レノボ・ジャパン(レノボ)は7月16日、2024年度事業戦略説明会を開催し、AIへの投資を加速していく方針を明らかにした。同説明会に登壇した代表取締役社長 檜山太郎氏は「2024年はAI元年になる。スマートフォンからパソコン、サーバといったすべてのデバイスにAIが組み込まれ、さらにAIが身近な存在となるだろう」と語った。

  • レノボ・ジャパン 代表取締役社長 檜山太郎氏

    レノボ・ジャパン 代表取締役社長 檜山太郎氏

レノボは、2023年のグローバル年次イベント「Tech World 2023」で「AI for All」とのビジョンを掲げ、あらゆる規模の組織と個人が、あらゆるシーンでデータ活用を実現できる、AIによる包括的なアプローチ「ハイブリッドAI」を発表した。

ハイブリッドAIの実現に向け、同社はグループ全体でAIへの投資を加速させている。2023年6月には今後3年間で10億ドルを費やし、AI関連のデバイス、ソリューション、インフラストラクチャへ投資すると発表した。これはレノボ史上最大のAIインフラ投資となるという。

  • レノボ・グループのAI投資 概要

    レノボ・グループのAI投資 概要

PCやスマートフォンにAI機能を展開

ユーザー向けにはPCやスマートフォンなどのデバイスで、個人に最適化されたAI活用を支援する。同社は2024年6月、Windows PCの新カテゴリー「Copilot+ PC」対応モデルの次世代AI PC「Lenovo Yoga Slim 7x Gen 9」を発売した。

Copilot+ PCが実現する「コクリエーター」や「ライブ キャプション」、「スタジオエフェクト」といった最先端のAI機能が利用できる。法人向けの「Lenovo ThinkPad T14s Gen6」も近日中に発表する予定だ。

「対応するソフトウェアの拡大がAIデバイスの需要創出のカギだ。画像や映像編集といったクリエイティブ作成だけでなく、オーディオ処理やオンライン会議など、あらゆる領域でAIは活用できる」(檜山氏)

  • レノボは6月にCopilot+ PC対応モデルのAI PCを発表

    レノボは6月にCopilot+ PC対応モデルのAI PCを発表

また、レノボが展開するスマートフォンにもAI機能の搭載を進める。100%子会社のモトローラ製のスマートフォンには、「moto ai」というAI機能が盛り込まれており、カメラの白飛びや手ぶれをマルチショットで補正したり、服などの柄を撮って、それを元に壁紙を生成したりできる。コンテンツの生成や要約といった機能も備えている。

モトローラの戦略にいて、檜山氏は「さまざまなニーズに応えるため、ラインナップを拡充させる。Z世代に選ばれるスマートフォンとなるために、デザインや周辺機器、サービスを強化していく」と述べた。

  • モトローラのAI戦略

    モトローラのAI戦略

檜山社長「日本のITインフラを『AI Ready』にしていく」

AI展開を後押しするITインフラ製品群の開発にもレノボは力を注いでる。

2023年度には、NVIDIA製のGPUを8枚組み込んだ新製品を発表し、また、165種類以上のソリューションを「AI Innovators Program」を通して提供開始した。

そして、2024年6月には、AIの普及で急増する消費電力の削減につなげるため、第6世代の液体冷却技術を発表した。同技術は、業界初の特許を40件以上取得し、液体冷却技術の限界をさらに高めているという。温水を再利用する直接水冷方式により、電力を消費するファンを最小限に抑え、空冷システムと比較して電力消費を最大40%削減するとのこと。

檜山氏は「日本のITインフラを、人間がAIを安全に活用できる状態『AI Ready』にしていく」と力強く語った。

  • AI展開を加速させるITインフラ開発にも注力する

    AI展開を加速させるITインフラ開発にも注力する

同氏は続けて、「ハードウェアメーカーでしかできないことを実現していくとともに、ITソリューションプロバイダーへの転身も進めていく。日本の個人や企業、教育機関、自治体に対して、よりスマートなAIをさらに身近なものにする」と話した。