リコージャパンは6月19日、2025年度の事業戦略説明会を開催した。代表取締役社長 CEOの笠井徹氏が2024年度の戦略を振り返るとともに、2025年度は、価値提供をテーマとするイベント「RICOH Value Presentation 2025」を6年ぶりにリアル開催することなどを発表した。

  • リコージャパン 代表取締役 社長執行役員 CEO 笠井徹氏

    リコージャパン 代表取締役 社長執行役員 CEO 笠井徹氏

  • リコージャパン2025年度目標

    リコージャパン2025年度目標

2024年度はオフィスサービスが好調、人材育成も一定の成果

笠井氏はまず、2024年度の戦略を振り返った。以前の説明会で発表されたように、同社はAI・セキュリティ・脱炭素の3本柱を中心としたサービス展開を進めてきた。

2024年度の業績を振り返ると、オフィスサービス領域が前年比13.6%の4667億円を達成するなど、売上高が好調。その内訳は、ITインフラ事業が14%増、ITサービス事業が15%増、アプリケーションサービスが12%増だ。

特に大手企業向けにはWindows 10のマイグレーションのタイミングもあり、提案が拡大している。2025年度も引き続きマイグレーションを起点としたDX(デジタルトランスフォーメーション)支援の提案を強化するという。

オフィスプリンティング領域は、下げ止まりを見せている。ハードウェアは複合機とレーザープリンタで前年比を維持した。2月に提供を開始したSDモデルをはじめ、他社との差別化を図るデバイスを強化している。ちなみに、モデル名称のSDは、アナログとデジタルをシームレスにつなぎデータ活用やAI活用を促進する「Seamless Digitalization」の頭文字を取ったもの。

  • 2024年度振り返り

    2024年度振り返り

脱炭素の領域においては、「脱炭素STEP伴走サービス」を提供開始。脱炭素に向けた顧客獲得が進んだ。2025年も引き続き伴走型モデルの拡大を図る。

  • 脱炭素STEP伴走サービス

    脱炭素STEP伴走サービス

同社は市場カバレッジの拡大に向けて、47都道府県で地域金融機関と協定を締結したことを発表済みだ。今後はこの連携をさらに強化して、地銀や信金との連携協定に基づくビジネス展開を強化する。

顧客の課題解決を支援するため、2024年にデジタル人材への投資も強化した。同社では所属部門の主戦力として主体的な成果を上げた人材を「プロレベル3」と認定しているが、その人数が8126人に達した。また、Microsoftソリューションエバンジェリストやkintoneスペシャリストなどを保有するスペシャリストを762人育成した。

2025年はさらなるプロ人材の育成を目指すとしており、9700人のプロ人材認定を目標としている。また、ワークプレイスとデジタルサービスを組み合わせて空間や働き方をコーディネートできる「スマートハドルスペシャリスト」など、新たな分野のスペシャリスト認定も拡充する。

「RICOH Value Presentation 2025」を6年ぶりにリアル開催、テーマはジムでの筋トレ

笠井氏は2025年の取り組みとして、特に業種業務課題を解決するデジタルサービス事業の拡大と、地域・社会課題解決に向けた価値提供領域の拡大を強調した。

業種業務課題を解決するデジタルサービス事業の拡大では、「RICOH Value Presentation 2025」を6年ぶりにリアル開催する。このイベントでは、ソリューションの展示や提案よりも、顧客企業の課題ヒアリングに注力するという。

イベントの各ゾーンは「柔軟性強化」「体幹強化」「スピード強化」「筋力強化」「持久力強化」「プロテクト強化」など、スポーツジムでのパーソナルトレーニングをイメージしている。

  • 「RICOH Value Presentation 2025」

    「RICOH Value Presentation 2025」

一例として、働き方改革への対応を支援する「柔軟性強化」ゾーンでは、リモートワークやハイブリッドワークをはじめ、DX(デジタルトランスフォーメーション)による業務改善など、従業員の生産性と働きやすさを両立させるソリューションを紹介する。

また、「筋力強化」ゾーンでは、ビジネスの根幹となる業務プロセスの改善サービスやAI活用を紹介。リコージャパンの社内実践やノウハウに基づくプロセス変革サービスを紹介するだけでなく、AI技術そのものから、デジタルバディやAIエージェントなどの具体的サービス、伴走型でのAI定着支援なども紹介するとのことだ。

地域・社会課題解決に向けた価値提供領域の拡大においては、特にヘルスケアや医療の現場に向けたDX支援に注力する。医療の現場は人手不足をはじめ、依然として紙の資料が多いなど課題が山積している。そこで同社は、業務プロセスの整理から課題の把握と目標設定、具体的なソリューション提供まで伴走型で支援する。

展開例の一つが、「大学病院変革プラン」への支援サービスだ。これは、地域医療の拠点である大学病院の持続可能な経営実現に向けて、文科省が開始した補助金の活用も含めて大学病院のDXを支援するサービス。

  • 「大学病院改革プラン」への支援サービス

    「大学病院改革プラン」への支援サービス

先行して支援を開始した那須赤十字病院では、オンプレでのスモールスタートでLLM活用を実施している。LLMスターターキットを院内ネットワークに接続し、クローズドでセキュアな生成AI活用環境を実現。その結果、退院サマリーに必要な情報の要約とドラフト自動生成が可能となり、医師の退院サマリー作成時間を約50%(3000時間)削減した。

また、奈良県立医科大学附属病院では、360度カメラを使用したRICOH Remote Fieldをドクターカーに導入。これにより、病院から救急車両の傷病者の様子をリアルタイムで確認可能となり、迅速な情報共有と早期の処置につなげている。さらには、臨場感のある映像を振り返りにも使用することで、人材育成や知見の共有にも役立てているそうだ。

笠井氏は「リコージャパンは全国に支社を持ち、そこで働く社員の多くは地元で生まれ育った人たち。地域のお客様のDX支援や、医療や環境、地域の社会課題の解決に携わることは、社員のやりがいでもある。全国で培った英知を、他の地域にも展開していきたい」と話していた。