この企業動向ニュースのまとめ
・ENEOSホールディングスが2025年度通期決算の説明会を開催
・現在の中東情勢への対応として、原油調達先の多様化などを進めている
・2025年度の営業利益は前年比で+949億円の増益
ENEOSホールディングスは、5月14日に都内会場およびオンラインで2025年度(2026年3月期)通期決算説明会を開催した。会場では代表取締役 社長執行役員の宮田知秀氏、代表取締役 副社長執行役員 CFOの田中聡一郎氏、常務執行役員の矢崎靖典氏、経理部長の川村健介氏が登壇し、2025年度の決算および26年度の見通し、第4次中期経営計画の進捗、中東情勢対応などが説明された。ここでは、その様子をレポートする。
中東情勢対応のため原油調達先の多様化を推進
説明会では、まず4月に刑事告発および起訴されたグループ会社ENEOSウイングの独占禁止法違反疑いについて、宮田氏が改めて陳謝。「ガバナンス・コンプライアンス強化の取り組みを進めてきた中で発生したことについて大変重く受け止めております。中期経営計画で掲げた『グループ会社の組織・体制の再構築』に沿って会社数の削減や内部監査の強化などの施策を加速し、徹底的に推進していくことで再発防止を図っていく」とした。
続いて、中東情勢について「米国産を含む原油調達先の多様化を進めるとともに、政府と連携しながらホルムズ海峡を経由しないペルシャ湾外積みの原油調達に注力している」と説明。具体例として5月12日にアゼルバイジャンから調達したことを挙げたほか、ホルムズ海峡の外にあるオマーン湾などで外国船からENEOSグループの船に積み替えて国内に持ち込むことや、自社VLCC(超大型原油タンカー)を米国向けに配船することなども計画していると話した。
また、5月14日にはENEOSグループの原油タンカー、ENEOS ENDEAVORが通航料の支払いなしにホルムズ海峡を通過し、日本に向けて航海を再開したことも併せて報告。宮田氏は「イラン側に対する高市総理、茂木外務大臣による直接の働きかけをはじめ、現地の大使館、外務省、国土交通省など政府関係者の尽力に深く感謝します」と述べ、順調に航海が進めば5月末~6月初旬に日本に到着する見込みだと説明した。
次に、第4次中計の進捗について「ポートフォリオ再編の観点から米Chevron社が保有する東南アジア・豪州法人の石油精製・販売事業を取得することを決定した」と報告。取得価格は21億7千万米ドル(3,360億円)で、収益性については2030年度断面で2億5千万米ドル(390億円)程度の貢献を見据えているとのこと。
また、ポートフォリオ最適化の観点からJX金属の実施する自己株式の公開買い付けへの応募を決定したこと、資本効率改善の観点および株主還元方針を踏まえて500億円の自己株式取得を実施したことも説明。さらに筋肉質な経営体質への転換を図るため、グループ会社の組織・体制再構築を行なっており、連結対象会社はNIPPOグループおよびペーパーカンパニーを除き170社程度への削減(2025年3月末からは100社減)を計画しているとした。
グループ会社再構築と並んで重要な経営課題と位置付けている業務全域でのAI活用については、「これまで原油配船の最適化から製造プラントの自動運転などサプライチェーンの各領域においてAI活用を進めてきた」と話し、「今後はこれらの取り組みを通じて収集したビッグデータをデータベースとしてAIに読み込ませ、市場需要が絶えず変化するような環境においても収益機会を捉え利益最大化を目指していく」と説明。
このほか製油所の競争力強化に向けた取り組みについては、トラブル削減などの施策が功を奏し定修除き稼働率が25年度平均で80%(中東情勢を受けた稼働減を除く)に改善していることを紹介。今後も引き続き必要な施策を講じながら、さらなる改善を図って2027年度に定修除き稼働率90%を目指すとした。
在庫影響を除外した実質営業利益は前年比451億円増に
CFOの田中氏からは、2025年度通期決算と26年度の見通しについての説明が行われた。
2025年度の営業利益は油価上昇に伴う在庫影響の良化を主因として、前年比で+949億円の増益に。在庫影響を除いた営業利益も、のれん減損反転や海運事業売却益などの一過性損益がJX金属IPOに伴う利益剥落で相殺される中、中東情勢を受けた油価上昇に伴うプラスタイムラグを主因として前年比+451億円となり、収益性は大きく改善した。
2026年度の見通しについては、中東情勢の収束時期が不透明なため「原料調達・生産・販売状況・市況等の事業への影響は2026年4~5月までに限定される」「情勢収束後も原油価格は事態発生前の水準(70ドル程度)までは下落しない」という前提で作成。それによると、油ガス価上昇を受けた石油・天然ガス開発事業の増益やJX金属株式売却による利益を主因として、営業利益は前年比+1,434億円、在庫影響を除いた実質的な営業利益も前年比+1156億円を見込んでいるとのこと。
さらに田中氏は事業環境についても説明。ドバイ原油価格は期初76ドルから始まり年度を通じて軟調に推移したが、3月の中東情勢の緊迫化を背景に急騰して期末には121ドルに。期平均では前年比7ドル安の72ドルとなった。
為替レートは、期初の150円から米国の金融政策動向を背景に140円前半まで円高が進行したものの、その後円安に。3月の中東情勢を受けてさらに円安が進んで期末には160円に、期平均では前年比2円高の151円となった。
また白油マージン指標は中東情勢による25年末のタイムラグ影響もあり、通年では前年をやや上回る水準に。パラキシレンマージン指標は、装置の高稼働による一時的な悪化はあったがインドの輸入規制撤廃および中東情勢悪化などにより通年では前年並の水準になった。
キャッシュフローは、営業キャッシュフローが6,200億円のキャッシュインに、投資キャッシュフローが設備投資などの影響で2,520億円のキャッシュアウトに。フリーキャッシュフローは3,680億円のキャッシュイン、配当の支払いなどを差し引いたネットキャッシュフローについても2,511億円のキャッシュインを確保。また、ネット有利子負債は1兆7,038億円、ネットD/Eレシオは0.42倍になった。





