAIや先端設計需要に対応する人材確保を継続していることが示された形だ。

AI時代の設計複雑化がESD市場を押し上げ

この数年のESD市場は、前年同期比で見た場合、プラス成長が続いており、今回の2026年第1四半期も12.7%増と2四半期連続で2桁成長を達成するなど、AI半導体時代における設計投資の拡大が続いていることを示す結果となった。

生成AI、推論処理、エージェンティックAI、フィジカルAIといった用途の拡大により、半導体には高性能化だけでなく、電力効率、メモリ帯域、パッケージング、信頼性、コストの最適化が求められている。こうした複雑な要求を満たすには、設計自動化ツール、検証環境、半導体IP、サービスを含めた設計エコシステムの重要性が一段と高まることとなる。

特にSIPが最大カテゴリとして拡大していることは、チップ開発においてゼロから設計する領域を減らし、実績あるIPを組み合わせることで、開発期間短縮と設計リスク低減を図る流れが強まっていることを示す動きといえる。AI時代の半導体競争は、先端プロセスや製造能力だけでなく、どれだけ高度な設計資産と検証フローを活用して、短い期間でテープアウトまでこぎつけていち早く市場のトレンドに併せた製品を供給できるかも競争力を左右する段階に入っているといえそうだ。