この宇宙・航空ニュースのまとめ
- 三菱電機、通信の柔軟性と高いセキュリティ性を有する「フルデジタル通信ペイロード」の開発に着手
- 衛星搭載用デジタル通信ペイロード技術について、JAXA「宇宙戦略基金」の補助金交付決定、技術開発にあたりスカパーJSATが連携機関として参画
- ビーム照射地域を柔軟に変更できる機能や、通信信号をデジタル信号処理する装備を盛り込み、高セキュリティの安定通信も追求
三菱電機が、通信の柔軟性と高いセキュリティ性を有する「フルデジタル通信ペイロード」の開発に着手する。宇宙航空研究開発機構(JAXA)が実施する「宇宙戦略基金」の補助金交付決定を受けたもので、技術開発にあたりスカパーJSATが連携機関として参画する。
JAXAの宇宙戦略基金 第二期の技術開発テーマのひとつである「国際競争力ある通信ペイロードに関する技術の開発・実証」(分野:衛星等)において、三菱電機が代表機関として選定されていた技術開発課題「国際競争力のあるフルデジタル通信ペイロードの開発」に関する補助金交付が決定。
連携機関として参画するスカパーJSATはアジア最大級の衛星通信事業者であり、2030年代の通信衛星の具体的な利用シーンや、利用者が期待する通信衛星の機能・性能を調査・検討。その結果を、三菱電機がフルデジタル通信ペイロードの設計に反映することで、将来の市場ニーズに対応した通信衛星の開発をめざすとしている。
この技術開発の背景にあるのは、宇宙へ打ち上げられた後も、顧客の要求に合わせて機能や性能を柔軟に変更できる人工衛星へのニーズの高まりだ。
特に、広域性・同報性・耐災害性に優れた通信手段とされる静止通信衛星においては、衛星側のソフトウェアを書き換えて地域や時間帯による衛星通信の需要変動に対応できるデジタル通信ペイロードが注目を集めている。
欧米では既に開発・製造が進んでおり、三菱電機もJAXAから受注した「技術試験衛星9号機」(ETS-9)の開発を通じて培ったノウハウを活かしてフルデジタル通信ペイロードの開発に取り組む方針だ。
具体的には、DRA(Direct Radiating Array)方式アンテナによって、通信対象地域を地球の可視範囲すべてに拡大するとともに、その範囲内で任意の方向に電波のビームを形成するDBF(Digital Beam Forming)通信技術により、ビーム照射地域を柔軟に変更できるペイロードを実現する。
DRA方式はアンテナ素子を2次元的に並べたアレイアンテナで、反射鏡を使用せずに直接放射することで、地球全域に電波を送信できるのが特徴。全アンテナ素子を使ってビーム形成するため、任意の形状のビーム成形が可能な一方で、素子数が多いためサイズや消費電力に課題があるとされる。またDBFとは、デジタル信号処理技術を用いて複数のアンテナ素子の受信または送信信号の励振係数を制御し、指定した方向にビームを形成する手法のこと。
フルデジタル通信ペイロードには、通信信号をデジタル信号処理する装置であるDPP(Digital Payload Processor)を盛り込み、従来はハードウェアに依存していた多様な通信制御を、ソフトウェアで実施できるようにし、打ち上げ後の機能更新を可能にする。
さらに、通信内容を秘匿化する機能や、妨害信号から通信信号を保護する機能を搭載することで、他者からの検知や妨害に強く、セキュリティー性の高い安定した通信も可能にする。
こうした機能に必要な演算処理システムは、従来は膨大かつ複雑な処理のため実現が難しかったが、今回は特定用途に特化して設計した高性能な専用ASIC(Application-Specific IC)を採用し、小型かつ低消費電力なペイロードを開発することで、静止通信衛星への搭載を可能にするとのこと。
