
自民、公明、日本維新の会の3党が、社会保障改革に関する実務者協議を開き、保険料負担の軽減に向け、全国の医療機関で余剰となっている病床を約11万床削減することで合意した。政府が月内にまとめる経済財政運営の基本指針「骨太の方針」などに反映させて具体化を図る。維新側はこの病床削減が実現すると、「医療費を年間約1兆円削減できる」(岩谷良平幹事長)と成果を強調している。
3党の実務者協議は、国民医療費を年4兆円削減し、現役世代1人当たりの社会保険料を年6万円引き下げることを目標に掲げる維新の申し出を踏まえて3月に始まった。与党は衆院で過半数を割っており、政府が今国会に提出している医療法改正案を成立させるには維新の協力が不可欠だった。
医療法改正案の本格審議は今国会では見送られたが、厚生労働省幹部は「病床削減など3党協議の内容を踏まえて改正案を修正したい。成立のめどが立った」と歓迎する。
高齢化や人口減少に伴い近年、患者の受療行動に変化が見られ全国の病院には余剰病床が増えている。余剰病床は放置すると病院側のコスト増になる。厚労省が病床数を削減する病院を支援する1床当たり410万円の補助金事業を今春に実施したところ、計5万4000床以上の申請が寄せられ、予算オーバーになる事態も起きている。
合意文書には、地域の実情を踏まえ、高齢化のピーク40年を見据えた新たな地域医療構想が始まる2年後までに削減を図ると明記。年約1兆円の医療費削減効果は、厚労省が機械的に試算したものだが、自民幹部は「削減対象の病床に、本当に看護師を配置しているか実態が不明で、1兆円の削減効果が出るとは限らない」と慎重だ。
また合意では、介護職員の処遇改善を今後の報酬改定や予算措置により必要な対応を行うとしている。維新が強く求める市販薬と似た「OTC類似薬」の保険適用除外については、今後も協議を続ける。