
記憶力ではなく、思考力、判断力、表現力を養う教育を
─ 北畑さんは経済産業事務次官を退官した後、近年は教育改革にも尽力しています。人口減少・少子化の時代を迎えて、今後の大学教育はどうあるべきだと考えますか。
北畑 文部科学省は2020年に大学入試改革を行い、マークシート式の大学入試センター試験を改める方針でした。国語はもとより、数学にまで記述式問題を導入し、英語の試験は「読む、書く」ではなくて、「話す、聞く」を重視すると。
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マークシート方式では、複数の選択肢から正解を見つけ出す試験となり、知識の量が多い高校生、過去問をたくさん解いて記憶力を鍛えた受験生が有利になる。中学、高校の学習指導要領では、変化の激しいこれからの社会を生き抜くため思考力、判断力、表現力を養う教育が重要とされているのに、大学受験制度が記憶力を問う制度のままでは、中学、高校の教育が歪んでしまう。
社会や産業界は答えのない世界で活躍する人材を求めているのにその期待に応えられない、という問題意識に基づくものでしたが、制度改革の議論が始まったのは、わたしが三田学園の理事長、校長を務めていた時期で、大いに期待し、(能動的に考える力や自ら問題を解決する力を身に付ける)アクティブラーニングの導入など、その準備をしていたものでした。
ところが、最終段階で出てきた議論は、記述試験では採点にバラツキが出て公平性が担保できるのかと。
─ 公平性の問題ですか。
北畑 そうです。改革の重要な項目は見送りとなり、頓挫したと言ってもいいでしょう。残念なことでした。
ただ、東京大学を含めて、多くの大学で入試に学校推薦型選抜と名称変更された推薦入試を採用し、面接で合否を決めることを始めました。これは良いことだと思います。
英国の大学は基本的に面接で採るんです。なぜかというと、筆記試験をやると、お金持ちの子が有利だからです。貴族など裕福な家の子であれば、科目ごとに家庭教師を4人も、5人もつけることができる。そういう子ばかりが合格することになると、英国特有の問題である階級社会の固定につながりかねないという問題意識があります。
─ 家庭の所得格差が学歴格差の要因になってはいけないということですね。
北畑 ええ。日本は少子化が進んで、団塊の世代の3分の1のくらいしか若者がいない。その数が少なくなる若者の能力を伸ばす教育に注力する必要があります。
記憶力ではなく、思考力、判断力、表現力のある学生を育てなければならない。飛び抜けた才能を持った若者が受験制度でつぶされる、正当に評価されないという問題を解決しなければ、日本は滅びますよ。