この半導体ニュースのまとめ

・キオクシアが第10世代3次元フラッシュメモリ「BiCS FLASH」のサンプル出荷を開始
・北上工場第2製造棟でサンディスクと共同開発した第10世代BiCS FLASHの生産を開始
・332層積層、1TビットTLC製品として、AI向けSSDやデータセンター需要への対応を強化

第10世代BiCS FLASHのサンプル出荷を開始

キオクシアは7月3日、同社の3次元フラッシュメモリである「BiCS FLASH」の第10世代製品のサンプル出荷を開始したことを発表した。対象となるのは、容量1TビットのTLC(3ビット/セル)製品で、AI向けストレージ需要に対応するエンタープライズSSDやデータセンター向け高性能SSDへの採用を見込む。

第10世代BiCS FLASHは、332層積層を実現した3次元フラッシュメモリで、同社が第8世代から導入しているウェハボンディング技術「CBA(CMOS directly Bonded to Array)」を活用する。CBAは、メモリセルアレイと周辺回路を別々のウェハ上に形成し、貼り合わせることで、高密度化と性能向上を両立させる技術である。

加えて、未使用のメモリホールを削除し、ビットライン短縮やワードライン容量削減を図る「OPS(On Pitch Select Gate Drain)」技術も活用することで、高性能化と低消費電力化を進めたとしている。

第8世代比でインタフェース速度33%向上、読出時電力効率30%改善

第10世代BiCS FLASHでは、インタフェース速度が第8世代比で33%向上し、4.8Gbpsに達するという。また、積層数を332層としたことでビット密度を59%向上させたほか、データ転送時を含む電力効率についても、書込時で18%、読出時で30%改善したとしている。

AIデータセンターでは、学習だけでなく推論用途の拡大に伴い、GPUやAIアクセラレータに加え、大容量かつ高速なストレージの重要性が高まっている。特に推論処理では、大量のデータを高速に読み出し、低消費電力でプロセッサへ供給することが求められるため、NANDにも高い転送性能と電力効率が求められるようになっている。

キオクシアとしては、第10世代BiCS FLASHにより、AI向けSSDやエンタープライズSSDの性能向上と、データセンターにおける消費電力低減の両立を図る考えだ。

北上工場第2製造棟で第10世代品の生産を開始

あわせてキオクシアは、サンディスク(Sandisk)と共同で、岩手県北上市の北上工場第2製造棟において、第10世代BiCS FLASHの生産を開始したことも発表した。

北上工場第2製造棟は、AIやデータセンター向けを中心に拡大するフラッシュメモリ需要に対応するための生産拠点であり、最先端設備を活用して第10世代BiCS FLASHを生産する。キオクシアとサンディスクは長年にわたり、3次元フラッシュメモリの共同開発と生産を進めてきており、今回の第10世代品も両社の協業による成果となる。

キオクシアでは、投資コストを抑えつつ高性能化を図る第9世代と、多層化によって大容量・高性能を両立する第10世代の二軸で開発を進める方針を示している。用途や市場動向に応じて複数世代を展開することで、AIインフラを支える幅広いストレージ需要に対応していくものとみられる。

AI推論時代を見据え、NANDの重要性が拡大

生成AIの普及により、これまで半導体メモリ需要の中心として注目されてきたのはHBMなどDRAM側であった。しかし、AIの利用が学習から推論へと広がる中で、大量のデータを保存し、高速に読み出すストレージの重要性も高まっている。

特にクラウド事業者やAIサービス事業者では、モデルや学習済みデータ、推論時に参照するデータ、ログ、キャッシュなどを大規模に保持する必要がある。こうした用途では、NANDを用いたSSDに対し、大容量、高速転送、低消費電力、高信頼性が求められる。

キオクシアはBiCS FLASHを中核技術として、3次元フラッシュメモリの大容量化を進めてきた。第10世代BiCS FLASHのサンプル出荷と北上工場第2製造棟での生産開始は、AI時代におけるNAND需要の拡大を取り込むうえで重要な節目となる。

北上と四日市を軸に先端NANDの供給力を強化

キオクシアは、三重県の四日市工場と岩手県の北上工場を主要生産拠点として、3次元フラッシュメモリの開発・量産を進めている。今回、第10世代BiCS FLASHの生産を北上工場第2製造棟で開始したことで、同社はAIデータセンター向けを含む先端NAND製品の供給体制をさらに強化することになる。

AI向けデータセンターでは、CPU、GPU、AIアクセラレータ、HBM、ネットワーク機器に加え、SSDもシステム性能を左右する重要な構成要素となっている。キオクシアとしては、第10世代BiCS FLASHを用いた高性能SSDを通じて、AIインフラの性能向上と省電力化に貢献する考えだ。