リコーは2月3日、A3カラー複合機「RICOH IM C6010SD」「RICOH IM C4510SD」「RICOH IM C3010SD」を2月14日に発売開始すると発表し、記者説明会を開いた。モデル名称のSDは、アナログとデジタルをシームレスにつなぎデータ活用やAI活用を促進する「Seamless Digitalization」の頭文字を取ったという。
今回発表した新製品は、富士通グループからリコーグループとなったPFUの用紙搬送技術や、リコーと東芝テックの合弁会社であるETRIA(エトリア)のソフトウェアやアプリケーション連携機能を備える。まさしくリコーグループらしい新モデルと言えるだろう。
RICOH IM C6010SD / C4510SD / C3010SDの製品概要
RICOH IM C6010SD / C4510SD / C3010SDは、既存のRICOH IM C6010シリーズの製品群にADF(Automatic Document Feeder:自動原稿送り装置)を組み合わせた設計。RICOH IM C6010シリーズが特徴とするアプリケーション連携や折り・綴じ機能、セキュリティへの対応などは維持しつつ、ストレートパス構造を搭載したことでスキャン機能の利便性の向上を図った。
リコージャパンのオフィスプリンティング事業センターのセンター長を務める三浦克久氏は「ようやくPFUとエトリアがシナジーを発揮できる複合機を出せる。これまでの複合機とは異なる、お客様のDX(デジタルトランスフォーメーション)を加速させるゲームチェンジャーとして発売を開始する」と新商品を紹介した。
新製品はストレートパス構造の両面ADFを搭載したことで、従来はガラス面での読み取りが必要だったノンカーボン紙(複写紙)や免許証・マイナンバーカードなどのカード類も読み取りが可能。これにより、業種業務に固有の専門帳票の電子化を促す。
また、レシートや領収書などのサイズや大きさ、向きがバラバラな原稿の混載スキャンも可能で、特定のサイズを指定することなくADFから一括読み取りが可能。改正電子帳簿保存法対応などの電子化作業を効率化する。
バラバラに読み取った帳票は標準搭載のOCR処理機能とAIを用いた天地方向補正機能でデータを取得するため、読み取り後の業務効率化も支援する。同社が提供する「RICOH 受領請求書サービス」などとの連携でデータ活用を支援する。
各モデルはプリント速度が異なり、A4ヨコ送りでRICOH IM C6010SDは毎分60枚、RICOH IM C4510SDは45枚、RICOH IM C3010SDは30枚それぞれプリント可能。標準価格は順に310万円、266万円、213万円(いずれも消費税別)。
不定形サイズの一括読み取りと原稿保護機能を向上
リコーの調べによると、DXの広がりに合わせて複合機を用いたスキャンの枚数は増加の一途をたどる。しかし一方で、不定形サイズの証票やカード類の読み取りなど、ガラス面を利用しなければいけない原稿が全業種の約18%を占めるそうだ。
これに対し新製品では、PFUがスキャナー開発で培った高度な原稿読み取り機能を搭載。従来はガラス面から1枚ずつ読み取っていたレシートや領収書などの不定形サイズ原稿をADFから直接読み取り可能となったほか、原稿サイズを自動で検知し傾きをリアルタイムに補正する機能によって、細かな設定などを不要としたことで業務の効率化を支援する。
また、従来のADFでは読み取りが難しかった複数枚つづりの複写伝票や、エンボス加工付きのプラスチックカードにも対応している。ストレートパス構造としたことで原稿を折り返す必要がなくなった。
さらに、原稿保護機能も強化した。「音検知」「たわみ検知」「重送検知」の3つの原稿保護機能を搭載。異常を検知した場合には原稿の搬送を即時に停止し、原稿の痛みを低減する。音検知機能は、ADFに搭載したマイクによって、原稿をとじるステープラー針やよれた際の「クシャッ」とする音を検出する。
アナログとデジタルをつなぐアプリケーションで業務を支援
新製品は読み取った原稿の向きを自動で補正するAIを搭載する。そのため、縦横など向きを気にせず一括で原稿を読み取ることができる。さらには、スキャンした原稿の文字情報をOCR処理によりテキストデータに変換する。これにより、文字検索や他のアプリケーションとの連携も可能となる。
従来技術ではレシートや納品書などサイズが異なる複数の原稿を一括で読み取りする場合、小さい原稿を規制できずに傾く課題があった。新製品は画像補正処理を可能としたことで、傾いて斜めに読み取られた原稿の外形を自動で切り出し位置を補正するため、向きを気にせずに読み取りを開始できる。これにより、サイズが異なる原稿の混載読み取りを可能としている。さらには、文字が記載された原稿だけでなく写真などの自動補正も可能とのことだ。
一般的な外形検知技術は、原稿との差分を検出しやすくするために黒い背景板が用いられる。しかし、この場合は裏写りなどにより文字の再現性が低下していたという。一方でリコーの新製品は裏移りが少ない白い背景板でも外形検知を可能としたことで、文字の読み取り性能が向上した。