フロンティアコンサルティングはこのほど、「ワークステージトレンド2025」に関する調査結果を公表し、記者向けに説明会を開いた。今回の調査は2023年および2024年の内容を踏まえて、「働きがいと生産性」の関係に着目した。
「ワークステージトレンド」と「コンシャスワーク」
「ワークステージトレンド」は同社による造語。従来のオフィス空間が表す事業所や事務所の概念を超えて、一人一人のワーカーが輝きながら働ける場として、単なる場所にとどまらず、場所と機会を融合させた概念を示す。
ワーカーが働くための環境作りでは、場所の提供だけでなくさまざまな機会の提供も求められる。これに伴って、そのノウハウの蓄積や運営の整備も課題とされる。ワークステージトレンドでは、働く場所を従来のオフィスからワークステージへと昇華するべく、環境作りに関する新たな課題とその解決策を探る。
調査ではまず、回答者が働く環境において、社会や他者への貢献を実感しているか、今後社会や他者への貢献をより身近に実感したいかを確認。その結果によって、調査対象を以下の4グループに分類した。
・実感志向型(貢献している実感があり、より身近な実感を希望するワーカー)
・実感非志向型(貢献している実感があり、より身近な実感を希望しないワーカー)
・非実感志向型(貢献している実感がなく、より身近な実感を希望するワーカー)
・非実感非志向型(貢献している実感がなく、より身近な実感も希望しないワーカー)
同社はさらに、自己実現と貢献実感、すなわち働きがいを意識した働き方を「コンシャスワーク」、これらの働きがいを意識するワーカーを「コンシャスワーカー」と定義している。
働きがいが高まるワークプレイスと環境の特徴とは?
働きがいを実感し、さらにより身近な実感を希望するワーカーはどのような環境で働くことを好んでいるのだろうか。調査の結果、コンシャスワーカーはオフィスをチームワークの場として捉えている傾向があることが明らかになった。この結果から、特にオフィスにおけるチームワーク機能の充実がコンシャスワーカーの働きを促す可能性がうかがえる。
また、コンシャスワーカーは現在の労働環境は柔軟な働き方に関する制度が整備されていると感じているという。テレワークやワーケーションといった就業場所の柔軟性のほか、時差出勤などの就業時間の柔軟性、副業の可否や雇用形態の切り替えなど雇用関係の柔軟性が、コンシャスワーカーの働きを促進すると考えられる。
オフィスにおけるテレワーク実施率が70%以上であるとの回答は、実感志向型~非実感非志向型で大きく変わらなかった。その一方で、コンシャスワーカーは60%以上のテレワーク率を希望する人の割合が他のグループよりも低かったことから、出社 / テレワークの選択の幅がありつつ適度に出社できる環境を希望していることが分かる。
これらの調査結果から、フロンティアコンサルティングでデザイン部の部長を務める稲田晋司氏は「コンシャスワーカーが嗜好する環境は、チームワークの場としての機能が充足されたオフィスや、柔軟な働き方が選べる制度が整っていること。コンシャスワーカーはオフィスの役割としてチームワークを重視することから、完全リモートへの切り替えは逆効果になる可能性がある」と解説してみせた。
働きがいは生産性につながるのか?
働きがいの実感と組織の生産性の相関について調査したところ、コンシャスワーカーはMVV(ミッション・ビジョン・バリュー)への共感、仕事へのエンゲージメント、自己成長志向のいずれの項目においても、他のグループよりも高い結果となった。このことから、コンシャスワーカーの数が増えると組織全体の生産性も向上する可能性が考えられる。
同様に、コンシャスワーカーは現在の会社での勤続を志向する割合や、転職希望者へ自社を推薦すると回答した人の割合が他のグループよりも高かった。コンシャスワーカーは自身が活躍する人材として定着しながら、組織の人材確保にも寄与するという。
また、貢献実感の高い人ほど、業務内容の負担や仕事のプレッシャーの負担、人間関係の負担といったストレス要因に対して、パフォーマンスに影響が出にくい結果も得られている。貢献実感を高めコンシャスワーカーを増やすことは、やはり生産性の維持に寄与しそうだ。
働きがいと生産性を高めるオフィス投資とは?
勤務する会社がオフィス環境構築に積極的に投資しているかを聞いたところ、オフィスへの投資が積極的であると回答した人ほど、オフィスの機能充足評価や働きやすさを高く評価する傾向があることが明らかになった。積極的なオフィス投資は、機能の評価やワーカーの働きやすさを高め、コンシャスワーカーの増加にも有効と考えられる。
稲田氏は「積極的なオフィス投資は機能充足や働きやすさに対するワーカーの評価を向上させると考えられる。特に働きがいに着目すると、チームワーク機能の充実や柔軟に働ける環境構築は、コンシャスワーカーからの評価につながり、仕事の質の向上や人材確保、組織の生産性に好影響をもたらす可能性がある。オフィスを固定費のコスト削減対象ではなく、ワーカーや組織の生産性を支え成長を促進する投資対象と捉えた経営判断の必要性が考えられる」とまとめた。




