7月26日から28日にかけて東京ビッグサイトにて開催されている「メンテナンス」や「レジリエンス」に関する展示会「メンテナンス・レジリエンスTOKYO 2023」においてAnalog Devices(ADI)の日本法人であるアナログ・デバイセズは開発中のカーボンナノチューブ(CNT)を使ったセンサなどのデモを行っている。

同センサは、CNTを含んだ厚さ200μmの積層ポリマーナノコンポジット(10mg/cm2、曲げ半径5mm)の測定面に亀裂が到達するとその亀裂によってセンサに不可逆な物理的変化が生じ、それによって亀裂伝播の継続的かつ正確な読み取りを可能とするもの。荷重を取り除いても疲労亀裂を記録することが可能なほか、金属箔や歪みゲージとちがって腐食の影響を受けにくいといったメリットや、任意のサイズや形状とすることも容易で、精度も0.6mmの亀裂を検知することが可能なレベルだという。

  • 開発中のCNTセンサのデモの様子

    開発中のCNTセンサのデモの様子。金属プレートに切り込みが入っており、その直下にCNTセンサを設置。亀裂のデータをPCに転送している

また、独自のWireless Integrity Sensing Platform(WISP)と組み合わせることで、最大30mにデイジーチェーンでさまざまな種類の64個のセンサを接続するが可能で、CNTセンサとしても亀裂の発生と成長を直接監視する疲労亀裂ゲージのほか、環境の潜在的な腐食性を測定する腐食監視センサや環境の侵食の可能性を測定する侵食監視センサなどをエッジ側のユニットに取り付け、それぞれの用途に応じた使い方をすることができるようにする予定だという。WISPでは、Bluetooth経由でスマートフォン(スマホ)やPCへの送信も可能だという。なお、CNTセンサの実用化については、2024年を目指すとしている。

  • ナノ加工されたCNTセンサ

    WISP Connectと呼ぶネットワーク側のモジュール(樹脂部分)とつながっている白いところがナノ加工されたCNTセンサ。モジュールはデイジーチェーンで最大64個接続が可能。一端はWISP BASEと呼ぶBLEトランシーバや電源機能などが搭載されたモジュールで、それがPC/スマホ側のWISP Readerと連携し、データの送信役を担う

このほか、同社ブースでは、アライアンスパートナー「サクラテック」と開発した79GHzのミリ波レーダー技術を活用した非接触型振動センサ「miRader CbM」を使ったロングレンジ測定のデモも行われている。

こちらはmiRader CbMを会場の壁に向けて、目標までの距離と、その周辺の状況をSN比で表示するというデモで、実際の測定画面を見てもらうと分かりやすいが100m程度の距離の物体に対し、1cmを切るオーダーでの測定を可能とする精度を実現していた。サクラテックでは200m程度の距離でセンチメートルオーダーを実現しているとするほか、前後のビンの強さもあわせる技術を活用するなど工夫を施すことで1cmを切るレベルの精度を出すことも可能だとしている。

  • miRader CbMを用いたデモの様子
  • miRader CbMを用いたデモの様子
  • miRader CbMを用いたデモの様子。ターゲットは奥の「東5」と書かれた看板。PCモニタを表示されている距離の単位が81.538mとミリオーダーまで記載されていること、ならびに波形はピーク周辺の飛び出ている部分は周辺の飛び出している部分などとのことである

また、今後2~3か月後に予定しているファームウェアアップデートによっては、距離測定だけでなく周波数や微小な変位量の測定などにも対応できるようになるとしており、悪条件(悪天候など)でも測定しないといけなかったり、人がなかなか行けない場所にあるインフラなどに対する変位量の測定などへ用途を開拓していきたいとしていた。