ベルギーimecは、同社ルーベンキャンパスのCMOS試作ラインを利用して300mmシリコンウェハ上にモノリシック状態で製造された電気駆動型(=励起)GaAsベース多重量子井戸ナノリッジレーザーダイオードの実証として、5mAのしきい値電流で、出力が1mWを超える室温で連続波レーザー発振に成功し、シリコンフォトニクスにおける重要なマイルストーンを達成したと発表した。
詳細は科学誌「Nature」に掲載され、imecではこの成果について、シリコン上への高品質III-V族材料の直接エピタキシャル成長の可能性を実証したこのブレークスルーは、データ通信、機械学習、人工知能のアプリケーション向けに費用対効果の高い高性能光学デバイスの開発に道を開くものであると説明している。
CMOSの集積回路に集積可能なスケーラブルなオプトエレクトロニクス光源の実現困難性がシリコンフォトニクスの普及の課題となっており、その代替策として複雑な接合プロセスやIII-V族基板など高コストな手法が用いられていることから、高品質なIII-V族光源材料を大型シリコンフォトニクスウェハ上に選択的に直接エピ成長させることが求められていた。
III-V材料とSi材料間の結晶格子パラメータと熱膨張係数の大きな不一致により、必然的に結晶不整合欠陥が形成され、レーザーの性能と信頼性が低下することが知られているが、imecでは、選択領域成長(SAG)とアスペクト比トラッピング(ART)を組み合わせ、誘電体マスクにエッチングされた狭い溝内に不整合転位を閉じ込めることで、シリコン上に集積されたIII-V材料の欠陥を減少させることができるようになったとする。