
今回は番外篇としてCM制作秘話の第1弾です。
【歌舞くのどにも龍角散篇】
6月から放映している『歌舞くのどにも龍角散篇』は、氏子総代を拝命している神田明神から尾上菊之助さんの襲名披露を是非応援したいという強い要請により企画されました。
しかし襲名披露公演が迫っており、とても新たなテレビCMを企画する時間はありません。そこで神田明神で「お練り」そのものをCMに仕立てるという斬新な手法を思い付きました。
ぶっつけ本番一発撮りでしたが、実に良い映像が撮れました。しかも監督のアイデアで、わざと白黒にして色の雑味を排除し、本人を際立たせたのです。
そしてナレーション録りです。「歌舞く…」は一般的な言葉ではないという意見もあり、実は「歌舞伎ののどにも…」も録ったのです。私は今一つインパクトが弱いと感じ、ご本人の意向を直接確認したところ、是非「歌舞くのどにも…」でいきたいとのことだったので即座に決断しました。
【尾上菊之助・梅王丸胡蝶篇】
放映を始めて数日だというのに既に話題になっているCMです。六代目・尾上菊之助さんの「梅王丸」「胡蝶」の舞いの後にセリフ「伝統と革新と」。続いて八代目・菊五郎さんによる「歌舞くのどにも龍角散」。
なぜこれができたかと言うと、前作の「歌舞くのどにも龍角散」篇(お練り)を放映、反響を確認した後に襲名披露公演に伺ったときです。
六代目・菊之助さんは11歳ながらプロ根性のある演技で、しかも変声期のため、より一層けなげさが際立ちます。客席を見ていると、女性ファンが「胸キュン」という表情で舞台を見つめているのです。
もともと龍角散製品には女性の愛用者が多いことから私は「これだ!」と思いました。直ちに菊五郎さん本人に連絡し、息子さんの今の姿をCMに残したい、という衝動に駆られていると伝えたところ、快諾頂いたのです。
制作現場はまさにプロ根性そのもので、八代目・菊五郎さん本人による熱烈な演技指導により、このCMは実現しました。撮影現場には「足先!」「瞬きしない!」など、お父上からの鋭い声がスタジオに響き渡り、日常が厳しいお稽古の連続であることを伺わせました。
ポスターや街頭広告用のスチル撮影もあったので、長時間の撮影現場でしたが、そこはしっかりと「お昼寝」の時間も確保しました。あらゆる生活シーンを全方位で観察して製品訴求に結び付け、しかも、できる限り演者のご意向に沿う形での作品に仕上げるのも当社のCM制作方針なのです。
それにしても1978年にACCのグランプリに輝いた「龍角散 プロンプター篇」で冒頭「…音羽屋の、似ぬ声色で…」と言っていることが分かったときは衝撃でした。八代目・菊五郎さん本人もご存じなかったのです。何というご縁でしょう。