富士通は4月24日、2025年度における連結決算の説明会を開催した。説明会には同社代表取締役社長兼CEOの時田隆仁氏らが出席した。全社連結での売上収益は前年比1.3%減の3兆5029億円、調整後営業利益は同27.1%増の3905億円の減収増益となったが、過去最高益を更新した。調整前当期利益は同2296億円増の4494億円となった。
富士通の2025年度決算、サービス好調で全セグメント増益、国内受注は堅調
決算を説明した、富士通 代表取締役副社長 CFOの磯部武司氏は「再編などを除き、実質ベースで0.9%成長し、サービスソリューションは増収、ハードウェアとユビキタスは減収ではあったが、全事業セグメントで増益となった。調整前当期利益については、本業の増益に加え、新光電気やゼネラルなどの事業売却益を計上している」と説明した。
セグメント別では、主力と位置付けるサービスソリューションの売上収益は前年比4.5%増の2兆3469億円、調整後営業利益は同24.7%増の3614億円となった。
国内の受注状況は全体で前年比102%、エンタープライズビジネス(産業・流通・小売)が同102%、ファイナンスビジネスが同101%、パブリック&ヘルスケアが同105%、ミッションクリティカル他が同102%となっており、DX(デジタルトランスフォーメーション)を中心に旺盛な需要が継続。
海外の売上収益は前年比2%減となり、欧州はほぼ前年並み、米国・アジアパシフィックは主に公共系で前年からの複数年大型契約の反動があるという。
Uvanceが売上7093億円、2026年度も最高益更新へ
サービスソリューションの中核をなす、Uvanceの売上収益は前年比46.9%増の7093億円と2025年度の売上計画を上回り、データ&AI領域を中心に大きく伸長した。サービスソリューション全体に占めるUvanceの売上構成比は30%までに拡大している。同セグメントのもう1つの柱であるモダナイゼーションは前年比32%増の3921億円と計画値の3300億円を超過し、売上構成比も2024年度の9%から11%に拡大した。
ハードウェアソリューションの売上収益は前年比9.8%減の1兆98億円、調整後営業利益は同9.3%増の670億円となった。システムプロダクトは主に公共系の大型商談の反動や外構品販売の絞り込み、アジアの小規模事業の縮小、エフサステクノロジーズの製販一体体制による業務効率向上効果が改善に寄与。また、ネットワークプロダクトでは基地局の売り上げなどが増加した。
ユビキタスソリューションの売上収益は前年比8.7%減の2298億円、調整後営業利益は同23.8%増の388億円となり、Windows 10のサポート終了(2025年10月)に起因する需要増加の終息に加え、前年の大口商談の反動があった。また、高付加価値商品の販売へのシフトを進め、増益となった。
一方、2026年度の業績見通しは前年比0.2%増の3兆5100億円、調整後営業利益は同8.8%増の4250億円、調整後当期利益は同7.3%増の3200億円と、営業利益、当期利益ともに引き続き過去最高益の更新を計画している。
サービスソリューションは、Uvanceとモダナイゼーションビジネスを柱に売上収益は前年比5.2%増の2兆4700億円、調整後営業利益は同19%増の4300億円、ハードウェアソリューションは売上収益が同4.9%減の9600億円、調整後営業利益は同7.5%減の620億円、ユビキタスソリューションは売上収益が同30.4%減の1600億円、調整後営業利益は同27.9%減の280億円をそれぞれ計画。
中期経営計画を総括、2035年の中長期ビジョンへ「テクノロジーをコアに成長」
説明会の後半では中期経営計画の振り返りと、今後の方向性について時田氏が説明した。
時田氏は「当社は、2020年度~2025年度の6年間で収益性の高いサービスソリューションビジネスを中心とする事業ポートフォリオへの変革、人材を含む経営基盤の強化、システムプロダクト開発やデリバリープロセスの標準化、効率化、自動化などを進め、毎年着実に収益力を高めてきた」と胸を張る。
実際、全社連結の調整後営業利益率は2020年度の6.6%から2025年度には11.2%に伸長し、主力のサービスソリューションでは2020年度の6.0%から2025年度に15.4%と2倍以上に拡大している。
時田氏は2019年の社長就任以来、ノンコア事業のカーブアウトやジョブ型をはじめとした人事制度の改革、リージョンの構造改革や低採算事業・国からの撤退、Uvance、モダナイゼーションビジネスの開始、人月ビジネスから価値・成果ベースへのシフトなどに取り組んできた。
同氏は「サービスソリューション事業でUvanceは30%、モダナイゼーションで11%と計40%の売上構成比となっており、人月ビジネスから価値・成果ベースの収益構造への変革に手応えを感じている」と振り返る。
社長就任から苦しみの中でも人事制度や構造改革などを推進したことで、競争力を再構築して事業ポートフォリオを磨き直した前中期経営計画をふまえて、時田氏は次期中期経営計画の方向性について説明した。
時田氏は「2026年からはテクノロジーをコアにスピードと規模を一層追求し、顧客や社会とともに成長する企業を目指す。これまでの取り組みや変革によって整えた経営環境を最大限に活用し、さらなる企業価値の向上に取り組む」と力を込める。
同氏によると、既存ビジネスの収益力の向上と、次の成長を支える新規ビジネス創出・拡大には、それぞれ異なる時間軸や投資・開発の考え方があることから、新たな計画は2035年までの中長期経営ビジョンとする。
時田氏は「2035年は富士通の設立から100周年を迎え、新たなコンピューティング基盤であるAIやスーパーコンピュータ、量子コンピュータが実用段階に入ることが想定される。ビジネスや社会全体がAIドリブンに変容していくことから、この10年間はテクノロジー企業である当社にとって最も貢献できる10年間になると確信している」と強調する。
他方で10年後の社会の姿や富士通自身の姿も定かではなく、それほどまでにテクノロジーの成長が急激に起こっているほか、社会情勢の変化も予測することは困難であり、変化に追従する経営では立ちいかないという。
「信頼できるテクノロジー」と「AIドリブン」を掲げる富士通、重点領域と社内変革
こうした予測の中で、富士通は社会を変容させる重要な技術として、CPU開発や光ネットワーク、AI、スーパーコンピュータ、量子コンピュータなどの技術を1社で保有している。地政学上または安全保障の観点からも大きな責任を有し、顧客基盤はパブリックセクターを含む全産業に50年以上にわたり、業務アプリケーション開発や運用保守にも携わっている。
時田氏は「AIに代表される技術の社会実装には、ITの理解を通じて新たな業務設計や新技術の適用・実装が不可欠です。いわゆるラストワンマイルに届く現場の知見や対応能力でテクノロジードリブンの業務、社会への変容をリードする。富士通の強みは当社唯一のテクノロジーと豊富な業種の知見であると定め、これにAIを掛け合わせて課題解決につながるソリューションを開発・提供していく」と述べている。
今後、AIの普及によりデータの量と重要性が高まる中、基幹業務を支える基盤はデータ主権を尊重しつつ、安全性と信頼性を備えることが不可欠となっている。こうしたことから、同社は次期中長期経営ビジョンでは「信頼できるテクノロジーの提供」「AIドリブンの実践」を掲げている。
信頼できるテクノロジーの提供については、次世代プロセッサ「FUJITSU-MONAKA」や量子コンピューティングなどのコンピューティング技術、LLM(大規模言語モデル)の「Takane」やAIプラットフォーム「Fujitsu Kozuchi」など同社の国産技術をベースに、グローバルパートナーのテクノロジーを組み合わせて、機能に加え、品質や安全性も担保するソブリンな技術基盤、ソリューションを提供していくとのことだ。
AIドリブンの実践では、業種知見と自社実践知を掛け合わせた業種特化AIエージェントとコンサルティングで、幅広い顧客のAIドリブンの変革をリードしていく。
重点領域としては「フィジカルAI」「ソーシャルレジリエンス」「デジタルツイン」「コンピューティング」の4つとし、顧客や社会のミッションクリティカルなビジネス・活動を支援する。
このような取り組みを実行していくために富士通自身も変革していく。時田氏は「AIを生み出し事業化する企業として、すべての企業活動をAIドリブンとするとともに、経験・ノウハウを顧客のAIドリブン経営に役立たせる」と話す。
具体的にはAIドリブン開発の拡大、人材ポートフォリオの進化、経営基盤の高度化の3つだ。AIドリブン開発の拡大では今年1月に要件定義から実装・テストまでをAIで自動化する開発環境の運用を開始しているほか、人材ポートフォリオの進化では人とAIの協働を前提に人材の高度化を進めていく。
さらに、経営基盤の高度化ではすでに構築済みのデータ基盤をもとに、2026年度からは自社のAIを活用したAIドリブン経営を本格化させ、意思決定や経営判断のスピードと質を高めていく考えだ。











