≪ データセンターに不可欠な光ファイバーで急成長 ≫ フジクラ社長・岡田直樹の技術論「見えない技術優位性、見えない差別化でトップの座を!」

生成AIブームの中で光ファイバーが評価されて

 

 空前の生成AI(人工知能)ブームである。 

 その生成AIの中核企業、NVIDIA(エヌビディア)は汎用計算用GPU(画像処理装置)開発のパイオニア。台湾系米国人、ジェンスン・ファン氏(1963年生まれ)が率いる同社の株式時価総額は4兆7148億ドル強(約754兆円、7月7日時点)で世界トップ。 

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 米アップル(時価総額は4兆5329億ドル強)を上回り、日本企業のトップ、キオクシアホールディングス(45兆5853億円)、同2位のトヨタ自動車(41兆2746億円)の17倍から18倍の市場評価となっている(2026年7月3日時点)。 

 長らく、世界の時価総額トップは米アップル、日本の時価総額トップはトヨタ自動車がそのポジションを維持してきたが、昨夏あたりから、生成AI関係企業の業績が拡大し、市場でも注目されるようになってきた。 

 日本でも、半導体メモリーのキオクシアが、時価総額でトヨタを抜いて日本一となったことが話題となったことは記憶に新しい。 

 生成AIに必要な半導体や関連部品を製造する企業の動向が、内外で注目されるようになっている。 

 AIの普及で高まるデータセンター(DC)向けの光ファイバー開発・製造で注目される企業の一つがフジクラである。 

 かつて”電線御三家”の一角とされたフジクラは、電線領域で売上トップの住友電気工業、古河電気工業といった旧財閥系とは一線を画した独自の生き方をしてきた。言わば、三番手の電線会社という位置付けであったが、ここ数年でその評価がガラリと変わった。 

 ”技術のフジクラ”と言われるほど、もともと同社の技術開発力は高く評価されていたが、特に、光ファイバーケーブルは世界の同業やライバルに先行して同社が開発し、その先行利得を享受。 

 2026年3月期の業績は売上高約1兆1823億円(25年3月期は9793億円)、営業利益は約1887億円(同1355億円)。これに対し、住友電工は売上高約5兆1101億円(同4兆6797億円)、営業利益4181億円(同3206億円)。古河電工の売上高は約1兆3075億円(同1兆2017億円)、営業利益約638億円(同470億円)という数値。 

 売上高でトップの住友電工と比べ、フジクラの売上高は4分の1程度。営業利益は住友電工の半分以下となっている。 

 しかし、市場の時価総額では、フジクラは約9兆5114億円と、住友電工の約8兆4602億円を抜き去り、1兆円強の差を付けている(ちなみに古河電工は約2兆8266億円)。 

 時代が揺れ動き、変化のスピードが激しい環境で、いかに企業価値を高めていくか─が問われる中でのフジクラの戦い方である。 

 自分たちの強みとは何かを考えた時、”技術のフジクラ”をいま一度、突き詰め、探究してきた結果が今、出てきているということであろう。 

 

研究開発畑一筋から本社異動で危機を経験

 

 もっとも、良いことばかりが続いたわけではない。業績が好調な時にも課題はあり、また逆境の時にも明日につながる希望の光が見えることもある。 

 栄枯盛衰は世の習いであるが、要は自分たちの基本軸をどう見据えていくかということであろう。 

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 フジクラ社長に岡田直樹氏が就任したのは2022年。岡田氏は1964年(昭和39年)1月生まれの62歳。埼玉県出身で、千葉大学工学部卒業後、1986年(昭和61年)にフジクラ(当時の社名は藤倉電線)に入社。 

 岡田氏は光ファイバーケーブルの研究に30年以上従事し、2014年に次世代光ケーブル事業推進室長となり、フジクラの光ファイバー開発を率いてきた。 

「研究室は居心地がいい」と、研究開発人生を全うしようと考えていた岡田氏は突如、本社への異動を命じられる。 

 慣れ親しんだ千葉県佐倉市にある佐倉事業所から本社(東京都江東区)に異動となった時は、迷いを感じたという。2020年(令和2年)のことである。 

 実は、この時、経営は赤字状態で、会社は苦境に立たされていた。この中で、”技術のフジクラ”として、光ファイバー事業に再生の道を懸けるという当時の経営陣の決断であった。 

 本社勤務となった岡田氏は、常務執行役員コーポレート企画室長として、経営企画や経営戦略を担当することになる。

 

 当時(2020年3月期)、コロナ禍の影響もあり、同社は過去最大となる約385億円の最終赤字を計上。会社設立(1910年=明治43年)以来、最大の赤字転落であった。 

 そうした厳しい状況に会社が置かれていた時に、コーポレート企画室長に就任した岡田氏。まず、本社に異動して気付いたのは、各事業部の”タテ割り意識”が強かったことである。伸ばすべき部分は伸ばし、縮小整理すべきは縮小することを迫られた同社は、経営再建に向け、『100日プラン』を策定。根本的改革が求められる中、固定費の削減や資産売却などを進めていった。 

 同社は事業構造の根幹として、すでにかつての主力・電線事業を子会社に移管し、光ファイバーを主力に据えていた。 

 この時、主力としていた光ファイバーが中国市況で悪化し、スマートフォン用のフレキシブルプリント基板なども不振に陥っており、そうした状況をしっかり把握し、”聖域なき事業改革”を実行。その結果、同社は最悪期を脱出して、業績は上向き基調に移行していった。 

 岡田氏は2021年COO(最高執行責任者)、その後22年4月に社長CEO(最高経営責任者)に就任。 

 社長に就任して4年余。株価は今年2月、2万6920円の史上最高値を付けた。岡田氏が本社勤務になった頃は約500円であったから、50倍以上の高値である。 

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