フロンティアコンサルティングは5月18日、伊豆大島(東京都 大島町)にサステナブル拠点「Izu-Oshima Co-Working Lab WELAGO」(以下、WELAGO:ウェラゴ)を開所した。「WELAGO」は同社のサテライトオフィスであると同時に、島内外の人に向けてコワーキングスペースとして無料で開放される。今回、同施設の開所式に参加してきたので、その魅力と開設に至った同社の思いを紹介したい。
大島内外の交流を促すサテライトオフィス
WELAGOの名称は、働くことの「Work」と、諸島や列島を意味する「Archipelago」を組み合わせた造語に由来する。島内外の人が都市と地方の共存社会を多様な働き方から考えるきっかけになることを目指して開設されたという。
東京諸島の玄関口ともいえる大島は、府中飛行場から飛行機で30分ほど、竹芝客船ターミナルからジェット船で2時間ほどで到着できる。1984年公開の映画『ゴジラ』のクライマックスシーンが印象的な三原山を中心に、火山に由来する独特の自然やのどかな風景を感じられる。
土産物屋には明日葉を使用したお菓子やお茶、青唐辛子、つばき油などが並んでいた。そんな大島だが、人口減少や地域産業の衰退といった離島ならではの社会課題も抱えているようだ。
フロンティアコンサルティングの執行役員である稲田晋司氏は「独自の自然や歴史を持つ土地を訪れることで、都市部では得にくい体験が期待できること、ワーケーション(ワーク+バケーションの造語)を通じて持続的な社会につながる考えが学びやすいこと、都心からもアクセスしやすいことなどの理由から、この場所をサテライトオフィスの場所に選んだ」と紹介した。ちなみに、同氏の出身地は大島だ。
同日に、同社と大島町は「多様な働き方による地域活性化に関する連携協定」を締結した。これは、官民一体となった地域活性と、地域創生や課題解決に寄与できる還元人口の創出、地域と島外企業との積極的な関係づくりを目指したものだ。
なお、還元人口とは、地域出身者だけでなく地域に縁がある人々などのうち、地域への貢献意識が高く個人が持つスキルなどの資源を積極的に地域に還元する人の数を示す。両者の協定には、大島町の地域資源を活用した産業振興、担い手の育成による産業振興、多種多様な働き方による産業振興に貢献する人々を生み出す狙いがある。
開所式に参加した大島町 町長の坂上長一氏は「今まで、大島町の重点施策として幅広い経済効果が期待できる観光振興に力を入れてきた。今後は、大島に遊びに来てもらうだけではなく、働きに来てもらうというこれまでとは違った目的での来島者を増やすことが重要になるはず。WELAGOの開設は、今後の島の方針を見定める試金石となるだろう」とコメントし、開所祝いの言葉を添えた。
大島町は今回の連携協定をきっかけに、企業誘致なども推進する予定だ。今後の多様な働き方による地域活性化を促すためにも、政策推進課、観光課、産業課など、課を横断してWELAGOでの活動をバックアップするとしている。
WELAGOでは今後、施設を活用したコミュニティの運営も予定している。大島を拠点にWebメディアやコミュニティ事業を手掛けるTIAMと業務提携を締結し、コミュニティの共同運営を通じて都市と地方が共存する社会を考えるという。
TIAMの代表取締役社長である伊藤奨氏は「フロンティアコンサルティングの方々とお酒を酌み交わすうちに、島のことを愛しているのは島の中の人だけではないことに気付いた。大島町と当社とフロンティアコンサルティングが組み合わさることで、これまでには無い島内外の多くの人々の関わりを作っていけたら」と、コミュニティ運営への思いを語っていた。
東京から2時間で着く大島の魅力を満喫できるワーケーション
筆者は今回初めて大島を訪れたのだが、竹芝客船ターミナルからジェット船に乗り、約2時間ほどで大島の元町港へと到着した。当日は晴れていて少し暑いくらいだった。WELAGOには元町港から車で5分ほどで着くが、歩いても20分ほどだ。
施設はもともと、1991年に開催された「全国椿サミット」の第1回大会を記念して作られた建物で、それ以降は地域の交流会や行事の練習などに用いられていたという。しかし、人口減少に伴って低利用施設となっていた。
施設は正面から見て右の「MIGITE」と左の「HIDARITE」に分かれる。島内外の誰もが無料で利用可能。専用のアプリケーションを使ってチェックインする。なお、事前の予約も不要だ。Wi-Fiや電源を完備するほか、ポータブルバッテリーも備える。
HIDARITEは利用者向けの受付カウンターがあり、ここでは施設の紹介などを行う。大型のモニターを持つ「tonari」を設置してフロンティアコンサルティングの大手町オフィスと常時接続しており、都市部とのコミュニケーションも可能だ。
一方のMIGITEには、TokyoDexのダニエル・ハリス・ローゼン氏が手掛けたアートが壁一面に設置され、リラックスした雰囲気だ。一人用の座席やソファクッションなどが充実している。
屋外スペースでは、海の波音や鳥のさえずり、風の音を聞きながら作業できる。晴れた日にはキャンプギアを設置可能だ。イベントなどの利用にも対応する。開放感のある空間でミーティングをすれば、いつもと違うアイデアが浮かびそうだ。
都市部と地方・離島の共存を考えて設立されたWELAGO。島にはおいしい料理や特産品もある。ぜひ一度施設を訪れて雰囲気を味わってほしい。