この半導体ニュースのまとめ

・AMDが、最大32GBのLPDDR5Xをパッケージ内に統合する「Versal Premium Gen 2 Memory on Package(MoP)」を発表
・最大288GB/sの帯域幅と最大60%の基板面積削減を実現し、外付けメモリ設計の複雑さや検証負荷を低減
・15年以上の長期供給や産業温度範囲に対応し、フィジカルAI、ネットワーク、航空宇宙・防衛、VPXシステムなどを狙う

パッケージ内に最大32GBのLPDDR5Xを統合

AMDは6月30日、アダプティブSoC「Versal Premium Gen 2」ファミリに、DRAMをパッケージ内に統合した「Versal Premium Gen 2 Memory on Package(MoP)」を追加したと発表した。

  • 「Versal Premium Gen 2 Memory on Package(MoP)」

    「Versal Premium Gen 2 Memory on Package(MoP)」のパッケージイメージ (出所:AMD)

同MoPは、最大32GBのLPDDR5Xを1つのパッケージ内に統合する構成で、最大288GB/sのメモリ帯域幅を提供する。これにより、基板上に外付けメモリを配置する場合に必要となる配線、シミュレーション、検証の負荷を抑えつつ、高帯域メモリを必要とするシステムを構築できるようにする。AMDによると、外付けメモリ構成と比べて基板面積を最大60%削減できるとしている。

同社はこの製品について、フィジカルAI、ネットワーク、航空宇宙・防衛といった用途で、扱うデータ量が増え続ける一方、実装面積や消費電力、熱設計の制約が厳しくなっていることを背景に投入したと説明する。対象用途としては、テスト・計測機器、プロフェッショナル映像編集、セキュア通信や防衛アクセラレーション向けのVPXシステムなどを挙げている。

小型フォームファクタで高帯域メモリを実現

同製品の特徴は、メモリ帯域と基板面積のトレードオフを緩和する点にある。従来、システム設計者は必要なメモリ帯域幅と、製品として許容できる面積、消費電力、供給期間の間で選択を迫られてきた。MoPではLPDDR5Xをパッケージ内に直接統合することで、外付けLPDDR5X構成よりも高い性能を得ながら、小型化を進められるという。

これにより、EDSFF(Enterprise and Datacenter Standard Form Factor)や3U VPXといった、外付けメモリでは実装が難しかったフォームファクタへの適用も可能になるとしている。通信機器やVPXシステムでは、基板面積、電力、熱、耐環境性といった要件が厳しいため、メモリをパッケージに集約することはシステム設計の自由度を高める意味を持つ。

PCIe 6.0とCXL 3.1をハードIPで統合

また、ハードIPとしてCXL3.1およびPCIe 6.0を統合しており、AMD EPYC CPUと組み合わせることで、データ集約型アプリケーションにおけるCPUとアクセラレータ間の高速データ移動を支援するとするほか、最大9000Mb/sのLPDDR5Xへの対応とCXLメモリプーリングやメモリ拡張モジュールとの接続により、システム設計者が用途に応じてメモリリソースを拡張できるようにすることも可能だという。AI推論、ネットワークセキュリティ、映像処理、計測データ処理など、メモリ帯域とI/O帯域の双方が求められる用途を意識した構成といえる。

15年以上の長期供給でHBMの短い更新サイクルを回避

AMDは、Versal Premium Gen 2 MoPを長期運用が求められるシステム向けに設計したことも強調している。同製品は産業グレードの動作温度範囲として-40℃から110℃に対応し、常時稼働が求められるミッションクリティカルなシステムでの利用を想定している。

加えて、15年以上のライフサイクルサポートを提供することで、HBMのようにデータセンター主導で更新サイクルが短くなりやすいメモリ技術への依存を抑えることを可能としたともしている。航空宇宙・防衛、産業機器、通信インフラでは、長期供給と設計の継続性が重要であり、LPDDR5Xを用いたMoP構成は、こうした市場で設計リスクを抑える効果があるという。

事前検証済みメモリで市場投入期間を短縮

加えて、同製品では、パッケージ内に統合されたメモリが事前検証済みであるため、基板レベルでの高速メモリ設計、シミュレーション、検証作業を削減できる。高帯域メモリを外付けする場合、配線長や信号品質、電源品質、熱設計などの検証が大きな負担となるが、MoPではこうした作業の一部をAMD側で吸収することで、顧客の市場投入期間短縮につなげる。

AMDのAdaptive and Embedded Computing Groupで製品管理・マーケティングを統括するSumit Shah氏は、システム設計者は長年、必要なメモリ帯域幅と、現実的に許容できる面積、電力、製品寿命の間で選択を迫られてきたと説明。MoPにより、その制約を取り除き、顧客はメモリ制約に合わせたシステムではなく、構築したいシステムを設計できるようになるとしている。

データ集約型ワークロードがクラウドからエッジ、通信、フィジカルAI、航空宇宙・防衛へ広がる中、高帯域メモリを小型・低消費電力・長期供給の形で実装できるかは、システム設計上の重要な差別化要素となる。Versal Premium Gen 2 MoPは、HBMほどのデータセンター特化型メモリではなく、LPDDR5Xをパッケージ統合することで、組み込み・産業・防衛用途に適した高帯域メモリ実装の選択肢を広げる製品といえそうだ。