宇宙航空研究開発機構(JAXA)は、4月11日の日米政府による交換公文書名を受けて、米・コロラドスプリングスで開催されたスペースシンポジウムにて、4月17日(現地時間)、JAXAの山川宏理事長と、米国航空宇宙局(NASA)のパメラ・メルロイ副長官により、現在JAXAが2024年の打ち上げを目指して開発を進めている「火星衛星探査機(MMX)」に係る協力に関する了解覚書(MOU)が署名されたことを発表した。

  • NASAのメルロイ副長官(左)とJAXAの山川理事長

    NASAのメルロイ副長官(左)とJAXAの山川理事長(出所:JAXA Webサイト)

MMX(Martian Moons eXploration)は、世界初の火星衛星フォボスのサンプルリターンミッションだ。原始太陽系における有機物や水の移動、天体への供給過程の解明に貢献するため、火星の衛星に含まれる含水鉱物・水・有機物などを解析することにより、2つの火星衛星の起源や火星圏(火星・フォボス・ダイモス)の進化の過程を明らかにすることで、太陽系の惑星形成の謎を解く鍵を得ることを目的としている。また、火星圏への往還技術や天体表面上での高度なサンプリング技術、さらには深宇宙探査用地上局を使った最適な通信技術と、これからの惑星や衛星探査に必要とされる技術の向上も行うとしている。

探査機は、地球から打ち上げ後、約1年をかけて火星圏に到着し、火星周回軌道へ投入される。その後、2025年度に火星衛星の擬周回軌道(QSO)に入り、火星の両衛星観測およびフォボスからのサンプル採取を行う予定だ。フォボスには、隕石の衝突で火星表面から宇宙へと脱した岩石もあると推測され、火星そのもののサンプル採取も期待されている。なお観測と採取を終えた探査機は、サンプルを携えて2029年度に地球に帰還する計画だ。

なおNASAからは、中性子ガンマ線分光計(MEGANE)、ニューマチックサンプリング技術実証機器(P-Sampler)などが提供され、サイエンス面でも協力する見込みだとしている。