佐賀大学は4月17日、究極のパワー半導体とされるダイヤモンド半導体を用いたパワー回路を開発。高速スイッチング動作ならびに190時間の連続動作を確認したことを発表した。
同成果は、同大 理工学部の嘉数誠 教授、同Saha Niloy Chandra(サハ ニロイ チャンドラ)助教、同 大石敏之 教授らによるもの。詳細は米国電気電子学会(IEEE)の「Electron Device Letters」に2本の論文として掲載される予定だという。
パワー半導体は、電子機器の活用範囲の拡大に伴い、より高効率、低消費電力、高耐圧といったニーズが高まっており、従来のシリコンベースから、SiCやGaNの活用が進められているほか、次世代のパワー半導体材料として、より高性能な酸化ガリウムやダイヤモンドの半導体としての活用研究が進められている。中でも理想的なダイヤモンドは、物理性質上、シリコン比で約5万倍の大電力効率化、約1200倍の高速特性が気体されており、その実用化に向けて国内外で研究開発が進められている。
佐賀大学でも2022年にダイヤモンド半導体を用いて875MW/cm2の出力電力、3659Vの出力電圧を報告していたが、他機関から、ダイヤモンド半導体は、パワー回路として動作させた場合、素子劣化が早く、長時間動作は困難で、実用化は容易ではないと報告されるなど、課題が残されていたという。
そこで今回の研究では、ダイヤモンドウェハ上に作製したダイヤモンド半導体デバイスの電極と、デバイスを実装するプリント基板間に独自開発の金線を用いたワイヤボンディングを行うことで、ダイヤモンド半導体デバイスのパワー回路を開発。それにより、スイッチング特性や寿命試験などの動的特性の測定を可能とした。
実際に、開発されたダイヤモンド半導体パワー回路は、スイッチング時間としてターンオン時間が9.97ns、ターンオフ時間が9.63ns、またスイッチング損失はターンオン損失で55.1pJ、ターンオフ損失で153.2pJであることを確認したとする。
さらに、長時間連続測定も実施。190時間連続測定を行ったが、特性の劣化は見られなかったとするほか、動作中に出力電流値が徐々に増加し、入力電流値も増加する現象が見えたとするも、動作を終えると、連続測定前の特性に戻る回復現象も確認したという。
なお、研究チームによると、今後は開発したダイヤモンド半導体パワー回路を使って、今回判明した特性変化の物理的機構の解明を目指すとしているほか、その対策を施したダイヤモンド半導体デバイスの作製も行っていくとしている。また、さらなる高電圧での動作や過酷な動的特性試験も進めることで、実用化を目指していくともしている。