荏原製作所は、開発中のロケットエンジン用電動ターボポンプで実際のロケット燃料を使った運転試験を行い、安定作動を確認。2028年の実用化を目標に、さらなる性能向上をめざし、詳細設計と試験を進める。
運転試験は、同社の富津事業所で6月17日から8月1日まで実施。今回は、液体酸素(LOX)と液化天然ガス(液体メタンを多く含むLNG)の実液を用いて、定格回転数時の性能や健全性を確認することを目的とし、流量や圧力、回転速度などを計測した。
その結果、目標の回転速度や計画していたデータを測定でき、製品が安定して作動していることを確認。ポンプの異常振動や実液の漏洩などもなかったという。
荏原製作所は、「人と宇宙のつながりを当たり前に」をミッションに、宇宙事業への取り組みを2021年に立ち上げ、低コストで自由度の高い輸送手段の確立のために、ロケットエンジンに燃料を供給する電動ターボポンプの開発を進めている。
搭載を想定している2液型液体燃料ロケットは世界中で使われているもので、燃料と酸化剤をそれぞれのタンクからターボポンプで燃焼室に送り込み、燃焼により生じる高温高圧ガスを噴射することで高い推進力を得る仕組みだ。
現在ロケットに搭載されているタービン駆動のポンプでは、 高温の高圧ガスで回転させるタービンでポンプの羽根車を回転させるため、高コストかつ構造が複雑で、運用が難しいという課題がある。
同社が開発中の電動ターボポンプは、羽根車を回転させる動力源として電動機を使うタイプで、搭載したバッテリーの電力でモータを駆動させる新しい方式を採用。従来のポンプと比べてエンジンシステムが簡素化され、出力を制御しやすくできるという特徴がある。
2024年9月には、実液と性質が近い液体窒素による性能試験が完了しており、今回は液体酸素と液化天然ガスの実液での運転試験もクリアしたかたちだ。
荏原製作所では「この開発品をロケットエンジンに搭載することで、エンジンシステムの簡素化、信頼性向上、精密な出力制御を実現し、宇宙輸送を身近なものにできる」とアピールしている。
