オンワードパーソナルスタイル社長・関口猛が語る「オーダースーツの『民主化』」

自分の体型にあったスーツを着れば、気持ちも高揚し、仕事のパフォーマンスも上がる─。皆さんもそんな思いを抱いたことはありませんか。

 オンワードホールディングスは2025年に創業98年目を迎えました。創業者の樫山純三が運動具や香水などの輸入業を生業とした「樫山商店」を創業したのですが、社会に大きなインパクトを与えたのが「紳士服(スーツ)」の領域。

 戦前、既製服を手縫いしていた時代に日本で初めて「ホフマンプレス機」を導入し、スーツの量産化と価格を抑えた生産体制を確立したのです。その後、1954年に初めてフルオーダーを簡素化した「イージーオーダーシステム」を確立。まさに「スーツの民主化」でした。

 翻って現在のスーツ市場は約2000億円前後で推移。当社の試算によると、年間500万人ほどがスーツを購入しており、そのうちの250万人は価格が1万円程度のスーツを購入していると見ています。つまり、まだ半分の人はユニフォーム感覚でスーツを着ているということなのでしょう。

 しかし一方でオーダースーツは成長を続けています。これまでのユニフォームのように着るだけのスーツから自分の体型に合ったスーツを着るというニーズが若い人を中心に広がり始めているのです。2024年度でもリアル店舗での売り上げが昨年比で52%増となりました。

 実は当社は2017年に「スマートテーラー」という仕組みをスタートさせました。スマートフォンが普及し、ファッションにおいてもEC市場が拡大し続ける流れを掴み、EC需要に対応したオーダーメイドを実現できる全く新しい仕組みです。

 当社が運営する「カシヤマ」は、これまでオンワード樫山が培ってきた様々なノウハウと知見を組み合わせたサービスです。決してゼロからつくりあげたものではありません。最も代表的なものは生産工場です。同年に30年ほど付き合いのある中国の自社工場「開成大連工場」での生産能力を内製化しました。

 通常、オーダーメイドスーツと言えば、きめ細かな採寸をし、手元に届くまでに数週間かかり、さらには数十万円もするといったイメージが強いでしょう。しかし、当社のサービスでは一度採寸すれば、2回目からはネット上で生地を選んでもらうだけで注文が可能になります。しかも、価格は3万円からで、納期は最短1週間です。

 中国の工場を自社工場にしたことで、採寸すると即日、中国の工場にCADデータがオンラインで届き、すぐに生産工程に入ります。さらに配送も特殊な圧縮パックに入れて届けます。パックから出して、半日吊るしておくだけで、生地が空気中の水分を吸収し、美しく着られる状態になるのです。

 CADデータの送信によって納期は短くなり、自社工場での生産のために中間マージンも徹底的に抑え、圧縮パックを採用したことによって輸送コストも大幅に軽減されます。それが価格にも反映されています。オーダースーツの領域でも、当社は「民主化」という軸をずらすことなく徹底しているのです。

 欧米ではスーツは自らを格好良く見せるという価値観が当たり前のように根付いています。一方で日本では、まだまだユニフォームのように着るだけの衣料品という位置づけです。そういった日本独特の発想は世界でも〝ガラパゴス〟なのです。

 もっと自分に合ったスーツを着ることができれば、気持ちも晴れやかになり、生産性向上にもつながるのです。

2025年度『経営者のための10冊』企業アドバイザー(元JBCCホールディングス会長)・石黒和義