MURA Technology CEO・スティーブ・マホン Steve Mahonー廃プラスチックを石油・ナフサの原料、さらに石油製品などへ再製品化する現実的対応を─

プラスチック大消費国の日本でプラスチックリサイクリングの技術が実用面でまた一歩前進─。ENEOSと三菱ケミカルの両社が三菱ケミカル茨城事業所(茨城県神栖市)で建設を進めていたケミカルリサイクル設備が完成。今年7月2日、竣工式が行われた。両社の事業化には英国の新興エンジニアリング会社MURA Technology(ミューラ・テクノロジー)が開発したプラスチックエンジニアリング技術を活用。KBR社、ダウ・ケミカル社、三菱ケミカル社などと提携し、特許取得済みのソリューションの世界的展開を推進するMahon氏に聞いた。

 プラスチック大国日本を世界のモデル国に

 ─ 御社の経営目的、理念について教えてください。

 S・Mahon 使用済プラスチックをわれわれが開発したMURA Technologyの超臨界水熱分解技術によって、化学的に分解するというものです。これによって製造されたリサイクル生成油は、再び石油生成や石油化学製品をつくるナフサクラッカーの原料として使用されます。

 さらに軽油やガソリン等の石油製品や、各化学品、プラスチックへと再製品化されることでサーキュラーエコノミー(循環経済)を実現する上で画期的なものだと自負しています。

 当社の独自技術は廃プラスチックを循環型化学物質に分解するということで、2030年までに1億5千万㌧以上の需要が予測されています。年間1000億㌦以上の市場機会が存在することになります。

 世界で年間4億㌧のプラスチックが生産されています。世界のプラスチックリサイクル率はそのうちのまだ9%にしか過ぎません。プラスチックの3/4が焼却されまたは埋め立てられているのが現状です。

 ─ この技術がENEOSと三菱ケミカルが合同で進めているケミカルリサイクル設備に応用されているということですね。

 S・Mahon ええ。わたしたちは廃プラスチックを循環型化学物質に変換する独自技術を保有しております。

 ─ サーキュラーエコノミーを実現していくには、政府の環境規制も絡んできますね。

 S・Mahon その通りです。政府の規制圧力が、循環型製品の需要を促進していくのは間違いありません。もっといえば、グローバルな規制圧力が循環型製品へのニーズを高めるということです。

 ─ 具体的にはどういった例がありますか。

 S・Mahon 米国の法律・REDUCE ACTは最初のプラスチックに220㌦の税金を課しています。英国では30%未満のリサイクルプラスチックを含むプラスチック包装に211ポンドの税金が課されています。EUは2025年までにプラスチック包装の50%をリサイクルする目標を設定しています。

 ─ MURAの技術を少し説明してくれませんか。

 S・Mahon MURAの技術は132の特許によってグローバルに保護されています。現在58カ国で特許を取得し、45件の特許を出願中です。われわれの技術は廃プラスチックの98%を再製品化できるというところにあります。

 ─ プラスチックのリサイクル技術は各国で進められていると思いますが、MURAの技術の特徴はどこにありますか。

 S・Mahon わたしたちの技術は幅広い廃プラスチックを処理することが可能で非常に効率的です。大規模生産への道を開くもので、生産規模の拡張が可能です。  

─ 現実にMURAの技術を使った実証例を挙げてくれませんか。

 S・Mahon 英国では2万㌧(年産)のプラントを建設中です。さらに米ダウ・ケミカルや韓国のLG化学、日本の三菱ケミカルなど、大企業と提携して話を進めております。

 ─ 日本市場への期待は何かありますか。

 S・Mahon 1億二千万人の人口、GDPで世界4位という大きさ、プラスチック使用量、この3つが日本市場の魅力だと考えております。

 ─ 日本はプラスチックの一大生産国ですが、使用済のプラスチックの一部は輸出されています。この現状はどう思いますか。

 S・Mahon わざわざ輸出しなくても、こうしたリサイクル技術を活用すれば、有力資源として活用できます。日本はその道を選択すべきだと思います。

 ─ 日本は無資源国とされていますが、こうしたリサイクル技術を生かせば資源国になるということですね。

 S・Mahon はい、その通りです。資源国になると同時に、世界の環境を良くする先進モデル国になることができると思います。わたしたちも日本の企業と協力しながら、社会課題の解決に向かって努力してまいりたいと思います。

 ─ これまでの経歴を少し話してくれませんか。

 S・Mahon 1968年生まれの現在57歳です。ニューキャッスル大学で物理学の博士号を取得しております。わたしはこの16年間で数々の起業をしてきました。MURAは2016年に起業しました。

 ─ 日本のみならず世界全体でプラスチック公害がいわれて久しいですが、今回の技術はそれを防ぐ手立てになりますね。

 S・Mahon はい。今回の日本での廃プラスチックの実用化を世界の先進モデルにしていきたいと考えています。MURAの経営陣は専門家で形成されており、中でもハイドロPRT技術は従来の熱分解技術に対して多くの優位性があります。  わたしたちの技術は世界で最も大きなリサイクル技術になると考え、普及に努めたいと思います。この技術で日本および世界の社会課題解決に貢献していきたいと思っています。

■ スティーブ・マホン 1968年英国生まれ。英国ニューキャッスル・アポン・タイン大学卒業。地球物理学および惑星物理学の博士号(PhD)と最優等の学位を取得。1996年に英国国防に入省。2016年に英国企業Mura Technology(ムラ・テクノロジー)を設立。英国で太陽光発電資産の開発、建設、運営を行った最初の人物の一人。Rivington Energy Management Limited(リヴィントン・エナジー・マネジメント)会長。AIM(ロンドン証券取引所)上場のGelion plc(ゲリオン、AIM:GELN)非業務執行会長。