リコーは4月15日、顧客の環境経営の推進とGX(グリーントランスフォーメーション)加速を支援する共創拠点として、「リコー環境事業開発センター」(静岡県 御殿場市)をリニューアルオープンした。

顧客に伴走して環境課題の解決策を検証するための実践型拠点として運用し、AIを活用した課題分析や体験型プログラムを通じて、環境経営の高度化と新たな事業創出をサポートするという。

今回、メディア向けにセンター内部の見学会が公開されたので、内部の様子を紹介しよう。

  • 「リコー環境事業開発センター」

    「リコー環境事業開発センター」外観

リコーが顧客の環境経営の課題に寄り添う施設をオープン

脱炭素や循環型社会へ対応する需要が高まる中、具体的な取り組みの設計や実装に課題を抱える例も多い。リコーはこうした顧客課題に対し、これまでも同センターを通じてオープンイノベーションや再生ビジネスを推進してきた。

今回のリニューアルでは、「構想から実装まで」を一体で支援する環境経営の共創拠点へと機能を強化する。顧客企業と一体となって課題を深掘りし、実践的な解決策を検証する。2026年度に年間来場社数200社、共創件数30件を目指すとのことだ。

  • リニューアルのコンセプト

    リニューアルのコンセプト

環境・エネルギー事業センター事業推進室 室長の中野雄介氏によると「現時点の主なターゲットは製造業。これまでは大手の製造業や流通業、自治体の来場者が多かったが、徐々に中小企業にも来ていただけるようになった」とのことだ。

また、同氏は「大手も中小企業も悩みは似ている。お客様の規模にかかわらず、具体的な目標や計画がないまま脱炭素や環境経営を始めたためにつまづく例が多い。リコー環境事業開発センターでは、リコーグループの失敗談も共有しながら、計画策定から伴走していく」とも、話していた。

  • リコー 経営企画本部 環境・エネルギー事業センター 事業推進室 室長 中野雄介氏

    リコー 経営企画本部 環境・エネルギー事業センター 事業推進室 室長 中野雄介氏

リコー90周年の節目に次の10年を見据えたリニューアル

リコー御殿場事業所は、1985年に同社の「御殿場工場」として設立された。しかし2013年に国内の生産機能再編に伴い生産を終息。

リコーが創立80周年を迎えた2016年に「リコー環境事業開発センター」として生まれ変わり、2019年に使用電力の再エネ100%を実現。2021年には既設の建屋でZEB(Zero Emission Building) Readyの認証を取得。これまでに、約2.1万人の来場者を受け入れた(2026年3月末時点)。

2026年はリコー創立90周年の年でもあり、御殿場事業所がリコー環境事業開発センターとして生まれ変わってから10年という節目の年でもあることから、次の10年、すなわち「2036年のありたい姿」を見据えた取り組みの一環として、リニューアルに至ったとのことだ。

  • 次の10年を見据えた実践の場として、リニューアルを迎えた

    次の10年を見据えた実践の場として、リニューアルを迎えた

コンセプトは「環境経営の実践と共創の最前線」

具体的には、これからの10年を見据えて、カーボンニュートラル、サーキュラーエコノミー、ネイチャーポジティブの3点を軸に、リコーグループが目指す脱炭素・循環型社会の実現に向けて、同社の実践事例やノウハウを共有する。

リニューアルに際しコンセプトとなったのは、「環境経営の実践と共創の最前線」。これまでリコーグループが取り組んできた実践の知見と、顧客との対話を通じた共創型の課題解決を実践する場として運営する。

環境・エネルギー事業センター 所長の釜谷智彦氏は「リコー自身の実践を、お客様との対話を通じて提供していく。単に施設を見せるだけでなく、お客様の課題を深堀りして、構想から実装まで一体で支援するための場所にしたい」と話していた。

  • リコー 経営企画本部 環境・エネルギー事業センター 所長 釜谷智彦氏

    リコー 経営企画本部 環境・エネルギー事業センター 所長 釜谷智彦氏

AI搭載ロボットの案内で施設を見学しよう

前置きが長くなってしまったが、ここから実際にリコー環境事業開発センターのツアーの様子を紹介していこう。なお、実際の来場の際はリコーグループの営業担当者を通じた事前の予約が必要だ。

センターの建屋は大きく「未来棟」と「環境棟」に分かれる。未来棟では施設概要の説明や見学ツアーのイントロダクション、ツアー後のワークショップが開催される。対する環境棟では、実際に複合機の再生ビジネスや省エネの取り組みを見学できる。

まず未来棟の入場ゲートをくぐると、回収した複合機のLANケーブル被膜を活用したというクマのオブジェが出迎えてくれる。人間と変わらない大きさで、迫力も圧倒的だ。機器の無線化に伴いケーブルの廃棄が増えていることから、こうしたメッセージ性のあるオブジェに利用しているという。

  • 未来棟の入場エリア

    未来棟の入場エリア

その先のエントランスでは、AIを搭載したロボットの「モリオ」が案内してくれる。モリオは音声入力にも対応し、「モリオ、○○へ案内して」のように話しかけることができる。

  • エントランスホールを案内するフィジカルAI

    エントランスホールを案内するフィジカルAI

モリオがまず筆者らを案内してくれたのが、リコーの事業コンセプトや見学ツアーの概要を映像で学ぶ「Theater R」だ。ここでは環境経営に取り組む意義や、同社会長の山下良則氏からのメッセージを動画で視聴する。

  • 「Theater R」のコンセプト映像

    「Theater R」のコンセプト映像

  • リコー 取締役会長 山下良則氏からのビデオメッセージ

    リコー 取締役会長 山下良則氏からのビデオメッセージ

その他にも未来棟のエントランスホールでは、建築現場で使われた足場の古材やコピー機の電子基板を活用した「Mother Tree」や、ペロブスカイト太陽電池など、センターのコンセプトに沿った展示が見られる。

  • 森の大樹をイメージした「Mother Tree」

    森の大樹をイメージした「Mother Tree」は、建築現場で使われた足場の古材やコピー機に搭載されていた電子基板が使われている

  • 使用済み基盤を活用したテーブル

    使用済み基盤を活用したテーブル

  • ペロブスカイト太陽電池を活用した庭園灯

    ペロブスカイト太陽電池を活用した庭園灯

実際に稼働する向上を見学して理解を深めよう

環境棟では、主に複合機の再生ビジネスと省資源の実践、コメットサークルを見学できる。

  • 環境棟の入口

    環境棟の入口

環境棟でまず目にするのは、コメットサークルだ。Comet(=ほうき星)の名の通り、ユーザーを起点として持続可能な製品ライフサイクルを彗星軌道を模して可視化している。

最も内側の円は製品リユース。一部の部品を交換しただけで使えるリユース品だ。環境負荷の少ない製品として、同社はモデル名にCE(Circular Economyの頭文字)を記したシリーズを展開する。

  • コメットサークルを可視化した展示

    コメットサークルを可視化した展示

その次の円は部品リユース。製品リユースよりもさらに小さな部品単位まで分解し再利用する、いわゆる「リマニュファクチャリング(Remanufacturing)」に近い製造だ。

さらにその外側には、マテリアルリサイクル・ケミカルリサイクルが広がる。部品単位まで分解した後、原料や資源としてリサイクルされる。

  • 部品リユース、マテリアルリサイクル・ケミカルリサイクルの円

    部品リユース、マテリアルリサイクル・ケミカルリサイクルの円

同社の製品リユースの強みは、回収機診断システム(ストック・マネジメント・システム)にある。これは、回収した製品の使用歴や修理履歴など、固有の情報を記録して活用するシステム。

回収機の状態に応じてA(優)、B(良)、C(可)に分け、A(優)から優先的に製品リユースへ回すことで、修理コストを下げられる利点がある。

中野氏はストック・マネジメント・システムについて「事業の黒字化と持続可能性を支える重要な仕組み」だと紹介していた。

  • 基盤レベルではんだ付けして修理する

    基盤レベルではんだ付けして修理する

  • 電装のリユースライン

    電装のリユースライン

回収機の保管にも工夫が見られる。ずらりと並ぶ回収機の上部には、色が付いたQRコードのような識別子が貼り付けられ、これを天井のカメラで読み取ることで、目的の製品を探す手間を削減している。

この仕組みにより、以前は6人で管理していた工程が、現在は1人で管理できるまでに省人化が進んだという。

  • 回収機上部の識別子

    回収機上部の識別子、これをカメラで読むことで目的の機体をすぐに探せる

  • 天井に備えているのは一般的なWebカメラ

    天井に備えているのは一般的なWebカメラ、QRコードではなく色付きのコードであればそこまで高精細なものでなくとも読み込めるという

目的の機体を回収するのはAGV(Automated Guided Vehicle:無人搬送車)。ここでも省人化が進んでいる。筆者はフィルム時代からPENTAXユーザーであるため、AGVの筐体を見て嬉しくなり思わずパシャリ。

  • 回収機を運搬するAGV

    回収機を運搬するAGV

回収機の製造にも、ロボットが活用されている。従来の人手による清掃では、エアーブロー時にトナーやほこりが舞うため作業環境が悪く、機内に手を入れることでケガのリスクもあった。

これに対し多関節な自動清掃ロボットを導入したことで、清掃工数を一定化しながら品質も安定し、作業員の業務環境も改善。

  • 自動ロボットによる清掃

    自動ロボットによる清掃

環境棟の見学の最後には、リコーグループの脱炭素STEP伴走サービスで示される6つのステップに合わせて、GXに資する取り組みや施策の例を学べる。

  • GXに関する展示

    GXに関する展示

課題の深掘りと解決のヒント探しはAIがお手伝い

見学ツアーの最後は再び未来棟へと戻り、「Odyssey R」という部屋でワークショップに取り組む。ここでは、来場者が抱える脱炭素経営の課題を深堀りするとともに、解決策につながるヒントを考える。

この際に活用されるのは、同社がRICOH BIL TOKYOに開設した、AIが創造的な議論を支援するワークショップルームと同様の技術だ。「Dify(ディフィ)」や「miro AI」を使いながら、空間内での自由な発話内容を適切な支援につなげる。

少し詳しく紹介すると、参加者の発言を天井のマイクで集音し、音声認識エンジンでテキスト化。さらにノーコードAIツール「Dify」が事前に設定したフレームワークを使用して、デジタルワークスペース「Miro」上に付箋紙として反映する。

  • ワークショップのイメージ

    ワークショップのイメージ

さらにリコーのデジタルヒューマン「アルフレッド」がファシリテーターや情報収集の支援を行う。

  • デジタルヒューマン「アルフレッド」

    デジタルヒューマン「アルフレッド」

見学前にヒアリングした課題やAIを活用した想定課題の抽出、さらに当日の見学内容、ワークショップでの発話に合わせて、見学後にはVisitレポートが作成される。これを活用し、課題の整理と次のアクションの具体化までつなげることができる。

  • レポートで提示されるサービス例

    レポートで提示されるサービス例

具体的に製造現場を見ながら、脱炭素・環境経営に向けたワークショップに参加できるのは、リコーグループの事業所の中でも、御殿場だけだという。自然豊かな御殿場の森を舞台に、日常の喧騒から離れた空間で未来の地球環境に思いを巡らせる機会としてほしい。