
米国野球界では来年からロボット審判を導入するようだ。これまでの常識が大きく変わるが、米国はこれを平然とやってしまう。世界をリードしている半導体やAI業界でも動きが激しく、エヌビディアはインテルやオープンAIへの投資を発表した。米国の動きは、とにかく速くて大胆だ。
米国政府は社会・経済構造の大きな転換に踏み出した。関税による製造業の復活、資源国としての強みを活かした化石燃料の増産、ドルの覇権維持を狙ったステーブルコインの普及促進など、これまでの常識や国際秩序に囚われない取り組みを連発している。
トランプ大統領といえば化石燃料のイメージが強いが、AIによる電力需要の増加に応えるため原子力発電の規制を緩和し、エネルギー政策の転換を一気に進める。
5月23日に署名した大統領令では、次世代型原発「小型モジュール炉」の普及などにより、2050年までに原子力設備容量を現状の3倍程度への引き上げを目標としている。
残念ながら日本には、このようなスピード感はない。同様の発想があったとしても、国・政府が実現に向けて迅速かつ大胆に動き出すことは期待できない。
トランプ政権が進める関税政策は、全世界に大きな歪みを生んでいる。一方的な関税引上げやルール変更は、WTO(世界貿易機関)ルールや米国内法への抵触が指摘されている。しかしながら、米国が「やる」と言えば、多くの国は従わざるを得ないのが現実である。
また、米国は日本に対して80兆円の投資枠の設定を迫った。ここで重要なのは、今回の合意を「対米従属」で終わることなく、「対米依存をしつつも戦略的に利用する」との日本の強い意思を示すことである。
米国が提示した投資枠を上手く利用し、投資資金の回収はもちろんだが、日本国内の産業構造の転換や国内投資の拡大に繋げ、将来的な国力や競争力を高める「二段階の戦略」を採ることが必要である。日本が投資を約束させられたのは経済安全保障上の重要9分野である。
これらの分野への投資が首尾よく進めば、日本企業もノウハウを高め、同時に実益を得ることが期待できる。当初は米国への投資であっても、成功体験が企業や政府、個人のマインドを変え、国内投資が加速する未来を描けるのではないだろうか。
動かない・変わらない日本にとって、外圧は時に最も有効な改革装置となる。明治維新や戦後の日本、1990年代後半からの金融ビッグバンなど、これまでも外圧が日本を大きく変えてきた。この80兆円の「外圧」を、今こそ日本の構造改革の力に変えていかなければならない。
意思と戦略がなければ、日本は米国の「金づる」で終わってしまう。変わる覚悟が問われている。