台湾の電源大手Delta Electronicsグループ(デルタグループ)は8月29日、同社の日本子会社(デルタ電子)ならびに韓国子会社(Delta Electronics Korea)を通じて、アルプスアルパインと同社韓国子会社のパワーインダクタ事業および粉末材料事業を7100万ドルで買収することを発表した。買収対象には、生産および研究開発設備、特許、知的財産が含まれており、9月下旬に契約を締結し、2025年1月初旬に実際の事業譲渡が行われる予定だという。

アルプスアルパイン独自の粉末材料に関する特許技術は、デバイスや機器のエネルギー効率を向上させる低電力損失パワーインダクタの開発に使用されており、今回の買収の完了後、デルタグループでは、日本と韓国におけるアルプスアルパインのパワーインダクタ事業を統合するとともに、同社の研究開発能力、生産設備、顧客基盤と組み合わせて、データセンター、AI/HPC、エッジコンピューティング、電気自動車(EV)、スマートフォン、次世代ICT製品などへの受動部品の供給能力を強化するとしている。

デルタグループの会長兼CEOである鄭平(Ping Cheng)氏は、「パワーインダクタ技術は、AIサーバやEV分野で活用されている。アルプスアルパインは、パワーインダクタ分野で独自の知的財産を有しており、業界内での製品イノベーションにおいてもリーダーである。今回の買収により、日本において、私たちの成長する研究開発能力とのシナジーを生み出し、次世代コンピューティングやeモビリティ向けのデルタの特許およびサプライチェーン能力を強化することを目指す」と述べている。

また、アルプスアルパインの代表取締役社長CEOである泉英男氏は、「当社の中長期的な方向性においては、他技術・製品とのシナジーが弱く、新たなパートナーの下で固有磁性技術の最大限の活用を図り成長機会を最大化させる判断をした。パートナーの選定にあたり、今後大きく拡大が期待されるデータセンター需要への事業取組において、当社との事業取引が多く、かつ長期にわたって信頼関係を構築しており、電源関連製品において業界をリードするデルタグループこそがベストと判断した」と売却の背景を説明している。

なお、アルプスアルパインでは、今回の事業譲渡で得た資金を電子部品分野における注力強化領域などに投下することで、資本の効率化、企業価値の向上につなげていきたいとしている。